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日産新型「キャラバン」はディーゼル車がイチ押し!? ガソリン車とどう違う? ハイエースに負けないところは?

くるまのニュース 2022年3月15日 18時10分

日産の商用車「キャラバン」のディーゼル車のマイナーチェンジが発表されました。すでにガソリン車はマイチェンしていますが、新型キャラバンのディーゼル車はどのようモデルに進化したのでしょうか。

■ガソリン車に続き、キャラバンのディーゼル車がマイチェン!

 ワンボックスバンは、街中で頻繁に見かける商用車の代表です。その市場は、日産「キャラバン」とトヨタ「ハイエース」の一騎打ちですが、勝負はハイエースが圧倒的に有利で、売れ行きはハイエースが7割、キャラバンが3割となっています。

 以前のハイエース9割に対してキャラバン1割だった頃と比べると、キャラバンはシェアを増やしているものの依然として少数派です。

 そこで最近のキャラバンは、積極的にマイナーチェンジを実施しています。2021年10月にガソリンエンジン、さらに2022年2月にはクリーンディーゼルターボも新しくなり、4月下旬から販売されます。

 開発者は「ディーゼル車もガソリン車と同時にマイナーチェンジしたかったのですが、メカニズムを刷新したため遅れました」と述べています。新しいクリーンディーゼルターボは、日産が業務提携を結ぶ三菱製になるからです。

 このディーゼルは、三菱「デリカD:5」などが搭載する2.2リッターのタイプと同系列のエンジンで、キャラバンに搭載されるエンジンは排気量が2.4リッターになります。最高出力は132馬力(3250回転)、最大トルクは37.7kg-m(2000回転)です。

 今回ディーゼルエンジンを変更した主な目的は、クリーン性能の向上です。排出ガスの処理装置には、従来から装着されているディーゼルパティキュレートフィルター(粒子状物質の除去装置)に加えて、窒素酸化物を尿素との化学反応によって除去する尿素SCRも採用しました。

 これらを採用したことで、キャラバンのディーゼルは平成30年排出ガス規制に適応。動力性能も高まり、ATもガソリンエンジンと同じく、従来モデルの5速から7速に改良されて、燃費性能も12%向上。ディーゼルエンジンの刷新によりさまざまな性能が高まりました。

 キャラバンのディーゼル車を新型モデルと従来モデルで乗り比べると、違いは明らかです。発進直後に軽くアクセルペダルを踏んでいる2000回転付近でも、新型モデルは従来モデルに比べて粘り強い印象になりました。

 アクセルペダルを踏み増すと、2000回転から3500回転付近の駆動力が増加。従来モデルに比べると、アクセルペダルを緩く踏み増しただけで、実用的に十分な加速が得られます。

 また、エンジンの負荷が減ったこともあり、エンジンノイズも小さく抑えられました。振動も同様で、新型モデルの快適性は従来モデル以上に高まっています。

 ディーゼル車のWLTCモード燃費は、2WDの上級グレード「プレミアムGX」が11.3km/Lです。軽油の価格は、レギュラーガソリンに比べて1リッター当たり20円ほど安いため、燃料代は日産「セレナ」のスマートシンプルハイブリッド車と同程度に抑えられます。

 新型キャラバン ディーゼル車の開発者によると「足まわりのセッティングなどは従来モデルから変えていない」とのことですが、装着されるタイヤは変更されました。

 そのためか、操舵に対する反応が従来モデルとは異なり、ステアリングホイールを回し始めたときの鈍さが払拭され、正確性が向上しています。

 新型キャラバンの乗り心地は、商用車とあって硬めです。上下に揺すられる印象も強めですが、不快な突き上げ感は抑えられました。

■ディーゼル車 vs ガソリン車 どっちがコスパが良い?

