日本を代表する高級車として知られるトヨタ「クラウン」ですが、セダン不況の昨今においてはその人気にかげりが見えつつあります。そんなクラウン人気の変化は、残価率にも表れているようです。
■苦境に立たされるクラウン、その様子は残価率にも
トヨタ「クラウン」といえば、1955年に初代が登場して以来、長きにわたって日本の高級車の代表的存在として君臨し続けてきました。
ただ、そんなクラウンも、現在では時代の流れに飲まれて苦しい立場にありますが、現在の販売動向はどのような状況なのでしょうか。
かつては「いつかはクラウン」といわれ国産高級セダンの代名詞でしたが、2005年にレクサスが国内導入されたことで、国産高級セダンとしての地位はレクサス「LS」や「ES」などへと移りつつあります。
さらにはセダン市場そのものの不況により、かつてのような憧れの存在ではなくなりつつあるのが現状です。
そうした現状を打開するために、2018年に登場した現行クラウンでは、日本の道路事情に合わせたサイズ感はキープしながらも、新開発のプラットフォームの採用やドイツ・ニュルブルクリンクでの開発テストなどによって、スポーティセダンとしての性格を強めました。
それでも、数少ないセダン需要の多くは、機能面で優れるドイツ系プレミアムブランドやレクサスのライバル車種へと流れるなど、クラウンは苦しい立場にあります。
そんなクラウンの現状をシビアに表しているのが残価率です。残価率とは、新車価格における買取価格の割合を示したもので、いわゆる残価設定ローンの支払額算出の根拠となるものです。
残価率は、おもに中古市場での再販状況を見て、販売店(メーカー)によって決定され、一定のタイミングで更新されるのがふつうです。
残価率が高ければ高いほど、中古市場で人気の高いクルマということになりますが、中古車の需要と新車の需要には一定の相関が見られるため、残価率の高いクルマは新車市場でも人気の高いクルマということができます。
一般的に、3年後の残価率が50%を超えるクルマはリセールバリューが高い、人気のクルマであるとされます。
トヨタの場合、「ランドクルーザー」や「ヤリスクロス」、「ハリアー」、「アルファード」といった車種は残価率が高めに設定されており、近年の人気を反映していることがうかがえます。
一方、クラウンの3年後の残価率は46%(2022年1月末時点)となっています。
さらに、4年後は36%、5年後は29%に設定されており、トヨタ車のなかでも低いレベルだといえます。
セダン不況の結果といえばそれまでですが、実は2021年時点での残価率はトヨタ車のなかでもトップクラスであったとされており、あるタイミングで大きく残価率が下げられたという見方があります。
■慎重な残価率設定は、大きな変化の前触れ?
クラウンは、法人需要が多いというその性格上、中古車市場での需要もほかの車種とは異なる傾向があります。
法人が社用車としてクルマを購入する場合、節税が目的のひとつとなることがほとんどです。
現在の日本の税制では、新車よりも中古車のほうが節税効果が高いとされていることから、高年式の中古車には一定の需要があります。
そのため、法人車両の代表格といえるクラウンの場合も、高年式の中古車には一定の需要があるといえます。
そのため、セダン不況と言える昨今でも、クラウンだけは残価率が高く設定されていました。
一説によると、3年後の残価率が70%という「超高レベル」に設定されていたこともあると言われています。
しかし、前述の通り、現状のクラウンの残価率は決して特別なものではなくなっています。
その背景には、早ければ2022年中にも発表されるという次期クラウンの存在があると考えられます。
一般的に、次期型モデルが登場すれば現行モデルの需要は低くなるのがふつうです。
次期クラウンについて、現時点ではトヨタから公式発表はありませんが、ボディタイプを含めて大きく性格の異なるモデルになるともいわれており、詳細の発表が待たれるところです。
次期クラウンがどのようなモデルへと生まれ変わり、また、3年後以降にどのように市場に受け入れられているかは定かではありません。
残価率は、過去の動向を統計的に分析したうえで決定されるものですが、大きな変化が予測されるモデルでは過去のデータがそれほど役に立ちません。
そのため、販売店(メーカー)としても、残価率は慎重に設定せざるをえないことになります。
逆にいえば、次期クラウンがこれまでのモデルとは大きく性格を変える可能性が高いことが、慎重な残価率設定からもうかがえるのかもしれません。
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残価設定ローンが一般化しつつある現在では、多くのユーザーが残価率を気にするようになったといわれています。
ただ、残価設定ローンを利用するかどうかにかかわらず、残価率を知ることには大きなメリットがあります。
新車購入の際には、残価率について販売店に聞いてみるのもよいかもしれません。