クルマのタイヤには一般的に空気を入れますが、タイヤ専門店や一部のカー用品店では窒素も選べるようです。どのようなメリットがあるのでしょうか。
■空気の代わりに窒素! そのメリットとは?
クルマのタイヤには、一般的に空気が入っていますが、一部のタイヤ専門店やカー用品店の空気入れは、空気ではなく「窒素」を選べるものもあります。実際に窒素を入れる人は多いのでしょうか。
タイヤの空気は自然に漏れ出てしまうため、空気圧を定期的に確認する必要があります。そして必要に応じて、車両ごとに定められている指定空気圧を目安に空気を補充します。
空気圧の確認は自分のエアゲージでできますし、空気の補充はタイヤ専門店やガソリンスタンド、カー用品店で可能です。しかし一部の店舗には、空気とともに窒素が用意されていることがあります。
タイヤ専門店の担当者によると、窒素充填を選ぶ人は「全体の2割ほど」とのこと。そしてさらに「ただ、初めて来店される人の中には、窒素が補充できること自体を知らない人も多く見られます」といいます。
窒素の充填は、どこでも必ずできるものではありません。窒素の空気入れを設置している店舗の多くは窒素を専門業者から仕入れており、このような取引のない店舗は、窒素充填に対応していません。
前出のタイヤ専門店でも、ユーザーのニーズを踏まえ、窒素を定期的に仕入れているそうです。
また、通常の空気ほど一般的ではないため、担当者が述べるように、タイヤに窒素を補充できること自体を知らない人も多く、店舗では窒素について説明を求められる機会も多いといいます。
では、窒素を入れるメリットはなんでしょうか。
前出の担当者は「窒素は、空気圧の変化が生じにくいというメリットが挙げられます」といいます。
冒頭で述べたように、タイヤの中の空気はエアーバルブをしっかりと締めていても、ゴムをすり抜けるなどして自然に減っていきます。
一方、窒素は膜状の物質をすり抜けにくいという性質があるため、酸素や二酸化炭素などが混ざっている空気と比べ、自然な漏れが起きにくいというメリットがあります。
もちろん、窒素は通常の空気中にも80%近く含まれていますが、この窒素の割合を限りなく大きくすることで、より漏れの生じにくい状態を作ることが期待できます。
さらに、窒素100%にすることで、体積が変化しやすい水分も除くことができ、空気に比べると空気圧の減りが緩やかになると予想されます。
タイヤのグリップ性能といったパフォーマンスをしっかりと発揮するためには、車両指定空気圧に沿った調整が必要となるため、空気圧が変化しにくいことは安全な走行を守ることにもつながります。
■窒素の補充がおすすめなのはどんな人? 窒素+空気は平気?
では、窒素の補充が推奨されるユーザーは、どのような人なのでしょうか。
前出の担当者は「特におすすめしているのは、タイヤをメンテナンスする機会の少ない方です」と話します。
クルマの空気圧は走行の有無にかかわらず自然に下がっていきます。クルマに乗る機会が多くても少なくてもタイヤの空気圧は変化するため、例えばガソリンスタンドやカー用品店に立ち寄った際などに、こまめな点検をすることが望ましいでしょう。
このようにタイヤの空気圧を左右する要素は、クルマの使用ではなくメンテナンスの頻度が重要となります。そのため、メンテナンスの頻度が少ない人には、空気圧が低下しにくいという特性を有する窒素が有効といえます。
そんな窒素ですが、前出の担当者によるとユーザーからは「窒素を入れた後に、通常の空気入れで空気を入れても良いのか」「空気が入っているタイヤに窒素を入れても問題はないのか」といった質問が非常に多く寄せられるそうです。
では、空気と窒素を混ぜることに、何かデメリットはあるのでしょうか。
前出の担当者は、この質問に対して「基本的に問題ありません」と話し、以下のように続けます。
「空気と窒素を混ぜても、基本的にタイヤの中の窒素の割合が増えるだけです。ゴムに影響を及ぼしたり、空気圧が著しく変化したりすることはありません」
そのため、窒素を充填した後に空気入れを用いて自身で空気圧を調整したり、その後、他店でメンテナンスをおこなったりすることには、特に問題ないといえます。
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なお、窒素充填により自然な空気漏れが起こりにくい状態にはなるものの、空気圧が100%変化しないというわけではないため、定期的な空気圧のチェックは継続することが望ましいでしょう。
ちなみに店舗によって異なりますが、前出のタイヤ専門店では、窒素の充填をタイヤ1本あたり250円でおこなっているそうです。