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スバル新型SUV「ソルテラ」はまるでスポーツカー!? 雪上で見せた驚異の走りとは

くるまのニュース 2022年3月9日 7時10分

スバルのグローバルBEVとして2022年に発売予定の新型「ソルテラ」。ひと足お先にプロトタイプの雪上で走らせてみました。一体どんなモデルに仕上がっているのでしょうか。

■新型ソルテラとトヨタの兄弟車である新型「bZ4X」の違いは?

 スバル初のグローバルBEV(バッテリーEV)である新型「ソルテラ」(プロトタイプ)にひと足先に試乗してきました。他社と比べると、これまで電動化に遅れを取っていたスバルが“攻め”の姿勢を表したわけです。

 筆者(山本シンヤ)は、新型ソルテラの兄弟車のトヨタ新型「bZ4X」に舗装路(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で試乗済みですが、今回、新型ソルテラは雪道(群馬サイクルスポーツセンター)での試乗です。

 この2台はトヨタとスバルの共同開発で生まれたモデルで、細部を除けば基本は同一スペック。つまり、両方乗ると日常/非日常の実力が体感できるというわけです。では、どのようなモデルだったのでしょうか。

 新型ソルテラのエクステリアは、内燃機関のスバル車では実現できない短い前後オーバーハングを活かしたパッケージが特徴。

 基本のスタイリングは新型bZ4Xと同じで、フロントとリアのデザインでスバルらしさを演出。2019年のジュネーブモーターショーに参考出品された「ヴィジヴ アドレナリン コンセプト」を彷彿とさせるデザインに感じました。

 トヨタにもスバルにも見えるデザインとなっており、この辺りはトヨタとスバルが対等に共同プロジェクトチームとして開発をおこなったことがよくわかる部分のひとつでしょう。

 インテリアはバイザーレスのメーターやダイヤル式のシフトレバー、12.3インチ大画面ディスプレイ+エアコンパネル一体のセンタークラスターなどはスバル車にはない佇まいですが、機能的なレイアウトや視界の良さ(Aピラーが細い設計)などからスバルらしさは感じられます。

 個人的には、どちらかというと情報過多な昨今のスバル車よりも、新型ソルテラはシンプルで良いと思います。

 細部を見ると、ステアリングには新型bZ4Xでは設定のないパドルシフトを装着。さらにドライブモードスイッチは新型bZ4Xの2モード(ECO/ノーマル)に対して3モード(ECO/ノーマル/スポーツ)と若干仕様が異なるところもあり、ここもスバルのこだわりのひとつです。

 また、オーディオは新型bZ4XがJBL、新型ソルテラがハーマン・カードンを採用していますが、どちらもハーマンインターナショナルのブランドであり、新型bZ4Xと新型ソルテラの関係とよく似ているといえるでしょう。

 フロントシートに座ると、SUVというよりも目線の高いセダンといったシートポジションです。

 2850mmのロングホイールベースを活かし、リアシートの足元スペースはスバル車史上ナンバーワンのスペースを実現。

 ただ、BEVながらも最低地上高210mmにこだわったことでフロアは若干高めに設定され、そのため着座姿勢はやや体育座りになりますが、足の置き場に余裕があるので許容範囲内でしょう。ラゲッジスペースはゴルフバッグ4個を積載可能なスペースを備えています。

■新型ソルテラはさまざまなスバル車/トヨタ車のいいとこ取り!?

 新型ソルテラの駆動方式は、モーター出力150kWのFFも設定されていますが、今回の試乗は本命のAWDモデル(モーター出力:フロント80kW/リア80kW)です。

 雪上試乗ということで、スタッドレスタイヤは235/50R20サイズのブリヂストン「ブリザック」が装着されていました。

 ちなみに試乗日の前日に大雪が降ったため除雪が追い付かないうえに、コース幅は車幅×1.5程度と路面コンディションは最悪(汗)。ドライバーにとってはストレスの高い道でしたが、それが故に新型ソルテラの実力がより理解できました。

スバル新型「ソルテラ」

 まずはパワートレインの印象です。

 2トン近いボディを軽々と加速させるパフォーマンスは備えていますが、内燃機関との違いを強くアピールするようなモリモリと湧き出る力強さではなく、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく“余裕”あるフィーリングは新型bZ4Xと同じです。

 ただし、新型ソルテラのみに設定されるドライブモード「スポーツ」を選択すると、レスポンスおよび加速度が強めのセットに変化。たとえるならば、「過給遅れのない『WRX STI』」のような力強い加速力といった印象です。

