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「どうなのトヨタEV?」 新型「bZ4X」は違和感ナシ? EV初心者に「いいクルマ」を! プロトに見る実力は?

くるまのニュース 2022年3月1日 11時10分

トヨタのBEVシリーズ「bZ」の第一弾モデルとなる新型「bZ4X」。プロトタイプに乗って分かった実力とはどのようなものなのでしょうか。

■トヨタ、bZシリーズ第一弾「bZ4X」の実力は?

 トヨタ初のグローバルBEV「bZ4X」のプロトタイプに試乗してきました。
 
 これまでBEVの普及に向けて目に見えない部分の体制を着実に整えてきたトヨタが“攻め”の姿勢を表したわけです。
 
 では、実際にどのようなモデルだったのでしょうか。

トヨタのbZシリーズ第一弾となる新型「bZ4X」 プロトタイプでの走りはどうだった?

 エクステリアはグリルレスのフロント周りにBEVらしさを感じますが、全体的にはRAV4とハリアーのいい所取りといった印象です。

「BEVにしては普通すぎない?」といった意見もあるようですが、個人的には「先進的すぎず、でも保守的ではない」というデザインは、普及を目的とするモデルとして見ると絶妙なバランスでしょう。

 インテリアはバイザーレスのメーターやダイヤル式のシフトレバーなどに目新しさを感じますが、横長の大型ディスプレイを中心に集約された操作系は機能的です。

 センタークラスターとセンターコンソールの一体構造は初代「オーリス」を思い出しました。

 インパネ上部がフラットかつAピラーが細い設計も相まって、前方視界の良さはトヨタ車の中ではトップクラスですが、ステアリングを調整しているとメーター表示の一部が見えにくくなる領域が。欲をいえばメーターにも調整代があるといいと思います。

 ちなみにナビゲーションは新世代のクラウドタイプが採用されていますが、以前のシステムのように画面が分割できない事や、アイコンなどの表示が事務的すぎて先進性を感じにくい事など、細かい部分は気になる所もあります。

 フロントシートに座るとSUVに乗っているというよりも目線の高いセダンといったシートポジションです。リアシートはロングホイールベースを活かし、足元スペースはレクサス「LS」並みの広さです。

 ただ、床下にバッテリーを搭載しながら最低地上高210mmを実現させるためにフロアは若干高め。

 そのため着座姿勢はやや体育座りになってしまいますが、足の置き場に余裕があるので許容範囲内かなと。ラゲッジはゴルフバック4個を積載可能なスペースを備えています。

 まずはAWDモデル(モーター出力:フロント80kW/リア80kW)から試乗です。

 モーター駆動の特徴である「高応答」、「高レスポンス」は走り始めから体感できますが、内燃機関との違いを強くアピールするようなモリモリ湧き出る力強さではなく、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく印象です。

 そういう意味では、BEVというよりも良くできた内燃機関のようなフィーリングに近いかもしれません。

 こう書くと「動力性能は大したことないのか?」と勘違いされそうですが、そんな事はありません。

 イメージ的にはドライバーがアクセルを踏んだ際に「これくらいは力が欲しいよね」と思う期待値に対して、少しだけパフォーマンスが上回る“余裕”を持つという感じです。

 フットワークはTNGA世代のトヨタ車はレベルが高いですが、そのなかでも群を抜きます。

 滑らかで正確性の高いステア系から始まり、コーナー進入時はFRのようなスッキリとした回頭性、コーナリング中は4つのタイヤが路面に吸い付くように曲がる感覚、そしてコーナー脱出時は四駆らしい安定したトラクションと駆動方式の概念が変わるハンドリングです。

 ただ、勘違いしてほしくないのはスポーティなキャラクターに仕立てられているのではなく、結果としてスポーティな走りも許容しているに過ぎないということです。

 つまり、筆者(山本シンヤ)がトヨタ共通の味と認識している「誰でも気負いなく高性能を体感できる」が、より純度高く、より忠実に実現されている事を意味しています。

 乗り心地はサーキットなので断定はできませんが、バネ下はよく動くのにバネ上はフラットというボディコントロールと縁石を乗り越えた時ときの印象は235/50R20サイズのタイヤを履いているとは思えないアタリの優しさだったので、その辺りから推測するとかなり良さそうな予感がしています。

