かつてクルマのカスタム手法としてリアバンパーに電車に使われるような「つり革」を付ける光景が見受けられました。なぜクルマにつり革を装着しているのでしょうか。
■ぶらーんとぶら下がっているつり革 なんのため?
街中を走行していると、さまざまなカスタムをしたクルマに遭遇することがあります。
そんななか、リアバンパーの下部に電車内に設置されているような「つり革」をぶら下げている車両を稀に見かけます。
なぜ、クルマにつり革を装着しているのでしょうか。
実際にクルマにつり革を装着したことがあるという20代男性は、その理由について以下のように説明します。
「誰が発祥でどのように始まったかは詳しく知りませんが、昭和の時代に流行したカスタムのひとつだと聞いています。
私はクルマが好きでカスタムにも興味があり、つり革の装着も実際におこなっているクルマを見てカッコいいと思い、カスタムのひとつとしておこなってみました。
スポーツカーを所持している友人のなかには、数名、同じようなカスタムをおこなっている人がいますが、みんな同様の理由のようです」
また、別の男性(20代)も、つり革の装着について「旧車っぽくてカッコいいと思ったのでおこなっています」と話します。
SNSを見てもクルマにつり革を装着している人は見られ、とくにスポーツカーなどのクルマが好きな人に多いようです。
「カッコいいから」という理由でつり革の装着をおこなっている人が多く、つり革はカスタムパーツのひとつとして、現在でも一部のユーザーの間で親しまれていることがうかがえます。
そんなつり革を用いたカスタムですが、そもそもなぜ、いつからつり革を装着するという行為が広まったのでしょうか。
前出の男性の発言では「昭和の時代に流行したカスタムのひとつ」「旧車っぽい」という文言が見られますが、実際にこのようなカスタムは存在していました。
自動車業界の間では、1970年代から1980年代のクルマに見られた「アースベルト」の延長でつり革が装着されたのではないかという声があります。
ちなみにアースベルトとは、黒いベルトのようなパーツで、クルマのボディに帯電している電気を地面に放電させるために装着されていました。
このアースベルトが装着されていた場所と同位置につり革を装着するクルマが多いことから、いつの間にか広まったのではないかという見方もあります。
ほかにもネット上の考察では、1970年代にクルマの窓枠から上半身を乗り出して走行する、いわゆる「箱乗り」をおこなう暴走行為が発祥ではないかという説が挙げられています。
そうしたユーザーが箱乗りのしやすさから、車内につり革を装着したのが始まりで、そこから遊び心でバンパーに装着されたのではないかとされています。
また、クルマは「シャコタンがカッコいい」という価値観から、車高の低さをアピールするためにあえて地面につくようにつり革をぶら下げたという考察もあるようです。
このように、つり革カスタムの発祥については諸説あるものの、現在では見た目のためのカスタムとしておこなっているユーザーが多く、そこに機能的な意義はないといえそうです。
■車内につり革を!子ども用につり革を装着する人も?
そんなつり革ですが、最近ではファミリー層向けの車内アイテムとして販売されています。
ファミリー層向けに販売されているつり革を見てみると、一般的な電車のつり革に比べてサイズが小さいものが多く、持ち手が細かったり、可愛らしいキャラクターを模したデザインだったりします。
では、このようなつり革をファミリー層はどのように活用しているのでしょうか。
ファミリー層向けに発売されているつり革は、主に子どもがクルマの乗り降りする際に、ドア付近に取り付けておくことで、掴む持ち手としての役割を担います。
また、ヘッドレストや窓枠上部のアシストグリップに設置しているケースもあり、クルマの揺れによって、身体が揺れ動かないように握っておくことにも効果的です。
さらに、子どもだけでなく、高齢者のためにも活用されており、安心かつスムーズな乗降をサポートするアイテムとなっていることがうかがえます。