電気自動車やハイブリッドカーに乗ることがエコという風潮がありますが、普通のガソリン車でもエコドライブを心がけることは大切です。では、エコドライブとして、具体的に何に注意して運転すれば良いのでしょうか。
■エコな「運転方法」や「心がけ」10項目
カーボンニュートラルやSDGsなどさまざまな言葉で人間生活と自然との調和・共存が訴えられている現代において、クルマにおいても地球環境への配慮が求められています。
それは開発から製造、使用から廃棄に至るまで、クルマにまつわるあらゆるシーンに該当することですが、消費者にとって身近なのは「使用」あるいは「所有」における配慮ではないでしょうか。
「環境問題」というと真っ先に思い浮かぶのが、電気自動車やハイブリッド車といったエコカーです。
それらのクルマを購入して乗ることは手っ取り早いエコですが、たとえ所有するクルマがガソリンエンジン車だとしても実は環境問題に少なからず貢献することができるのです。
その方法のひとつが「エコドライブ」です。
「エコ」+「ドライブ」という言葉からなんとなくイメージできると思いますが、エコドライブとは燃料消費量やCO2(二酸化炭素)排出量を減らし、地球温暖化防止につなげる「運転方法」や「心がけ」のことを指します。
といっても漠然としていて、具体的にいったい何をどうすれば良いのか分かりづらいというのが正直なところ。
そこで、経済産業省、国土交通省、環境省、警察庁で構成される「エコドライブ普及連絡会」が10項目に取りまとめ、日本政府が統一的なエコドライブの定義としている「エコドライブ10のすすめ」を確認してみましょう。
1.「自分の燃費を把握しよう」
燃費を知らないということは、どういう運転をすれば燃費が良くなるのか、あるいは悪くなるのかを理解できません。
また、日々の燃費を把握し数値として結果を知れば、エコドライブの達成感も得られ継続する意欲につながります。
燃費計やエコドライブナビゲーション、インターネットの燃費管理などのエコドライブ支援機能を利用して、自分のクルマの燃費を把握することを習慣にしたいところです。
2.「ふんわりアクセル『eスタート』」
10回の急発進で約170cc、10回の急加速で約110ccの燃料を浪費するとされます。エンジンの高回転域を必要以上に使うことを避け、穏やかにアクセルを踏む発進を心がければ10%程度燃費が改善するといわれています。
発進から5秒で時速20kmに達することを目安に加速するようなアクセルワークを心がけたいです。
ちなみに「ふんわりアクセル『eスタート』」とは、平成17年(2005年)に募集され、有識者からなる審査委員会の審査を経てエコドライブ普及連絡会・検討会が決定した「やさしい発進」の名称です。
3.「車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転」
車間距離が短いと前走車のちょっとした動向にあわせて無駄な加減速を繰り返すことになり、市街地では2%程度、郊外では6%程度も燃費が悪化。
事故防止の側面からも車間距離にゆとりをもち、一定の速度で走ることを心がける運転が好ましいようです。
4.「減速時は早めにアクセルを離そう」
アクセルを離しても走行中のクルマは急に止まるわけではなく、しばらくは惰性で前進します。
信号などで停止することが分かったら早めにアクセルから足を離しましょう。惰性を利用すればそのぶん燃料の消費を抑えられ、燃費が2%程度改善します。
5.「エアコンの使用は適切に」
カーエアコンはエンジンの回転を動力源としています。そのためエアコンを使うとエンジンに負荷がかかり、少なからず燃料を消費。場合によっては10%以上も燃費が悪化することがあります。
そのため、室温に応じて温度や風量、エアコンスイッチのON/OFFなど、こまめな調整が意外と効果的です。
なお、エアコンは車内を冷却・除湿する機能で、暖房はエンジンの熱を再利用しているためエアコンをONにする必要がないのも覚えておきたいポイントです。
■エコドライブは交通安全にもつながっている
6.「ムダなアイドリングはやめよう」
たとえ停車中でもエンジンがかかっていれば燃料を消費します。いわゆるアイドリングの状態のことですが、10分間で浪費される燃料は130cc程度といわれています。
少しでも無駄な燃料消費を抑えるためにも、待ち合わせや荷物の積み降ろしなどの駐停車時は、エンジンを切るようにするだけで燃料の消費を抑えることができます。
ただし、安全性の観点から、交差点で自らエンジンを止める手動アイドリングストップはやめたほうが良いでしょう。
また、現代のクルマでは基本的に暖機運転は不要で、走りながら暖める「ウォームアップ走行」で十分とされています。極寒冷地など特別な状況を除き、すぐに走り出す習慣を身につけたいところです。
7.「渋滞を避け、余裕をもって出発しよう」
ストップ&ゴーを繰り返したり、長時間同じ場所にとどまってアイドリングを続ける「渋滞」は、クルマにとって最も非効率的な状況です。
また、道に迷い余計に走ったり時間をかけてしまったりすることも無駄の極みといえるでしょう。
1時間のドライブで道に迷い10分ほど余計に走行すると17%程度も燃費が悪化します。
出発前にルートや渋滞・交通規制などの道路交通情報を確認し、できるかぎりロスを減らす走行ルートを考えるのもエコドライブにつながります。
8.「タイヤの空気圧から始める点検・整備」
タイヤの空気圧が不足すると接地面が増えることから抵抗も増加。市街地で2%程度、郊外で4%程度燃費が悪化します。
タイヤの空気圧は1か月で5%程度低下するため、日常的なチェックが必要です。
また、エンジンオイルが劣化したり、オイルフィルターやエアクリーナーエレメントなどが汚れたりするとエンジンの効率が下がり、燃費に悪影響を及ぼします。定期的な点検・整備を心がけたいところです。
9.「不要な荷物は降ろそう」
燃費にはクルマ全体の重量が大きく関係します。そのためメーカーの開発陣は血のにじむ努力でグラム単位の軽量化を図っていますが、ユーザーが不要な荷物を積んでしまうとその努力も水の泡です。
たとえば100kgの荷物を載せて走ると、3%程度も燃費が悪化してしまいます。運ぶ必要のない荷物はクルマから降ろすようにしましょう。
10.「走行の妨げとなる駐車はやめよう」
ここまでの9項目は自身のクルマの燃費改善やCO2排出量削減にまつわる内容でしたが、最後のひとつはほかのクルマのためです。
交通の妨げになる場所での駐車は渋滞の原因となり、ほかのクルマの燃費を悪化させてしまいます。
逆に迷惑駐車の少ない道路では平均速度が向上し、燃費も良くなるという好循環です。他車の妨げになるような場所での駐車はしないという意識が大切です。
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「エコドライブ10のすすめ」の内容をよく見ると、燃料消費量やCO2排出量を減らすというエコロジー&エコノミーなだけでなく、安全運転にもつながっていることが分かります。
たとえば穏やかな発進や車間距離の確保は交通事故の可能性を減らし、タイヤの空気圧など定期的な点検・整備は無用なトラブルを回避します。
不要な荷物を積んで走れば重いぶんだけ制動距離が長くなり、同乗者を不安にさせてしまうこともあります。
良いこと尽くめのエコドライブ。まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。