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単なる「マイチェン」とは違う? 大幅進化の「ビッグマイナーチェンジ」が実施される事情とは

くるまのニュース 2022年3月6日 11時10分

クルマは定期的に「フルモデルチェンジ」や「マイナーチェンジ」などをおこなって進化していきますが、最近「ビッグマイナーチェンジ」というのを耳にすることが増えました。通常のマイナーチェンジとはどう違うのでしょうか。

■「マイナーチェンジ」と「ビッグマイナーチェンジ」の違いとは?

 時代のニーズに合わせるため、クルマは数年ごとに「フルモデルチェンジ」をおこなって進化します。また商品力をアップさせるために、毎年のように「一部改良」が施されたり、「マイナーチェンジ」と呼ばれる変更がおこなわれたりします。

 しかし最近ときどき耳にするのが「ビッグマイナーチェンジ」という言い方です。

 日本語にすると「多岐にわたる小変更」とでもいえますが、普通のマイナーチェンジと何が違うか、なかなか難しいところです。

 ビッグマイナーチェンジでは、一体どのような変更がおこなわれるのでしょうか。

 まず、クルマがモデルチェンジする理由は大きく分けてふたつあります。

 ひとつは新しい技術を反映した装備に更新する技術的な側面と、もうひとつは「より魅力的に見せる」ことで商品力を向上させて購買意欲をあおる販売的な側面です。

 車名は継続しても、プラットフォームやパワートレイン、内外装などすべてが刷新されるのがフルモデルチェンジで、かつては多くのクルマが4年に1度の頻度でおこなわれていましたが、最近はこのサイクルが長期化しており、登場から7、8年経過してもモデルチェンジしない車種が増えています。

 これは、以前は新車の車検が切れるタイミング(3年)で乗り換える人が多かったものの、現在は1台の保有年数が7年から8年まで伸びており、すぐには乗り換えない人が増えているという、ユーザーの保有意識の変化が影響しているといわれています。

 メーカーとしても膨大な金額を投資して新型車を開発するわけですから、できるだけ同じクルマを長期間販売していきたいという思惑があります。

 また、環境性能や新たな安全装備、運転支援システムや自動運転など、開発費も時間もかかる装備はフルモデルチェンジでないと更新できないことがほとんどです。

 長く売り続けたいけれど、そのままでは商品力が落ちてしまう――このようなジレンマを少しでも解消するため、プラットフォームやパワートレインはそのままで、新しい装備の追加やオプションだった装備を標準搭載したり、内外装に小変更を加えたり、技術的な改良などを施して商品力のテコ入れとしてマイナーチェンジをおこなうのです。

 なお、マイナーチェンジよりも小さな変更をおこなう場合は、「一部改良」と呼びます。

 そして、最近よく聞くようになったビッグマイナーチェンジですが、これはプラットフォームなど根幹部品をそのまま継続使用しつつ、パワートレインの追加や新しいグレードの追加、内外装のデザインを大幅に刷新したものを指しています。

 ただ、プラットフォームはそのままでも、エクステリアを中心に大幅に刷新するなどといった場合でもフルモデルチェンジと呼ぶことがあるため、定義が曖昧ともいえます。

※ ※ ※

 ちなみにマイナーチェンジやビッグマイナーチェンジでフロントマスクのデザインをガラリと変えるケースがありますが、こちらは「フェイスリフト」と呼ばれる手法です。

 たとえばクルマ本体の出来は非常に高いのに、エクステリアデザインが不評で売れなかったときなど、フロントマスクを変更すると販売が上向きに転じることもあります(その逆もありますが)。

■ビッグマイナーチェンジで商品力をアップさせたモデルは?

 販売が好調だから大きく変える必要がないケースや、逆に新型の開発が遅れていてひとまず現行モデルを延命措置するためなど、ビッグマイナーチェンジにはさまざまな事情がありますが、最近では熟成以上のアップデートとして採用されることが多いようです。

 大幅なアップデートでさらに商品力を高めたモデルにはどのようなものがあるのでしょうか。

●マツダ「CX-5」
 現在のマツダはSUVを主軸としたラインナップとしていますが、その中心となるのが「CX-5」です。

 2012年に誕生した初代は、「SKYACTIV」技術を採用し、とくにクリーンディーゼルエンジンで環境対策を図った作戦が大当たり。新世代のマツダを象徴する1台としてヒットモデルになりました。

オフロード色を強めたマツダ新型「CX-5 フィールドジャーニー」

 2017年には現代風の薄目ヘッドライトが印象的なフロントフェイスなどエクステリアも大幅に進化。使い勝手の良さそうなミドルサイズSUVとして手堅く「キープコンセプト+α」路線で高い商品力と人気を維持しています。

 そんなCX-5が2021年12月に大きく進化。マツダとしては大幅改良という扱いとしていますが、内容的にはかなり深部にまで手をつけたビッグマイナーチェンジがおこなわれ、「マツダ3」から採用された第7世代にあたる「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」が盛り込まれました。

