2022年1月13日に発売されたトヨタのミニバン新型「ノア」と新型「ヴォクシー」。デザインばかりが先行して話題となっていますが、「使い勝手」や「快適性」はまさに“プチアルファード”感覚でした。
■“プチアルファード”感覚の新型ノア/新型ヴォクシー
ひと昔まえに比べて、ミニバンの用途は多様化しています。
子育て世代のファミリーが相変わらずのボリュームゾーンではありますが、子育てが終わってから今度は高齢の親をサポートする世帯や、キャンプでの車中泊やスキーなどを含む、アクティブな趣味のために選ぶ人たち。
そしてリモートワーク増加により、移動できるプライベート空間としての需要も高まりつつあります。
そうした状況下のなか、フルモデルチェンジとなったトヨタの新型「ノア」と新型「ヴォクシー」。
新型では、予想以上に走りの気持ちよさ、運転しやすさ、安心感が進化していますが、使い勝手の進化も見逃せないポイントです。
室内空間の広さや、収納のきめ細かさ、上質感がアップしたインテリアデザインなど、良さがたくさんあったなかでとくに感激したのは3点です。
まず「2列目、3列目シートの快適性・使い勝手が文句なしに最高」という点。
話題となった7人乗りのキャプテンシートのオットマンや後席シートヒーターはパッケージオプションで装備されるもので、それがあればまさに“プチアルファード”感覚の贅沢な快適性が味わえます。
しかし、もしオットマンやシートヒーターがなかったとしても、カップホルダー4個にUSB、エコバックフックなどがついた大型折りたたみテーブルが中央に配され、とても便利。
アームレストが左右にあり、超ロングスライドの操作も一発で前後に軽く動かせて、足元ひろびろでリラックスできます。
せっかくロングスライドをしても、乗り心地が悪いと快適性も半減してしまいますが、新型ノア/ヴォクシーはそこが大きく向上していることも、最高の2列目・3列目シートに仕上がっている理由です。
3列目シートは薄型化されており、見た目には乗り心地が心配になりましたが、実際に座って一般道を走行してみると、いい意味で予想は裏切られました。
もちろん、風切り音などややノイズはほかのシートより大きめですが、窓が大きく圧迫感は抑えられ、ドリンクホルダーもあって、長距離にも耐えうる居住性になっていると感じました。
2点目は、「シートアレンジを含めたラゲッジの使いやすさ」です。
バックゲートが全開にできない場所でも、思い通りの高さで自在に止められると話題の「フリーストップバックドア」を試してみましたが、電動パワーバックドアを装備していなくても、止めたい角度になったら手でバックドアを軽く押し下げるだけで、ピタリとその角度で保持できて感心。
途中で位置を止められる仕組みは、巻き取り式のメジャーのような構造になっているそうで、壁がある駐車場などで少しだけバックドアを開けて荷物の出し入れをしたいとに大助かりです。
途中で止めた角度から、さらに大きく開きたいときには一度全閉にしてから、再度開き直すことになるのが少し面倒かなと感じましたが、誤操作で開いてしまうのを防ぐためとのことで、安心です。
電動パワーバックドア装着車の場合には、ボディ横のリアクォーターパネルにあるスイッチで、任意の角度での開閉が可能となるので、さらに便利。スイッチが両側に備わっているのも使いやすさをアップしています。
そして、3列目まで使用していても、普段の買い物くらいなら十分な荷室の奥行きがあり、ラゲッジアンダーボックスも深さがあって大容量。
さらに、先代も同クラスミニバンのなかではダントツに跳ね上げ格納がしやすかったノア/ヴォクシーですが、新型は最後にフックで固定する操作すら省かれ、レバーを解除するだけで勝手に跳ね上がって固定されるという、革新的な使い勝手の良さを実現。
これなら、小柄な人も力の弱い人でも片手で簡単に跳ね上げ格納ができるようになったと思います。
また復帰の操作もレバーを引くだけでカチッとフロアに固定されるところまで完了。
3列目シートをわりと頻繁に使う人たちにとって、これは大きな魅力です。
■繋がる機能や先進安全もトヨタ最新が盛りだくさん!
3点目は、すでにスマホが私たちに欠かせない存在となった今、クルマをもっとスマートに乗りこなすために必要だと考えられる、安心・便利・快適なコネクテッドサービスを身近なものにしたこと。
ベースグレードの「X」以外は、ディスプレイオーディオが標準装備となり、話しかけるだけでナビの設定などができるエージェントをはじめ、専用アプリを使ったリモート操作やヘルプネットなど、多くのコネクテッド機能が登録日から5年目まで無料です。
またオプションで料金をプラスすれば、デジタルキーやオペレーターサービス、車内Wi-Fiといった、これまでは高級車にしかなかったサービスも利用可能。
しかも、購入後にこうした機能がどんどん古くなっていくのではなく、ソフトウェアアップデートにより常に最新機能を使い続けることができるようになったのも、ユーザーにとってはなによりありがたい機能です。
これは、今回多くの先進機能を採用した安全性についてもアップデートされていくとのことで、トヨタの交通事故ゼロへの気合を感じました。
また先進安全機能について、やはり注目は40km/h程度までのハンズオフ走行が可能となったアドバンストドライブですが、残念ながら今回の試乗車には装備されていませんでした。
ただ、全車速追従機能を試してみると、レーンキープのためのステアリングアシストが自然になり、常にフラフラと修正舵を当てるような動きはなくなり、しっかりと車線の中央を走行。
停止から3分までは再加速の動作をしなくても追従を再開するようになったということで、ノロノロ渋滞などでの実用性も高まっています。
このほか、乗降性に関して従来は20万円程度のオプション価格だったというサイドステップが、“からくり”を採用したことでわずか3万円程度のオプションとなり、地上高200mmという低さのステップがより手軽に装着できるようになりました。
さらに、高度駐車支援システム「アドバンストパーク」が駐車だけでなく「出庫」もできるようになったりと、まさに多様化するミニバンユーザーの「あったらいいな」を叶えていると感じます。
ミニバンは、自分のためだけに乗るクルマではなく、誰かが大切な人を想って乗るクルマなのだということを、新型ノア/ヴォクシーにてあらためて実感しました。