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「●●レッド」が多すぎる! なぜクルマの「ボディカラー名」は分かりづらい? 名称が複雑化する理由とは

くるまのニュース 2022年3月14日 9時10分

自動車メーカーによってクルマのボディカラーは単に「赤」や「青」ではなく、「〇〇レッド」や「〇〇ブルー」など長く複雑な名称となっています。なぜ、メーカーでは複雑な名称を起用するのでしょうか。

■ちょっと長くて覚えにくい? 名称にはイメージを伝える役割も

 クルマのボディカラーは単に「赤」や「青」ではなく、「〇〇レッド」や「〇〇ブルー」など長く複雑な名称となっています。
 
 なかには、色の名前が名称に含まれていないこともあり、口頭で聞いただけでは色をイメージできないものまでありますが、なぜメーカーでは複雑な名称を採用するのでしょうか。

 ボディカラーの開発は、カラーデザイナーを中心として、メーカー独自におこなわれており、つけられている名称もメーカーによってさまざまです。

「赤」ひとつとっても、たとえば、トヨタでは「センシュアルレッドマイカ」、ホンダでは「プレミアムクリスタルレッド・メタリック」、日産では「ガーネットレッド」、マツダでは「ソウルレッドクリスタルメタリック」など、メーカーごとに異なる名称がつけられています。

 ボディカラーを選択するユーザーの視点を考慮すると、あまりにも複雑な名称は覚えやすいものとはいえず、とくに長い名称に関してはカタログを参照しないと一言一句間違えずに復唱するのは難しいでしょう。

 では、なぜメーカーはボディカラーの名称を単純な「赤」や「青」ではなく、複雑なものとしているのでしょうか。

 ホンダの広報担当者は、ボディカラーの名称の選定について以下のように説明します。

「ボディカラーの名称には、その色のイメージや魅力を伝える役割を持たせております。

 ただ制約も多く、『すでに商標登録されている名称は避ける』、『海外でも違和感なく受容される言葉である』などを考慮しながら役割を果たせるよう言葉選びをしています」

 また、マツダの広報担当者も同様に「マツダでは、お客さまのライフスタイルに合わせたカラー開発をおこなっております。ボディカラーの名称は、そのカラーの世界観をお客さまにより深くイメージしてもらえるように選定しています」と説明します。

 ボディカラーでは、名称はもちろん、同じ「赤」でも色味もそれぞれ大きく異なります。

 ワインレッドのような深みのある赤もあれば、ピンクに近い赤もあり、人によって好む色彩はさまざまです。

 例えば、前述したトヨタの「センシュアルレッドマイカ」は、「センシュアル(官能的)」というワードから、ポップで可愛らしい赤よりは、セクシーな深みのある赤がイメージされるでしょう。
 
 一方、日産の「ガーネットレッド」は、鉱石である「ガーネット」の、目に映える鮮明な赤を思い浮かべる人が多いかもしれません。

 メーカーでは、ユーザーがどんなシーンで、どのようにクルマを活用するのかを細やかに想定し、ニーズに即した色の開発に力をいれているそうです。

 名称が詳細になることで、無意識的にユーザーに対してより具体的な色味を連想させる効果が期待できます。

 なお、マツダの担当者はこのほかにも「ひとつのモデルに同じ系統の色が2種類ラインナップされるということもあり、カラーの差別化をおこなう効果もあります」と話しており、同系色のカラーの違いをわかりやすく表していることもうかがえます。

■ボディカラーの名称、実は昔から長かった?

 マツダの広報担当者は、ボディカラーの名称の起源について「そもそもクルマにボディカラーという概念が誕生した当時から、現在のような『〇〇レッド』という名称がつけられていました」と話します。

 クルマが現在のように、多くの人々に活用されるようになったのは、1910年代に発売されたフォード「モデルT」、通称「T型フォード」がはじまりとされています。

 かつてのクルマは貴族の乗り物として、一般市民には手の届かないものでしたが、フォードはモデルTを大量に生産し、生産コストを抑えることで幅広い人が購入できるものへと変えていきました。

 T型フォードは1930年頃までに1500万台以上が生産され、自動車市場を独占し続けましたが、大量生産が肝となっていたため、コストを抑えるためにラインナップしたボディカラーは基本的に黒1色でした。

 一方、1920年から1930年頃にかけて、「キャデラック」や「シボレー」などのブランドを展開するアメリカの「ゼネラル モーターズ(GM)」はさまざまな企業を吸収、提携し、フォードに匹敵する自動車ブランドとなりつつありました。

 ひとつのモデルを大量生産することでコストカットを図ったフォードに対して、GMはモデルのバリエーションを豊富にラインナップすることで顧客を獲得。その際、フォードがおこなわなかったカラーバリエーションの展開もおこないました。

 実際にボディカラーの塗料開発をけん引したのは、GMのスポンサー企業のひとつであった「デュポン」で、これまでの塗料になかった速乾性とバリエーションの豊かさを実現したといいます。

 ボディカラーの名称が複雑であるのは、いまに始まったことではなく、こうした歴史的背景も関係しているのかもしれません。

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 なお、マツダでは「独自のレッドカラー『ソウルレッド』に改良を重ね『ソウルレッドプレミアムメタリック』を開発、そして現在では『ソウルレッドクリスタルメタリック』をラインナップしています。

 ソウルレッドのネーミングには「魂をゆさぶる赤」という意味合いが込められており、そのコンセプトは変えずに、塗装の工法や重ね塗りの仕方などに工夫をこらして、クルマの造形が美しく見えるように改良を重ねているといいます。

 ボディカラーは、色彩の調合だけでなく、こうした塗り方にも研究が重ねられており、細やかな部分にまでメーカーのこだわりが詰まっているのです。

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