レクサス新型「LX」が2022年前半に登場すると予告されているなかで、チーフエンジニアの横尾貴己氏に「開発の想い」などを伺ってみました。
■レクサス最上級SUV新型「LX」 ランクルのレクサス版は払拭出来た?
レクサスは、2021年10月14日に次世代レクサス第2弾モデルとして、新型「LX」を世界初公開。
日本での発売は2022年初頭を予定していますが、4代目となる新型LXは、なにがどのように進化したのでしょうか。
LXは1996年に北米で発売されて以来、フラッグシップSUVとしてラインナップ。
新型LXは、伝統の「信頼性」「耐久性」「悪路走破性」を確保するために、新GA-Fプラットフォームや約200kgの軽量化を図り、さらにオンロード、オフロードともに安心かつ上質を提供するため走行性能を追求しています。
今回は国内導入に先駆けてチーフエンジニアの横尾貴己氏に「開発の想い」などを伺ってみました。
――レクサスLXとしては4代目ですが、それ加えてNXに続く「次世代レクサス」第2弾となるモデルです。従来モデルから変えなかったところ、変えたところはどこでしょうか?
変えなかったところは「信頼性/耐久性/悪路走破性」という歴代モデルが築き上げてきた価値。
変えたところはイチから「レクサスのフラッグシップSUV」として開発したことです。
――LXとランクル、切っても切れない関係のように思いますが?
確かに従来モデルは「高級なランクル」、「ランクルのレクサス版」という考えで開発していたのも事実です。
もちろん、新型LXもランクルの武器を数多く活用していますが、走りや内外装のデザインを含めて、すべて「レクサスLX」として開発をおこなっています。
――では、「LXらしさ」とは何でしょうか?
一言で説明するのは難しいですが、やはり「上質さ」だと思っています。
何を操作しても、どのように運転しても同様に感じられること、その集約ではないかな……と。
――ちなみに新型LXを開発するうえで、先代はどのように評価していたのでしょうか?
個人的には大好きなモデルですが、客観的に見るとほかのレクサスに乗るお客さまが「レクサスだよね」と感じられていたかどうかは、気になっていました。
――すでに公開済みとなっている内外装の評価はどのように受け止めていますか?
大きく分けると「良い」、「古臭い」ですが、そもそも新しさを狙ったわけではないので真っ当な評価だと受け止めています。
――ちなみに、デザインをガラッと変える、モノコックボディを採用するなどといったアイデアはあったのでしょうか?
企画時にはそのような構想もありました。しかし、中東やロシアではモノコック車とフレーム車では使い方が異なるので、フレームをやめたら買ってもらえなくなります。
LXの価値は耐久性/信頼性/悪路走破性が根底にあるので、それを守るためにもフレームは踏襲する必要がある……と。
さらにデザイン面でいうと、中東のお客さまはランクルとの協調はメリットだと思っていただいているところもあるので。ただし、ドア以外はすべて新型LX専用のデザインになっています。
――新型は4人乗りの「エグゼクティブ」が設定されましたが、中東からの要望ですか?
中東に加えてロシアからのも大きかったです。とくに企業のトップから「安心・安全」と「後席で寛げる」を両立したモデルに対するニーズが高かったですね。
――日本はどうでしょうか?
当初企画にはなかったのですが、開発を進めていくうちに「これはニーズがあるのでは?」ということで設定しました。
価格にはかなり高いですが、最終的には佐藤プレジデントがジャッジしました。これはレクサスブランドが次のポジションに行くための「挑戦」でもあります。
――日本仕様のみに設定された「オフロード」も注目です。LXはランクルと比べるとオンロード重視なイメージに感じていましたが?
レクサスのネクストチャプターのテーマのなかに「多様化するニーズやライフスタイルに対応」があります。
最近はキャンプやグランピング、オーバーランディングが盛んですが、そんな文化を手助けするLXがあってもいいよねという考えです。
――ヒカリモノが抑えられたエクステリアに唯一の18インチホイールと、良い意味で「引き算」のカッコ良さを感じました。唯一の前後デフロックも驚きです。そういえば、海外向けにはFスポーツやディーゼルエンジン搭載車(LX500d)もラインアップされていますが、この辺りは日本向けとして追加は?
現在は、各仕向地に最適なラインナップ構成となっていますが、当然お客さまの声が多ければ追加は検討していきます。
■新型LXにトヨタ豊田社長が乗った感想は? 将来LXの電動化はあるのか?
――横尾さんはチーフエンジニアのなかでは若いと思いますが、一過言あるメンバーが多いなかでどのように手綱を引っ張ってきたのでしょうか? そしてプレッシャーは?
「生半可な物は出せないだろうな」と思っていたので、「やってダメなら心中だ!!」という気持ちで進めました。
精神論になりますが、「ブレずに通す」、「頑張り続ける」を徹底しました。そのなかでも現場の力に助けられたのは大きいですね。
――何かエピソードはありますか?
開発途中でフレームのブルブルが取れず、技術者も解決策がなく困っていたところ、現場の試行錯誤(キャブマウントの締め付けるワッシャーの径や厚みを細かく調整)で解決してくれました。
――ちなみにマスタードライバー(トヨタ社長・豊田章男氏)の評価は?
もちろん乗ってもらっています。いわれたのは「走る道はランクルと同じだが、よりフォーマル、より上質なのがLXである」と。
エグゼクティブの乗り心地をチェックしてもらったときは「4座にするのは簡単だが、その価値は?」というところも指摘いただきました。
――新型LX、どのようなお客さんに乗っていただきたいですか?
LXの価値は豪華なだけでなく、どんなところに行けることだと思っています。
今日ある道が、明日はないかもしれない……そんな視点で見ると「安心感を持てるレクサス」だと思っています。
決して安いクルマではありませんが、選択肢のひとつとして選んでいただけると嬉しいです。
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新型LXは先代の「ランクルのレクサス版」から「レクサスのフラッグシップSUV」という印象に様変わりしましたが、この最後にこの先のLXについて伺ってみました。
――12月14日に開催されたBEV説明会で「レクサスは2035年にBEV100%」と発表されました。将来的にはLXも電動化を決断しなければいけないときが来ますよね?
もちろんそうですね。ただ、現時点では「耐久性/信頼性/悪路走破性」を電動車で実現できるかが大きな課題です。
逆をいえばそれが実現できないとLXである必要はないと思っています。
加えて、「お客さまの使い方に合っているかどうか?」、そこも揃ったうえで議論していくことだと思っています。