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全長5m超えトヨタ巨大ミニバン「シエナ」ひっそり展示! イケ顔デザイン&使い勝手重視! 開発秘話を聞いてみた!

くるまのニュース 2022年3月2日 11時50分

北米やアジアなどで展開されているトヨタのフラッグシップミニバン「シエナ」。日本には2台のナンバー取得車が存在し、新型「ノア/ヴォクシー」の試乗会で展示されました。新型シエナはどのようにして開発されたのでしょうか。

■日本に2台しかない、トヨタのフラッグシップミニバン「シエナ」とは

 北米を中心に人気を博し、2020年10月に登場した新型からは中国市場にも導入されたグローバルフラッグシップミニバンのトヨタ「シエナ」。

 現在のところ、日本導入はないとはいうもののサプライズ的にトレッサ横浜やカラフルタウン岐阜という商業施設に展示されたことで、「もしかしたら?」とコアなファンたちをザワつかせているのです。

日本ではボディサイズがマッチしないが…それでもデザインや居住性では魅力的なミニバンとなる新型「シエナ」

 そこにきて、2022年2月にメディア向けに開催されたトヨタのイベント会場で、日本に2台だけあるというナンバー付き新型シエナの姿を発見。

 さっそくその内外装をチェックするとともに、開発を担当したトヨタ車体のZH1チーフエンジニア・水澗英紀氏に開発秘話をお聞きしました。

 まずは、日本では「エスティマの再来か」といわれている、現行ミニバンにはない未来的でスタイリッシュなデザインについて。

 ボディサイズは全長5184mm×全幅1993mm×全高1770mm×ホイールベース3060mmと「アルファード」よりも大きいシエナですが、室内空間をむやみに拡大するよりも、その大きさを使ってデザインにこだわりたかったのだといいます。

 その理由として水澗さんは、モデルチェンジを控えた開発中に、北米のユーザーから吸い上げた声が大きかったそうです。

「北米のユーザーは、日本のノア/ヴォクシーと同じように小さなお子さんのいるファミリーがメインです。

 なので、バリューフォーマネーも大事ですが、よくアメリカでは“サッカーママ”といわれますが、ミニバンは便利だけど、高級レストランなどに乗りつけたりするとちょっと恥ずかしい。

 子供のために仕方なく乗っているような気持ちになってしまう、という声が多かったのです」

 そこで新型シエナのデザインは、多少コストがかかってもとにかくカッコよさを優先。

 ボディサイドの上下を貫くキャラクターラインや、リアフェンダーにかけてのエッジの効いた意匠を実現するため、スライドドアにアルミを使ったほどだといいます。

 サイドにまで回り込むようなテールランプなど、とことん妥協したくなかったことがよくわかるような、凝ったデザインが目をひきます。

 今回チェックしたのは「XSE」というスポーティグレードで、フロントグリルがメッシュタイプで精悍な印象となっていますが、もうひとつのグレード「プラチナム」ではフロントグリルがプレミアム感を演出するデザインのようです。

 また、インテリアでもスタイリッシュで先進的な印象を与える「ハイブリッジコンソール」を採用。

 北米では従来のミニバンのインテリアに対して、「まっ平なインパネ」だと「バスみたい」といわれてしまうため、新型シエナではコクピット感を優先して、運転席に座ったときにちゃんと自動車らしさが感じられるように配慮したそうです。

水澗氏は「一部のユーザーからは、ウォークスルーができないとお叱りをいただいていますが、そこを守るよりはインテリアでもデザインを優先して、新しいミニバンの魅力を追求したかったという思いがあります」と語っています。

 また、カップホルダーの高さが自然と手が伸びる位置にくるなど、使い勝手も悪くないといいます。

 そうしたなかで、北米市場で購入者の評価ポイントを見ると、1番がスタイルで、2番が100%ハイブリッドによる燃費の良さとなっており、狙いはしっかり伝わっているといえそうです。

※ ※ ※

 また、2021年からは中国市場にも投入されている新型シエナ。中国のユーザー層は、北米とは違ってラグジュアリーMPVを求めている人たちだといい、中国の人たちは総じて先進的なデザインや豪華装備を好むとよくいわれます。

■北米ならではの「譲れないポイント」は? 日本導入は本当に無いの?

 また、デザイン優先とはいえ使い勝手や走りへのこだわりもあります。

 ひとつが、アメリカで盛んなDIYでよく使われる大きなボードが積めないミニバンはダメ、という神話にならって、しっかり積める荷室にしたこと。

 LDT(ライトデューティトラック)要件を満たすと燃費規制がゆるくなることから、その要件のひとつである荷室がフルフラットになることもクリア。

 デザイン重視でも、ミニバンとして求められるユーティリティは備えているのがシエナです。

 ふたつ目は、先代までは3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載していましたが、新型から全車が2.5リッターエンジンと第4世代のTHSーIIハイブリッドシステム+CVTというラインナップとなったことで、走りのフィーリングに違和感が出ないようにこだわった点です。

 北米ユーザーは、一般的にラバーバンドフィールを好まないことから、V6のようにとはいかないまでも、なるべくリニアな乗り味が出せるように開発したとのこと。

 その甲斐あって、今のところおおむね好評で、1タンクで1000km走行が可能な燃費の良さも満足いただいていると、水澗氏は話していました。

 実際に水澗氏も日本であちこち走ってみて、高速道路がとてもラクだと実感したそう。

3列目シートも余裕の広さを確保! 新型「シエナ」はまさに快適空間だ!

 そうなるとやはり、乗ってみたいと思ってしまうのが私たちですが、日本導入の可能性は本当にゼロなのでしょうか。

 これまでは北米生産だけだったので、逆輸入するにはそれなりにコストがかさむことは想像できますが、新たに中国生産がスタートした今なら、ハードルは低くなったのではないでしょうか。

 実は、中国ではアルファードがラグジュアリーMPVというカテゴリーをけん引し、ブランドイメージを築いてきたなかで、今後さらにラグジュアリーMPV市場が拡大することは間違いなく、アルファードに続くモデルとしてもっと早く欲しいといわれていたとのこと。

 しかし、全長5.1m超、全幅1.93m超のボディは「ハイランダー」より大きく、既存の工場の塗装路を通すことができなかったといいます。

 今回は、天津に第4工場の新設が決まり、それに合わせて新型シエナの導入が実現したということでした。

 ただ、北米でも中国でも右ハンドルは生産しておらず、今後の予定についてもハッキリNOとはいいませんでしたが、日本市場に導入する可能性は低そうです。

※ ※ ※

 中国では、トヨタとして初の現地生産ラグジュアリーMPVということで、まずは中国ユーザー向けにじっくりと育てていきたいというところかもしれません。

 ビュイック「GL8」やフォルクスワーゲン「ヴィロラン」といった魅力的なライバルも多い、中国のラグジュアリーMPV市場。ぜひ今後、日本にも飛び火してきて欲しいものです。

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