 エンジンや走行性能のほかにも、2021年に実施されたガソリン車のマイナーチェンジと同様、ディーゼル車の内外装の造りと装備も見直されています。

 フロントマスクは日産車の特徴とされるV字型のVモーショングリルを継承しながら、存在感の強いデザインへと刷新。フロントシートはスパイナルサポートシートに変更されました。

豪華な内装が特徴の日産新型「キャラバン グランド プレミアムGX」(ディーゼル車)

 従来モデルと座り心地を比べると、改良後は体がシートに不規則に沈み込む印象を抑えています。腰をしっかりと支えるため着座姿勢も安定し、長距離を移動するときも疲れにくくなりました。

 今後の改良では、リアシートの大腿部の支え方を向上させると、峠道などを走るときの着座姿勢が一層安定しますが、乗り降りがしにくくなる場合もあります。

 キャラバンのようなワンボックスバンでは、リアシートが前輪の上に設置されて着座位置も高いため、ミニバンなどに比べて全般的に乗降性が悪く、そのために乗降性に配慮したシート形状が重要になるのでシートのセッティングが難しいところです。

 このほかガソリン車と同様、安全装備も向上。衝突被害軽減ブレーキを作動させるセンサーには、従来モデルと同様のミリ波レーダーに加えてカメラも備わり、歩行者検知も可能になりました。

 カメラセンサーが進入禁止や一時停止などの標識を検知して、メーターパネルに表示する機能も装着されますが、この標識の表示機能はライバル車のハイエースに設定されない新型キャラバンの優れた機能です。

 新型キャラバンのエンジンは2リッターガソリンと2.4リッタークリーンディーゼルターボがありますが、両者と比較すると、動力性能はディーゼルが圧倒的に優れています。

 とくに重い荷物を積む商用車で大切な最大トルクは、ガソリン車が18.1kg-m(4400回転)、ディーゼル車は37.7kg-m(2000回転)ですから、2倍以上に達します。

 ガソリンエンジンは高回転域まで回す必要が生じますが、ディーゼルには余裕があり、とくに登坂路では明確な違いが生じます。アクセルペダルを深く踏む機会は、ガソリンエンジンに比べてディーゼルエンジンのほうが圧倒的に少ないです。

 走行安定性や操舵感は、ガソリンエンジンが自然な印象です。プレミアムGXの車両重量は、ガソリン車は1820kgですが、ディーゼル車は2000kgです。

 ディーゼルは車両の前側を中心に車両重量が180kg増えるため、峠道などではガソリンエンジン車に比べて曲がりにくく感じます。

 WLTCモード燃費は、ガソリン車が8.3km/L、ディーゼル車が11.3km/Lです。レギュラーガソリンの価格が1リッター当たり160円、軽油が同140円で計算すると、新型キャラバンの1km当たりの燃料代は、ガソリン車が19.3円、ディーゼル車は12.4円になって後者は6.9円安いです。

 価格(消費税込)はプレミアムGXを2WD同士で比べると、ガソリン車が302万3900円、ディーゼル車は371万1400円です。

 ディーゼル車のほうが68万7500円高いですが、購入時に納める環境性能割と自動車重量税は非課税になるため、税額はガソリン車よりも合計12万5000円安くなり、実質差額は、この金額を68万7500円の価格差から差し引いた56万2500円に縮まります。

 この実質差額を燃料代の節約で取り戻せるのは、約8万2000kmを走った頃です。ビジネスに使うユーザーは、1年間に2万km以上を走ることも多いので、約8万2000kmで差額を取り戻せるならディーゼル車が割安です。

 ディーゼルの尿素SCRのタンク容量は11.4リッターで、1000kmで1リッターを使うため、約1万1000kmで充填します。そこを含めてもディーゼルは十分に安いです。

 ディーゼル車は前述の通り、燃費だけでなく動力性能にも余裕があり、運転感覚も快適に仕上げたことから、新型キャラバンにとって選ぶメリットの多いパワーユニットになっているといえるでしょう。

※ ※ ※

 今後、キャラバンへの設定が希望されるのは、衝突被害軽減ブレーキを応用した運転支援機能です。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなど、「プロパイロット」のような機能が採用されるとさらに魅力が高まります。

 ワンボックスバンでは、長距離を移動するニーズも高いので、開発者も「運転支援機能には、なるべく早く対応したい」と述べていました。これからのキャラバンの進化にも注目したいです。

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