 これらは短い前後オーバーハングや重量物をバッテリー床下配置による低重心といった基本素性の良さに加えて、衝突時にバッテリーをシッカリ守るべく強靭に設計されたフロア周りによる体幹の強化(タイヤを効率よく使うには下半身の強化が大事、逆に上半身は相対的に柔らかいほうがいいそうだ)。

 さらに前後独立モーターによる駆動力制御など、様々な要因が絡みあった結果でしょう。

 ただ、駆動力制御は「機械が曲げている」ではなく、あくまでも黒子のように手助けをしているので、ドライバーはまるで「運転が上手くなったか!?」と錯覚するかもしれません。

 ブレーキは自然なフィーリングで回生も穏やか、どちらかというとハイブリッド車に近いイメージです。

 インパネセンター右側にあるワンペダルモードのスイッチを押すとアクセルOFFでの回生は強くなりますが、減速Gの立ち上がりは穏やかで徐々にGが高まっていく制御。

 例えるならば上手なドライバーのブレーキングによく似ています。

 これはワンペダルでも違和感のないブレーキを目指した結果で、恐らく同乗者もアクセルOFFの度に頭が揺すられる事も少ないはずです。

 静粛性の高さは「BEVなので当たり前」といわれそうですが、他社のBEVでは聞こえてくるインバーター音も抑えられており、定速走行時は前席と後席での会話もいつもの音量で大丈夫です。

 高速走行時は風切音も少なめなので、逆にタイヤのロードノイズが気になってしまったくらいです。

 これらから、bZ4Xの走りは「目線の高いSUV」を超えて「目線の高いプレミアムセダン」と呼んでもいいと思いました。

※ ※ ※

 今回はオンロードのみの試乗だったため、悪路走破性を高める武器である「X-MODE」、「グリップコントロール」の体感はできませんでしたが、「RAV4」を上回る最低地上高(210mm)を備えているので、どこかのタイミングで試してみたい所です。

 さらに第3世代に進化したトヨタセーフティセンスは公道試乗までお預けですが、こちらも期待大です。

■トヨタ「bZ4X」のFFはどんな印象?

 続いて、FFモデル(モーター出力150kW)に試乗します。AWDとはタイヤサイズが異なり235/60R18を装着しています。

 パワートレインはAWDとほぼ同じ印象ですが、このパフォーマンスをフロントタイヤで受け止めるのはちょっと厳しそうで、電費を考慮した低転がり性能を重視したタイヤも相まってラフのアクセルワークをするとトラクションコントロールのお世話になる事も。

 フットワークは基本素性の良さを実感できるもののAWDと比べてしまうと姿勢変化も大きく想定内といった印象で「よくできたFF」に留まっています。

ライバルが多くなっているなかで、トヨタ新型「bZ4X」はどのような形で市場に投入されるのか?

 乗り心地も18インチを履いている割には縦バネが強い印象で、むしろ20インチを履くAWDのほうが良いと思いました。

 例えるなら「進化したレクサスUX300e」といった印象で、価格や航続距離を重視する人ならば選ぶ価値はありますが、それならほかの選択肢もあるわけで、個人的にはちょっと無理してもAWDを選んだほうが満足度は高いと感じました。

※ ※ ※

 bZ4Xに乗って思ったのは、「BEVである事」よりも「いいクルマ」という記憶が強く残ったことです。

 恐らく、多くの人が想像する「BEVらしさ」は少ないですが、逆の見方をすると「内燃機関から乗り換えても違和感がないBEV」といえるでしょう。

 もちろん、航続距離や充電の問題など内燃機関と全く同じとはいえませんが、多くの人が「BEVを選ぶ」という第一歩を踏み出せそうな一台だと思っています。

 正式発売まで価格はお預けですが、トヨタの「BEV普及のためにはコストを低減し、リーズナブルな車両価格でお届けしたい」という言葉を信じたいと思っています。

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