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前輪駆動車は運転が楽しくないってホント? 優れたハンドリングを実現した画期的なFF車3選

くるまのニュース 2022年1月30日 16時10分

現在、多くのクルマは駆動方式に前輪駆動(FF)を採用しています。しかし「FFは運転が楽しくない」という人がいますが、本当にそうなのでしょうか。そこで、楽しいドライビングを実現した画期的なFF車を紹介します。

■フロントにエンジンを搭載し、前輪を駆動・操舵するのがFF車

 前輪駆動車(FF)は、重量物であるエンジンとトランスミッションを前輪車軸の前に搭載し、さらに前輪で駆動しつつ前輪で操舵する駆動方式です。

 前輪に大きな車重と負担がかかり、そのため、ゆっくりと発車するときには駆動輪である前輪が空転しづらく、滑りやすい道の発進でもスリップしづらいという利点があります。

 また、ハンドルを切った方向に駆動していくために、ある程度の車速までは操舵に応じてクルマの方向が変わっていきます。

 しかし、急発進時をすればするほど、車重が前輪側から後輪側へと移動するために前輪を地面に押さえつける力が減少し、前輪が空転しやすくなります。

 また、タイヤが出来る仕事量は決まっており、前輪が横滑りをしてコーナーの外側にふくらんでしまう「アンダーステア」が出やすくなったり、クルマがコーナーの内側に巻き込むように曲がる「タックイン」という現象が起こったりもします。

 このような特性により、「FF車はコーナーが苦手」とされていましたが、なかにはFFの評価を一転させた運転が楽しいクルマがありました。

 アンダーステアの度合いが小さく、ドライバーの意のままにコーナーを曲がれるようになった画期的なFF車にはどのようなモデルがあるのでしょうか。3台ピックアップして紹介します。

●ホンダ「インテグラ タイプR」

 ホンダ「インテグラ」のDC1/2、DB6-9型は、1993年5月に3ドアクーペが、同年7月に4ドアハードトップが登場しました。

 搭載されたエンジンのうちもっとも高出力の1.8リッターVTECエンジン(B18C型)は180ps/7600rpm 17.8kg・m/6200rpmの高回転高出力を誇り、登場当初から高性能クーペ、ハードトップとして注目されていました。

 しかし、個性的なプロジェクターレンズによる4灯式ヘッドライトは好みが分かれたようで、日本国内モデルは1995年8月に異形二灯式ヘッドライトに変更されました。

 このときに、エンジン、サスペンション、ボディにまで特別なチューニングを受けた「タイプR」グレードを設定しています。

 とくにエンジンには、インテークマニホールドを作業員がひとつひとつ研磨するチューニング法などが採用され、性能は200ps/18.5kg・mまでアップされていました。

 もともと評価が高かったハンドリングは、サスペンションとボディの強化によりさらに向上。

 状況によっては後輪から滑り出すこともあるシャープなハンドリングで、これまでのFF車の常識を超えているとさえ評価されました。

 もっとも、タイプRの高性能ぶりは乗用車としての快適性を犠牲にしたものであり、遮音材の省略による車内騒音の増加、サスペンション強化による乗り心地の悪化などがあったのも事実です。

 しかし、タイプRは「FF車はファミリーカー向けの駆動レイアウト」とされていた常識を覆し、チューニングの思想は現在の「シビック タイプR」にもつながっているのですから、革命的なモデルだったといえます。

■安定したコーナリングを得意としたFF車とは

●三菱「FTO」

 三菱「FTO」は、同時期に発売されていた「GTO」の弟分として、1994年10月に発売されました。

 1971年発売の「ギャランクーペFTO」の名前を受け継いでいますが、FTOはFF化されていたランサー・ミラージュ系のシャシを用いたFF2ドアクーペです。

三菱「FTO」

 エンジンは3種類で、2リッターV型6気筒(6A12型)は「MIVEC」と称する、ホンダの「VTEC」と同様の可変バルブタイミング&リフト仕様の200ps/20.4kg・mと固定バルブタイミング仕様の170ps/19.0kg・m、1.8リッター直列4気筒(4G93型)の120ps/16.5kg・mが搭載されていました。