 そして、これまでのCX-5のデザインを保ちつつ、ヘッドライトをL字型の4連に変更するなど都会的なルックスをブラッシュアップしたこともトピックスですが、さらに大きく変わったのが、これまでの都会派SUVをアピールしていたCX-5に、オフロードを意識した特別仕様車として「フィールドジャーニー」が設定されたことです。

 新型CX-5から、シーンに応じて走行モードが変更できる「Mi-Drive(マツダ・インテリジェント・ドライブ・セレクト)」が採用されましたが、フィールドジャーニーでは「オフロード」を専用設定。

 さらに車体フレームに減衰構造が採用され、シートフレームの取り付け剛性を強化、スプリングやダンパーのセッティングの見直し、ロードノイズの低減なども実現しました。

 オフロード志向のフィールドジャーニーだけでなく、スポーティな装備の「シグネイチャースタイル」や上級仕様の「エクスクルーシブモード」なども設定。これまで以上に幅広いニーズにも対応してくれそうです。

●レクサス「IS」

 高級ブランド「レクサス」の4ドアスポーツセダンとして人気を誇る「IS」。現行モデルは2013年登場し、2016年にマイナーチェンジがおこなわれたとはいえ、すでに8年以上が経過しているロングセラーモデルです。

 高級感は変わらないものの、やはりブラッシュアップは必要とのことで、2020年11月にビッグマイナーチェンジが実施されました。

 ビッグマイナーチェンジとはいえ、フルモデルチェンジに匹敵する内容となっており、ボディサイズを拡大するなどかなり大掛かりな変更がおこなわれています。

 全長4170mm(+30mm)×全幅1840mm(+30mm)×全高1435mm(+5mm)となったボディはよりグラマラスになり、トレッドもフロント1580mm(+45mm)、リア1570mm(+30mm)へと変更。車両安定性も向上させました。

 これに合わせて前後19インチタイヤを装着しながらも、車両重量はわずか+10kgの1690kgに収めています。

 いまや貴重な大排気量の3.5リッターV型6気筒エンジンはスポーツグレード「Fスポーツ」のみ搭載となりましたが、新設した車両開発用のテストコースで徹底的に走り込み、操縦性や乗り心地を鍛え上げました。

 さらに、先進運転支援システム「レクサス・セーフティー・システム+」もアップデートされ、大型のタッチパネル式マルチメディアモニターも装備しています。

 そしてデザインは、レクサスの象徴でもある「スピンドルグリル」がさらに幅広くなり、ヘッドライトはデイタイムランニングライトの位置を上部に移設した小型タイプに変更。ボディのサイズアップと合わせてワイド&ロー感がさらに強調され、スポーツセダンとしての存在感をより一層高めました。

●日産「エルグランド」

 現在のミニバン市場ではトヨタ「アルファード」が圧倒的な人気を誇っていますが、もともとミニバンに豪華さやハイパワーといった付加価値を与えた「高級ミニバン」の先駆けとなったのが、日産「エルグランド」です。

 1997年にデビューした初代エルグランドは、キャブオーバータイプの1BOX「キャラバン」から受け継ぐ部分もあったことで、ボンネットのあるミニバンとしては珍しいFR方式を採用。

 さらに「フェアレディZ」や「ムラーノ」などにも搭載された3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載し、パワフルな走りも楽しめるミニバンでした。

 2002年誕生の2代目もFR方式を採用。低床がミニバンのトレンドとなっていたなかでシャフトの関係で低床化も実現できず、また燃費を含む環境性能では逆に大排気量エンジン搭載は足かせとなっていました。

 そこで時代のニーズに応えるべく2010年に誕生した3代目(現行)は、新たに「Dプラットフォーム」を採用。FFと4WD(オールモード4×4)となり低床化を実現したことで、ライバルに負けない室内高を確保することができました。

 搭載されるパワーユニットは3.5リッターV型6気筒エンジンと2.5リッター直列4気筒エンジンが用意されていますが、走りを意識したスポーティさがエルグランドの長所でもあり、3.5リッターモデルは280馬力に到達しています。

 そして2020年10月には、最大のライバルであるアルファードに対抗すべく、フロントグリルをより複雑なデザインに変更し、安全装備も現在の基準に沿うべくビッグマイナーチェンジをおこないました。

 単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせ前方2台前の車両の挙動を検知する「インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)」や、後方からのクルマとの衝突回避をサポートする「インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)」の採用など、360度セーフティアシストが採用されています。

 一方で、日産が誇るシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」や先進運転支援システム「プロパイロット」の搭載が期待されていましたが、残念ながら実施されず。これらの新技術の搭載は次期型へ持ち越しされました。

※ ※ ※

 ビッグマイナーチェンジは、現行モデルを延命させる措置という側面もありますが、むしろ「0.5世代の進化」と受け取ることができそうです。

 とくにISは、輸入車に負けない色気と高い走行性能を身に付け、ビッグマイナーチェンジの成功例ともいえそうです。

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