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まだまだ高級車? もう手が届く? 普及前夜のEVいつが買い時か カギは電池とトヨタ?

くるまのニュース 2022年3月14日 17時10分

EVシフトが本格化の様相を呈しています。2022年も国産・輸入車各メーカーの新型EVが続々と登場予定ですが、EVの買い時はいつ頃なのでしょうか。

■値下げや挑戦的な価格設定のモデルも出てきた

 自動車のEVシフトが、ますます加速しています。

 価格を見るとまだまだ庶民には手が届かないモデルが多い印象ですが、一方で、値下げしたり、ライバルを意識した挑戦的な価格設定だったりするモデルも出てきています。

 今後EVモデルが増えて量産効果が生まれると、EVの新車価格はどんどん下がっていくのでしょうか。また、EVの買い時は、いつ頃なのでしょうか。

 まず、日本市場の各社のEVモデルの実情を見てみましょう。

 最も普及しているEVは、日産「リーフ」です。ベースモデルのSグレードは電池容量40kWh・航続距離322km(WLTCモード、以下同じ)で、332万6400円。また、大容量バッテリーモデル「e+」のXグレードは62kWh・458kmで441万7600円です。

 同じく日産で、2022年から本格的なデリバリーが始まる「アリア」は、ベースモデルのB6が66kWh・450kmで539万円。また、最上級のB9 e-4ORCE limited(4WD)が91kWh・580kmで790万200円と幅広い仕様を設定しています。

 日産が2021年6月に発表した予約受注データでは、受付開始後10日間で約4000台が売れ、その約半数を最上級のB9 e-4ORCE Limitedが占めています。

 また、日産と三菱が共同開発する軽自動車EVも2022年度前半に発売される予定です。価格は国の購入補助金を活用すると200万円ほどになると見られていますが、電池容量は20kWhと小さいため航続距離は180~200kmと限定的です。

 一方、海外メーカーでEVといえば、やはりテスラが筆頭です。

 2021年以降、エントリーモデルの「モデル3」は何度かの価格改定があり、2022年3月時点でウェブサイトでの値段は、FWD(後輪駆動)・航続距離565kmで494万円、またデュアルモーターAWD(全輪駆動)・689kmで579万円となっています。

 テスラ関係者によると「2021年の価格改定(値下げ)後、試乗希望が一気に増えた」といいます。

 欧州メーカーでは、ボルボ「C40 Recharge」が航続距離485kmで719万円ですが、発売記念として100台限定で用意された月額11万円のサブスクリプションモデルは、応募数が限定数の約6倍となる人気ぶりです。

 メルセデス・ベンツは、960万円の「EQC」が400km、また640万円の「EQA」が422kmという性能です。

 BMWは、1070万円の「iX」(650km)に次いで、862万円の「iX3」(508km)を導入。

 アウディは、935万円の「e-tron」「e-tron Sportback」(335km)に次いで、599万円の「Q4 e-tron」を2022年秋以降に発売予定です。

 そのほか、韓国のヒョンデは「アイオニック5」を擁して日本に再上陸しましたが、エントリーモデルが58kWh・498km・FWDで479万円、上級モデルが72.6kWh・577km・AWDで589万円と、テスラを意識したような戦略的な価格設定としています。

 また販売方法は、売買契約と決済を含む完全オンラインを採用したのが特徴です。

 このように、現時点では、輸入車と日本車との価格差が少ない、または輸入車の方がリーズナブルな場合もあるのです。

 また、現状ではまだまだEV普及初期であるため、国や地方自治体がEV購入に対する補助金制度を設定していますが、今後EVの本格普及期になれば当然、そうした補助金制度はなくなることを承知しておくことが必要です。

■トヨタの出方と、価格のカギとなる電池の進化

 こうした中でユーザーが強い関心を持っているのは、トヨタの出方でしょう。

 2021年12月14日に同社が開催した「バッテリーEV戦略に関する説明会」では、2022年央に発売予定の「bZ4X」をはじめとして、トヨタとレクサスで合計15ものコンセプトモデルを一挙公開。それらはすべて“近年中の量産化を考慮”していると明かしたのです。

 グローバルでは、2030年までに「BEV新車350万台」を目指すといいます。

 ついに、日本の乗用車市場シェアの約半分を占めるトヨタが、こうしてEVシフトを明言したのですから、これからEVの価格は量産効果で一気に庶民的になるはず、と期待が高まります。

 しかし、EV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用するbZ4Xの新車価格は、英国で4万1950ポンド(約640万円)と高級車の域を出ていません。電池容量は71.4kWhで航続距離はFWDで500km前後、4WDで460km前後としています。

 日本市場について、トヨタ広報部は「当面は、企業向けのリースと、個人向けサブスクリプションモデル(KINTO)で対応し、将来的には売り切り型も考慮する」と回答しています。

 bZ4Xの開発統括者であるトヨタZEVファクトリーの井戸大介氏は、EV普及の課題として、まず「価格を下げること」と指摘します。

 では、そのEVの価格を決める最大の要素はなんでしょうか。

トヨタ新型「bZ4X」

 それはやはり、電池であることは間違いありません。航続距離を長くしようと思うと、より大きな電池を積むことになり、それが価格に直接跳ね返ってしまいます。

 その点について井戸氏は「バッテリーパックの体積(容量)は、このままにして、電池性能を上げること(で航続距離が伸びたり、クルマ全体の性能を上げたりすることを)を目指す」といいます。

 電池技術については、トヨタ、日産、そして欧州メーカーなどが、電解質を固体とする全固体電池の開発を急いでおり、2020年代半ばには初期的な量産が始まる見込みです。

 次世代の全固体電池、または現行リチウムイオン電池の改良発展型の量産効果によって、EV本体の価格が下がるのは2020年代後半になるかもしれません。

 また、世の中にEVが増えれば、当然、充電インフラの数をもっと増やす必要が出てくるでしょう。

 現在、自動車メーカー各社のユーザーが共同で利用できるeモビリティパワーの充電施設は、全国に約2万1000か所あります。

 eモビリティパワーは、EVのさらなる普及に伴い、一度に6台が充電できる出力90kWの急速充電器の整備を進めているところです。

 ただし、自動車メーカー関係者や充電器メーカー関係者と意見交換すると、「自宅での普通充電を計画的に進めることが、今後のEV普及期でも基本的な考え方だ」という指摘を多く聞きます。

 いずれにしても、2020年代は日本、欧州、米国、韓国、そして中国市場にさまざまなEVが登場することとなり、量産効果や事業戦略の中で、価格を含めてユーザーとEVとの距離が徐々に縮まっていくことは間違いなさそうです。

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