 ボディは、4320mmの全長に比較的長い2500mmのホイールベース、そして1735mmの広い全幅で、高いボディ剛性とマルチリンク式のリヤサスペンションなどにより高いハンドリング性能を誇りました。

 さらに特徴的だったのはATで、三菱お得意の「INVECS-IIマニュアルモード付ファジイ制御」を搭載していました。

 このATは200以上の変速パターンが記憶され、Dレンジではドライバーの運転に合わせた変速制御がおこなわれるようになっています。

 また、シフトレバーをDレンジから左側に倒すとマニュアルモードとなり、レバーの前後操作でギヤをドライバーの思い通りに選択できました。

 ATは登場当初こそ4速でしたが、1997年2月には5速へと進化しています。

 FTOは、クーペならではの流麗なスタイル、よく吹け上がるMIVECエンジン、高いハンドリング性能、特徴的なATと非の打ち所がないクーペで、1994-1995年のカーオブザイヤーを受賞しました。

 しかし、クーペ市場は当時すでに縮小傾向にあったために販売は芳しくなく、2000年7月にGTOとともに生産を終了しました。

●マツダ「ランティス」

 マツダ「ランティス」は1993年8月に発売されました。

 マツダの経営状態にも影響した「クロノス」と「ファミリア」の間に位置するクルマで、ドアガラスにサッシがないタイプの4ドアセダンと、リアにバックドアを設け、ファミリア系列にラインナップされていた「アスティナ」の後継的位置づけとなる4ドアクーペの、2種類のボディスタイルで登場しました。

 エンジンは、2リッターV型6気筒(KF-ZE型)の170ps/18.3kg・mと、1.8リッター直列4気筒(BP-ZE型)135ps/16.0kg・mの二本立てでした。

 どちらかというと5ドアハッチバックのV型6気筒エンジン搭載車がイメージリーダーで、新しい感覚を感じさせるモデルに見られていました。

 さらにランティスは、1996年に始まった新衝突安全基準を先取りして適合した第一号車で、新しいシャシによるボディ剛性の高さも売りのひとつでした。

 一般的に、重量がかさむV型6気筒エンジンを搭載すると前輪の荷重が大きくなりすぎ、コーナーではアンダーステアが出やすくなるものです。

 そこをランティスは、高いボディ剛性とサスペンションの剛性でこのアンダーステアを軽減。ステアリングを大きく切っても操舵が効く、安定したコーナリングを可能としていました。

 さらには当時日本国内で開催されていたツーリングカーレースのJTCCにも出場するなど、スポーツ性能を全面的に押し出したモデルでもあったのです。

 残念ながらレースでは芳しい成績は残せなかったものの、FF車のハンドリングを向上させた1台であることに変わりはありません。

 スタイルとハンドリング性能から、「通好みのクルマ」としてファンを集め、1997年12月まで生産されました。

※ ※ ※

 現代のFF車は、かつてのようにアンダーステア一辺倒ということは少なくなっています。

 FF車が増えはじめた頃と比較すると、タイヤの性能が向上、サスペンション取り付け部分の剛性強化、ボディ剛性の強化、さらに横滑り防止装置との協調した駆動力制御と相まって、FR車と比較しても駆動方式によるハンデはほとんどなくなったといえます。

 しかし、前輪が操舵と駆動を受け持っており、フロントタイヤの負担が大きいことに変わりはありません。

 スポーツドライビングとは、絶対的に高性能なクルマを操縦することではなく、クルマの欠点を補いながら速く走らせることだとすれば、FF車にはFR車とはまた違った楽しみがあるといえます。

 FF車をスポーツドライビングが可能なレベルまでアップしたこの3台は、自動車のハンドリング史のなかで燦然と輝き続けることでしょう。

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