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クルマの「ホーン」なぜ多彩な音色? 高音・低音など異なる訳 時代でも変化か

くるまのニュース 2022年2月6日 9時10分

運転中に危険を感じた際などに使用するホーンですが、高音や低音などモデルによって異なるイメージがあります。実際にホーンの音域はどのように決まっているのでしょうか。

■ホーンの音は「クルマによって違う」は厳密にいうと間違い?

 クルマのホーンは、決められた標識がある場所や危険を防止するときに鳴らすことが定められており、頻繁に使用するというものではありません。
 
 そんななか、街中を走行していると自車とは違うホーンの音を耳にすることがあります。ホーンの音はクルマによって異なるのでしょうか。

 公道を走行するすべてのクルマに搭載されているホーンは、クルマのハンドルと一体型となっている機能で、押すと「ブー!」や「プー!」といった大きな音が鳴ります。

 ホーンは、「警音器」という名称で道路交通法第54条において、見通しの悪い交差点や曲がり角、山の頂上などで、なかには「警笛鳴らせ」の標識が設置されている場所で鳴らすことが定められています。

 一方で、それ以外の場所であっても危険を防止するためであれば使用しても良いとされており、緊急回避のためにホーンが使用される場合もあります。

 そんなホーンの音ですが、実は車種によって微妙に異なるといわれています。

 SNSでも「高級車のホーンって良い音だよね」「友達のクルマと音が違うのがおもしろい」といった投稿が見られます。

 では、実際にホーンの音は、車種によって異なるのでしょうか。

 老舗の警報器メーカーである宮本警報器の担当者は、このことについて「モデルごとに異なるというよりは、各メーカーで音が違うという認識のほうが正しいと思います」と話します。

 各自動車メーカーは警報器の製造を決まった警報器メーカーに依頼しているのが一般的で、例えば宮本警報器では、主に日産車の警報器を製造しています。

 そして、警報器メーカーが異なると、おのずと搭載されるホーンも異なるため、各自動車メーカーによって、ホーンの音が異なるものに聞こえるというわけです。

 では、そんなホーンの音は自動車メーカーから依頼によって、モデルごとの音色が変更されることはあるのでしょうか。

 前出の担当者は「当社では長く日産車のホーンを製造していますが、クルマによって異なるホーンを製造してほしいとのご依頼はありません」として、以下のように説明を続けます。

「実は、各メーカーがホーンに使用している音の周波数や音圧に大きな差はないため、そこまで大きな音色の違いは生じないはずです。

 ただ、クルマによって取り付ける場所や取り付け方が多少異なるため、人によってはわずかに音が違うと感じることはあるかもしれません。

 また、製造に使用する材質によっても音色が変化することはあります」

 このように、ホーン自体の構造というよりは、取り付けにかかわるブラケットやステーの長さ、取り付けの際のホーンの締め付け方、材質などの違いから、音の変化が生まれているのかもしれません。

 なお、前述したように現行型のモデルは基本的に同一のホーンであることが多いようですが、「販売終了したモデル向けにホーンを製造してほしい」などのメーカーからの依頼で、例外として異なる種類のホーンを製造することはあるそうです。

■最近のホーンは音が高くなっている? 近年のホーンの変化とは

 宮本警報器では大きく「平型」と「渦巻型」の2種類のホーンを製造しています。

 それぞれ高音と低音のふたつをセットで組み合わせて和音を奏でています。

 平型は太鼓のように叩いて(パーツが衝突し合って)音を出しており、鋭く高い音色が特徴です。

 一方、渦巻型はラッパのように空気振動を活用したホーンでやわらかい音色となっています。

 最近の国産車では平型の普及率が高くなっていますが、平型のホーンには昔と今とで音に変化が見られます。

 前出の担当者は、昔と今のホーンの違いについて以下のように話します。

「ホーンも日々改良が重ねられ、モデルチェンジすることがあります。

 例えば、昔と今ではホーンの直径が異なり、最近のものは小型になってきています。

 また、音の高さについてメーカーから要望を受けたことはあり、昔より今のほうが音の周波数が高くなっています」

昔と今では音域が違う? どのような変化があるのでしょうか?

 かつて宮本警報器で製造していたホーンは、直径120mmほどでしたが、年々小型化しており、最近のホーンは直径70mmまで小さくなっているそうです。

 ホーンが小型化することで、製造にかかる材料も減り、コストが安価に抑えられます。また、狭いスペースにも設置がしやすいというメリットがあります。

 さらに、ホーンは前述したように高音と低音のセットとなっており、かつて、宮本警報器では「低音:315ヘルツ+高音:370ヘルツ」の組み合わせでホーンを製造していましたが、現在では「低音:400ヘルツ+高音:500ヘルツ」のホーンが製造されています。

 これは、安全性の観点から考えられており、人の耳は音が高ければ高いほど、音が鳴っている方角を特定しやすいとされています。

 一方で、人間の耳が音を聞き取りやすい範囲はだいたい20ヘルツから2万ヘルツとされており、高齢になるほど高い音は聞き取りにくくなります。そのため、高すぎると聞き取りにくいというデメリットが発生します。

 また、ホーンは音が周囲に聞こえるように大きく鳴る必要があるため、高すぎる音に設定してしまうと、音が過剰に聞こえ、耳をつんざくようにうるさく感じることもあるようです。

 400ヘルツ、500ヘルツはだいたい男性が話す時の声の高さと同様で、多くの人に親しみやすく、大きな音でもうるさすぎず、人に認識されやすい高さであることからホーンに採用されたと考えられます。
 
※ ※ ※

 なお、欧州系高級車のホーンは、国産車に比べて高い音が採用されていることがあります。

 これは、国産車よりも高速域での走行が想定されていることから、音の方角を判断しやすい高音のものが採用されたようです。

 また、前出の担当者によると「かつて高級輸入車『ポルシェ』のホーンの音色が評判となり、『ポルシェホーン』と呼ばれることがありました。そこから『高級車=高い音のホーン』というイメージが定着したと考えられます」といいます。

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