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なぜいま欧州の“はたらくクルマ”を正規導入!? フィアット「デュカト」日本上陸の狙いとは?

くるまのニュース 2022年2月19日 18時10分

FCAジャパンは2022年2月10日、フィアットの小型商用車「デュカト」の日本正規導入を発表しました。欧州では7割のシェアを持つベストセラー商用車ですが、なぜ日本への導入が決まったのでしょうか。

■欧州では7割のシェアを持つベストセラー商用車

 欧州でベストセラーとなるフィアットの小型商用車「DUCATO(デュカト)」の日本導入が正式発表されました。

 日本の商用バンといえば、トヨタ「ハイエース」が主力です。かつては運転席と荷室を自由に行き来できるウォークスルーバンが日本でも投入されていましたが、現在は新車販売はなく絶版状態です。

 まさにチャレンジといえるFCAジャパンの新型車投入の狙いを探ります。

 FCAジャパンは、2022年2月10日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催されたジャパンキャンピングカーショーで、小型商用車デュカトの正式導入を発表しました。消費税込みの車両価格は469万円から。全車右ハンドル仕様のAT車となります。

 デュカトは、誕生より40年以上の歴史を持つ定番商用車のひとつで、欧州では7割のシュアを持つといいます。さらに2020年と2021年の2年連続で、欧州小型商用車の中でベストセラーを記録しています。

 前輪駆動のバンタイプを主としていますが、後席を備えるワゴンや、コクピットのみのショートキャビンに荷台を備えたトラック仕様まで備えています。そのバリエーションは1万種類を超えるといいます。

 日本市場に導入されるのは、2.2リッター4気筒クリーンディーゼルターボエンジンと9速ATを組み合わせた前輪駆動のバン仕様のみで、そのボディサイズは、全幅2050mmと超ワイドです。

 また全長と全高、ホイールベースが異なる3タイプのボディがあり、もっともコンパクトなのが3120mmのショートホイールベースを持つ「L2H2」で、このモデルは全長5413mmと全高2524mm。他には、3705mmのロングホイールベースを備えた「L3H2」が全長5998mmと全高2524mm、また「L3H3」は全長5998mmと全高2764mmの組み合わせとなります。

 これだけの全高の高さを備えるため、荷室は「L2H2」と「L3H2」では、室内高が1932mm、より高い「L3H3」ならば2172mmとなっています。

 トリムレベルはすべて共通。LEDヘッドライト、シーケンシャルLEDウィンカー、デジタルルームミラー、レザーステアリング、フルオートエアコン、ナビゲーションシステム。キーレス&ゴーシステムなどの快適装備に加え、車線逸脱警報、前面衝突警報、歩行者検知機能付衝突被害軽減ブレーキ、ブラインドスポットアシスト、リアクロスパスディテクション、エレクトロニックパーキングブレーキなどの先進安全運転支援システムまで抑える。商用車としては、かなり充実した内容です。

 その一方で、キャビンと隔壁裏に仕切られた荷室は、内張もないコンサバな仕様となっているのも特徴です。

 充実装備の秘密は、主要マーケットをキャンピングカー市場としているからです。つまり、デュカトは架装を前提とし、販売も個人向け中心ではなく、おもにビジネスユーザーをターゲットとしています。

 そのため、後付けが難しい機能や、標準化のほうがコストダウンに繋がる機能は、しっかりと装備しているのです。たとえばフロントシートは回転機能式キャプテンシートで、ポップアップ機能まで備えています。またキャンピングカーでは、断熱性にも優れるアクリルガラスを使用するため、後部スライドドアと観音開き式の後部ドアは、ガラスレス構造としているのです。

■キャンピングカーの市場で圧倒的な人気を誇るデュカト

 FCAジャパンは5年前、2017年のジャパンキャンピングカーショーに「デュカトバン」を参考出品しており、それ以来市場の動向を探ってきました。

 これは、日本でもデュカトをベースとする海外製のものが導入されていただけでなく、日本のビルダーが手がけたキャンピングカーが存在したためです。

フィアット「デュカト」のインテリア。右ハンドル仕様

 イタリアデザインの洒落たデザインとワイドな車幅を活かした広い室内空間が支持される一方で、メンテナンスや品質などの課題を指摘する声も多く、正規輸入となれば、しっかりとしたメンテンナンス体制や最新の情報、部品の安定供給などが期待できるため、FCAジャパンの正規導入を支持する声が高まっていました。

 しかし、正式発表まで5年もの時間を要しました。その理由については、当時の仕様では導入が難しかった現実があります。

 そのおもな要因は、パワートレインです。

 従来型の2.3リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、アドブルーによる尿素SCRシステムが非搭載で、日本の排ガス基準に適応することが難しく、さらに組み合わされるシングルクラッチの6速AMTの評判も芳しくありませんでした。

 このため、国内導入されるデュカトベースのキャンピングカーは、MTが基本でした。

 現在のクリーンディーゼルターボは尿素SCRシステムを備え、快適でスムーズな走りを実現する9速ATとなっているのも強みとなります。そのエンジンを積む改良型デュカトをベースに、国内でのテストも実施して、正式導入へとこぎ着けました。

 販売体制については、既存のフィアット正規ディーラーネットワークではなく、独自の「デュカト」販売ネットワークを構築するといいます。

 取り扱いディーラーは、正規ディーラーおよびキャンピングカーなどの架装業者を想定。スティランティスグループのメリットを活かし、FCAジャパンの新車ディーラーだけでなく、PSAジャパンの新車ディーラーからも募集するといいます。

 現状のFCAジャパンおよびPSAジャパンの販売ネットワークに固執しない背景には、販売店の設備がデュカトに対応できないことなどを想定していることが考えられます。また同時に全国でのサービス協力ネットワークの構築にも力を入れていく方針だといいます。

※ ※ ※

 この正規導入に熱い視線を送るのは、デュカトの購入検討者だけでなく、既存のデュカトオーナーたちでしょう。その点をFCAジャパンに聞くと、「現状も車体ナンバーなどの情報を元に、並行輸入車向けの部品販売はおこなっていますが、取り寄せのためにかなりの時間が必要でしたが、日本仕様と共通部品ならば、国内にストックするため、スムーズに入手できるものも出てくると思います」とのこと。

 今後のメンテナンス体制について、インポーターとしては正規導入車のみを対象とする予定ですが、これまで同様に各ディーラー独自の取り組みとして、並行輸入車のメンテナンスをおこなうことに関しては、それぞれ独自のビジネスのため、口は出さないとしています。

 一部の部品の入手がスムーズになる可能性はありますが、メンテナンスについては従来同様に、各自で頼れるディーラーを見つけるしかないようです。

 2022年より、海外メーカーの参入のない小型商用車の分野の開拓を目指すFCAジャパン。もちろん、一気にビジネスの規模を拡大する野心は抱いておらず、小さくはじめてしっかりと育てていく方針のようです。

 もちろん、欧州のようにビジネスバンや移動車のニーズがあれば、順次対応し、バリエーションを増やしていきたいとしています。その皮切りとなるデュカト正規輸入車のデリバリー開始は、2022年下半期からとなる予定です。

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