クルマの交通事故において、動物のなかでとくに猫の被害が多いといいます。なぜ猫はクルマとの事故に遭いやすいのでしょうか。
■交通事故に遭いやすい?猫の生態とは
ペットとして人気の猫ですが、実はクルマとの交通事故の件数がとても多いのが実情です。
その背景には猫の生態が深く関わっているようですが、どのような生態が関係しているのでしょうか。
クルマを運転していると、猫が道路沿いの植木に隠れていたり、道路を横断する様子見かけりすることがあります。
また、まれに道路上でクルマに引かれそうになっている猫も見かけることがありますが、さまざまな動物が存在するなかで、なぜ猫はクルマとの事故が多い傾向にあるのでしょうか。
猫の交通事故が多い要因について、京都大学の動物心理学研究チームの「CAMP-NYAN(キャンプニャン)」は、複数の見解を示しています。
第一に挙げられるのが「猫のもつ狩猟本能から獲物を追いかけているうちに車道に飛び出してしまう」という猫の本能についてです。
猫は、たとえ交通量が多い道路であっても、鳥やネズミなど、猫が本能的に追ってしまいたくなる生き物がいれば、追いかけてしまう傾向にあります。
また「通勤ラッシュでクルマの交通量が増加する時間帯に、活発に行動するという習性を持った生き物である」ことも原因のひとつでしょう。
多くの人は、猫の大きな特徴のひとつに「夜行性」が思いつくかもしれませんが、実は猫は「薄明薄暮性」の動物です。
薄明薄暮性とは、明け方や夕方に活発的に行動する習性のある生き物のことを指し、人間が朝の通勤や夜の帰宅などで頻繁に行き来する時間帯に行動します。
こうした人間の活動と猫の活動時間が重なっていることも、猫とクルマの交通事故が多い理由のひとつといえるでしょう。
ほかにも、猫には「大きな音や光に敏感」という特徴があり、自動車の大きいクラクションやハイビームは猫にとって大きな脅威の対象となり、クルマの出す大きい音や光に驚いた際に、恐怖で動けなくなってしまうこともあります。
このように、猫の交通事故が多い原因は主に猫の生態が関係していることがうかがえますが、原因は猫の生態以外にも挙げられます。
東京都にある動物愛護団体の担当者は、猫が交通事故に遭いやすい理由について以下のように話します。
「外にいる環境に慣れている猫であれば、クルマ通りが多い道路は危険なことをある程度は認識することはできますが、子猫や人が多い場所に慣れていない猫はびっくりしたことによって逆に道路へ飛び出してしまうことがあります」
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交通事故に遭いやすい猫は、生態だけではなく、環境に慣れているか、人に対して畏怖を抱いていないかというような、外部環境も大きな要因となっていることがうかがえます。
■交通事故から猫を守る対策とは
猫は生態や外部環境など、さまざまな理由によって交通事故に遭いやすいといえますが、被害を減らすために何か対策はおこなわれているのでしょうか。
大手カー用品店のイエローハットは、前出のキャンプニャンと共同で制作した世界初の「猫専用の交通安全動画」をYouTubeで公開し、猫の交通事故を減らすための対策を促しています。
この動画に使用されている楽曲は猫の可聴領域を活用して制作されており、猫の注意を引き、飽きさせないような工夫がされています。
実際に動画を用いた検証では、猫10匹が動画に集中している様子も見られ、動画が猫を引きつけることに有効的であることがうかがえます。
そのため、例えば野良猫を安全な場所に集めたり、ペットの猫を庭から室内へ引き戻したりする際に、猫を引きつけたい場所にタブレットなどを設置して動画を流すと効果的といえるかもしれません。
また、私たちが普段から実施できる対策として、自動車メーカーやJAFが推奨している「猫バンバン」が挙げられます。
猫バンバンとは、寒くなると猫が温もりを求めてエンジンルームやタイヤの間に入ってしまい、それに気づかずにエンジンをかけてしまうことを防ぐための対策術です。
クルマに乗る前にボンネットをバンバンと叩くだけで猫に私たちの存在を気づかせることができます。
さらに前出の担当者は、対策として「家で飼っている猫は外の環境に慣れていないため、極力外に出さないであげることが1番です」と話します。
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私たちの知らないところで、多くの猫がクルマとの交通事故の被害を受けています。
クルマを運転する人は、猫の習性を理解するだけでも事故を未然に防ぐことができるかもしれません。