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すごみある走り味! 三菱「アウトランダーPHEV」は売れ行き好調も…急激な「EVシフト」でPHEVに未来はあるのか?

くるまのニュース 2022年2月2日 10時0分

三菱の新型SUV「アウトランダーPHEV」の売れ行きが好調ですが、一方で世界的には「EVシフト」がハイペースで進んでいます。PHEV(プラグインハイブリッド車)は生き延びることができるのでしょうか。

■走り際立つ新世代PHEV

 三菱の新型SUV「アウトランダーPHEV」の評判が高く、販売も好調です。

 2021年12月16日の発売から約1か月後には、販売総数が月販目標の9倍となる9000台を超えています。

 人気の理由は、三菱らしい威風堂々とした押し出し感のある顔や筋肉質なボディデザイン、先代と比べて少なくとも2ランクはアップしたと感じるセレブ感満載のインテリア、そしてプラグインハイブリッドと7つの走行モードを持つ電動四駆機構といえるでしょう。

 実際に走らせてみて、その走り味がいかに他の電動車と違うかが、はっきりと分かりました。

 最初に、千葉県内にあるオフロードコースを攻めてみたところ、アクセルオンでクルマのリアが積極的にコーナーの内側に回り込もうとする動きが実感できました。

 見た目の印象とは正反対に、とにかく軽快に走ります。100kWという強靭なリアモーターと、前後輪のAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)のバランスが絶妙なのです。

 三菱関係者は「ラリーで培った豪快な走りのテイストも取り入れた」と表現するほど、すごみのある走り味です。

 次に市街地を走行してみると、エンジンがかかるタイミングのほとんどは、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッドの状態のときです。エンジンの作動音もかなり抑えられています。

 電動関連分野の開発者は「モーターがエンジンをアシストするのは、100km/h以上の高速域や、60km/h程度以上でアクセルを大きく踏み込んだ場合です」と説明します。

 また、欧州系メーカーのPHEV(プラグインハイブリッド車)と比べ、シリーズハイブリッドの機能が強いことについては「我々のシステムはEVを基本として、そこにシリーズハイブリッドが加わるイメージ。他社はEV走行以外だと、一般的なハイブリッドに戻ってしまいエンジンの存在感が増すというイメージがあるのでは」と指摘します。

■欧州EVシフトの影響大きい

 新型「アウトランダーPHEV」の出来栄えが良いことから、今後も国内外のさまざまなメーカーからPHEVが日本で登場することを期待したいのですが、残念ながらそうならない可能性も考えられます。

 最大の理由は、欧州市場を起点とした急激なEVシフトです。

 たとえば、英国のジャガーは2025年に新車の100%をEV化すると決めていますし、スウェーデンのボルボは2030年に、またドイツのメルセデス・ベンツは、市場環境が整えばという前提ながら2030年に新車100%EV化を目指しています。

 メルセデス・ベンツのEV戦略については、日本貿易振興機構(ジェトロ)がドイツ発の情報として、メルセデス・ベンツのEVとPHEVを合わせた数は、同社の乗用車販売台数に占める割合で2020年が7.4%、2021年上半期が10.2%だったと公表しています。これを、残り8年間で10倍の100%まで持っていこうというのです。

 現実を見ると「まずPHEVを出してからEVへ」と段階的に引き上げていくような時間的な余裕はなく、現状のガソリン車、ディーゼル車、PHEVは次々とEVに置き換わっていくことを意味しています。

 その他の欧州メーカーの場合、2000年代から2010年代中頃までは、その後のEVへの移行期がかなり長いと予測していたため、PHEVモデルを積極的に加えていく動きが見られました。

 それが、2010年代後半から現在まで続いている欧州市場での政治的な動きによる急速なEVシフトに押し流されてしまいそうな雰囲気なのです。

■どうなる日系メーカーと日本市場の動き

 では、日系メーカーではどうでしょうか。

 たとえば、トヨタは2021年12月に発表したように、2030年には年間350万台のEVを製造・販売するという目標を掲げています。

 ただし、同社の豊田章男社長はそれぞれの国・地域の社会特性に合わせて、HVからFCV(燃料電池車)、水素燃料車までの「全方位戦略」を強調しています。

 日本については、世界でも稀なハイブリッド車の普及率が高い市場です。そうしたハイブリッド車の母数を下地として、PHEV、EV、そしてFCVへと段階的に電動車市場が広がるというのが、これまでトヨタが描いてきた未来予想図ですし、これからもその基本路線は変わらないと思います。

 そのため日本では、欧州市場のようにEVへ“ひとっ飛び”するのではなく、幅広い生活環境にマッチするPHEVについても拡充する可能性は十分にあると思われます。

三菱SUV「アウトランダーPHEV」

 では、その他のメーカーはどうでしょうか。

 日産のHVは、シリーズハイブリッドの「e-POWER」が主流であり、日産の関係者は「現状でプラグインハイブリッドのe-POWERを開発するという可能性は低い」と指摘します。

 ホンダは、2040年にグローバルでEVおよびFCV100%を目指すと宣言しています。そのうえで、ホンダの主戦場であるアメリカが、連邦政府の方針として将来的なPHEV存続の可能性を示唆しているため、ホンダとしてはPHEVの新規導入も十分あり得るのではないでしょうか。

 そして、現時点で新型PHEVの導入を決定しているのが、マツダです。マツダ第7世代商品群で、FR(フロントエンジン・後輪駆動車)をラージ商品群と位置付けており、縦置き直列4気筒エンジンのPHEVを、「CX-60」を筆頭に日本にも導入する計画があります。その反面、マツダとしては欧州でのEV市場への早期の対応が必須となってきました。

 その他、スバルは北米向け「クロストレック」(日本名「XV」)にPHEVがありますが、日本での発売予定は今のところないようです。

※ ※ ※

 自宅近くの生活圏は充電した電気でEVとして動き、少し遠出するときは電欠を気にすることのないHVになるという、技術的に賢いPHEV。

 世界的なEVシフトの影響が今後、日本のPHEV市場にどのような影響を及ぼすのか、今後の市場動向を注視していきたいと思います。

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