 雪道ではトラクションコントロールのお世話になってしまいますが、緻密で巧みな制御のため暴れることなくグイグイと加速。さらに、減速時にパドルシフトで回生量が調整(4段階)できるのは、ドライバーが思い通りに走らせるという観点で、スバルらしい独自装備です。

 ブレーキは回生協調式ですが、硬質なタッチや踏力コントロールのしやすさなどはほかのスバル車と変わらないフィーリング。インパネセンターの右側にある「Sペダルドライブ」スイッチを押すと1ペダルドライブが可能です。

 といってもアクセルOFFでの強烈な回生ではなく、「立ち上がりは穏やか→徐々にGが高まっていく」という制御と上手なドライバーのブレーキングとソックリ。この辺りはSDA(スバル・ドライビング・アカデミー)の知見も入っているのでしょう。

 フットワークは、どちらかといえば、SUVではなく目線の高いスポーツカーのような印象です。それもさまざまなモデルの良いところがシームレスに融合されています。

 具体的には、芯が強く正確性の高いステア系はスバル「レヴォーグ」や「WRX S4」、コーナー進入時にノーズをスッとインに向けるスッキリとした回頭性の良さはトヨタ「GR86」/スバル「BRZ」。

 コーナリング時に4つのタイヤが路面に吸い付くように曲がる感覚はトヨタ「GRMNヤリス」、そしてコーナー脱出時のトラクションの良さはWRX STIのDCCDロック最大時といった印象です。

 ちなみにEPS制御とサスペンションの味付けは新型ソルテラ独自のセットアップで、シットリ重厚な新型bZ4Xに対して、雪道ながらもキビキビ&軽快な印象の強いスポーティなキャラに感じました。

 快適性は雪道&スタッドレスなので断定はできませんが、スバル「レガシィ アウトバック」のような豊かなストローク感とレヴォーグのようなアタリの優しさ、そしてWRX S4のようなフラット感と、こちらもスバル車のいいとこ取りです。

 この辺りはスバル「フォレスター」より90mm低いという低重心、これまでの水平対向エンジンをフロントオーバーハングに搭載していたスバル車では不可能だった理想的な前後重量配分をはじめとする「基本素性の良さ」。

 衝突時にバッテリーをシッカリ守るべく強靭に設計されたフロア周りによる「体幹の強化」、さらに前後独立モーターのメリットを最大限に活用した緻密&繊細な「駆動力制御」など、さまざまな要因が絡みあった結果といえるでしょう。

 ちなみに「e-SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」の床下電池保護のために堅牢に設計されたフロア構造(現行SGP比200%アップ)は、「下半身は強く、上半身は相対的に柔らかいほうがタイヤを効率よく使える」と語るSTIハンドリングマイスターの辰己英治さんが唱える車体の理論と同じ。つまり「強靭でしなやかな車体」なのです。

 さらに雪道を走って強く感じたのは、前後独立モーターの電動AWDでありながらもほかのスバル車と同じ味を感じたことです。

 それは前後モーターが目に見えないプロペラシャフトで繋がっているかのような“安心感”です。この辺りは長年直結AWDにこだわってきたスバルの知見やノウハウが、電動AWDにもシッカリと活きている証拠でしょう。

 ちなみに対角スタックからの脱出に有効な走破性を高める「X-MODE」や、登坂・降坂アシスト機能を備えた「グリップコントロール」も試してみましたが、フォレスター同等……いや制御の緻密さから、より安心・安全な走破が可能だと感じました。

 航続距離や充電インフラの問題があるので、内燃機関とまったく同じとはいえませんが、「スキーやスノーボードに行ってみたいな」と感じたBEVは、新型ソルテラが初めてかもしれません。

※ ※ ※

 新型ソルテラを試乗してみて、「BEVであること」より「スバル車であること」のほうが強く記憶に残りました。

 何がそう感じさせたのかというと、それは「ビークルダイナミクス」です。

 スバルのクルマづくりには「安心と愉しさ」というブレない軸がありますが、その実現のひとつに「意のままに操ることができるドライビングフィール」があります。

 それは今回乗ってみた印象からもわかるように、BEVという武器を用いて純度を高めたのが新型ソルテラというわけです。

 もちろん、「水平対向エンジンも直結AWDも搭載していないスバルなんて……」という人もいると思いますが、少なくともステアリングを握る限りはスバルらしいBEVなのは間違いないと断言できます。

「平日はBEVの新型ソルテラで『生きる価値』、休日は水平対向エンジン車で『生きる喜び』を実感」というカーライフが、スバリストの新たな選択肢になることを期待しています。

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