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なぜダイハツは軽依存からシフト? 小型車販売が5年で34倍に急成長! トヨタOEM車には無い個性を出す訳

くるまのニュース 2022年3月24日 10時10分

軽自動車をメインに販売するダイハツですが、最近は小型車にも力を入れており、売り上げを伸ばしています。なぜダイハツは、軽自動車中心の販売から脱却する必要があったのでしょうか。

■軽がメインだったダイハツが小型車に力を入れるわけ

 ダイハツは軽自動車メーカーのように思われていますが、以前に比べると小型車にも力を入れています。

 コンパクトSUVの「ロッキー」は2021年に1か月平均で約1800台が登録されていますが、この売れ行きはトヨタ「クラウン」などと同程度です。

 また背の高いコンパクトカーの「トール」は2021年の1か月平均が1200台でした。

 過去を振り返ると、2015年に国内で販売されたダイハツの小型/普通車は、全車を合計しても1年間にわずか1654台でした。1か月平均なら138台ですから、ダイハツの小型/普通車は、実質的にほとんど売られていない状況だったのです。

 それが2016年には6930台、2017年には2万8113台と急増して、2018年は3万5305台、2019年には4万3695台に達しました。

 2020年は各社ともコロナ禍の影響を受けて、小型/普通車の登録台数を減らしましたが、ダイハツだけは5万6169台に増えています(軽自動車は13%のマイナス)。

 2015年と2020年を比べると、わずか5年間でダイハツの小型/普通車の登録台数は34倍に増加したのです。

 2021年のダイハツの小型/普通車登録台数は、4万37台に減少しましたが、それでも2015年の1654台に比べれば24倍以上です。以前よりは圧倒的に増えています。

 なぜこれほどまでにダイハツ車の登録台数が増加したのでしょうか。

 その直接の理由は、2016年にトール、2019年にロッキーが発売され、好調に販売されたからです。

 そしてこれらのダイハツの小型車はトヨタにOEM車として供給され、ロッキーはトヨタ「ライズ」、トールはトヨタ「ルーミー」として販売されています。

 登録台数は、ダイハツブランド車よりもトヨタの扱うOEM車が圧倒的に多いですが、それでも以前に比べるとダイハツブランドも大幅に増えました。

 それまでのダイハツ車は、「ブーン」が1か月に100台前後登録され、それ以外は「メビウス」(トヨタ「プリウスα」のOEM車)と「アルティス」(トヨタ「カムリ」のOEM車)が少数売られる程度でした。

 トールの発売をきっかけに、ダイハツの小型車販売は大きく上向いたのです。

 2016年にトールが発売されたときは販売店の様子も変化しました。かつてダイハツの販売店に置かれていた試乗車は大半が軽自動車でしたが、トールについては小型車なのに積極的に配車。ダイハツのTV・CMも、トール以降は小型車が増えています。

 このときの販売の変化について、ダイハツの販売店スタッフは次のようにいいます。

「従来は小型車の販売に力を入れませんでしたが、トール以降は方針が変わり、積極的に売っています。この背景には、今後の軽自動車市場の見通しがあります。

 2015年には、軽自動車税が(従来の年額7200円から1万800円に)値上げされ、次第に軽自動車の売れ行きが下がる可能性もあります。そこで小型車に力を入れたというわけです」

■ライバルはトヨタへのOEM車!? ダイハツはどう戦う?

 2016年1月になると、トヨタがダイハツを100%出資の完全子会社に変更することも発表されました。

 ダイハツが小型車に力を入れる理由として、トヨタの意向が働いていることもあるかも知れません。

 単純に考えれば、トヨタは小型車、ダイハツは軽自動車とカテゴリーを分けた方が合理的ですが、今後の軽自動車市場が縮小することを前提にすると話は変わります。

兄弟車となるダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」

 とくにメーカーではなく、ダイハツの販売会社の将来を考えると、軽自動車への依存度を抑えて小型車の販売増加に備えたいところでしょう。

 また当時から、軽自動車市場の競争激化も心配されていました。

 2011年にはホンダから初代「N-BOX」が発売されて売れ行きを伸ばし、日産も2013年に先代「デイズ」、2014年には先代「ルークス」(当時は「デイズルークス」)を扱うようになりました。

 従来は小型/普通車が中心だったメーカーまで軽自動車の届け出台数を増やすと、競争の激化によって薄利多売がさらに進んでしまいます。

 そこで軽自動車が中心だったダイハツとスズキは、ホンダや日産とは逆に、小型/普通車に力を入れるようになったのです。

 とくにスズキは早期に行動を起こしました。国内で登録される小型/普通車を10万台まで増やす目標を掲げ、先代「ソリオ」のヒットもあり、2016年には10万台少々を登録して目標を達成しました。

 一方、ダイハツの小型/普通車登録台数は、同じ2016年には前述の6930台(つまりスズキの約7%)でした。スズキの売り方に刺激され、ダイハツが2017年に小型車の登録台数を2万8113台まで増やした経緯もあるでしょう。

 このように最近のダイハツは小型車に力を入れますが、いまのところすべての車種がトヨタにも供給されています。従ってダイハツの小型車は、すべてトヨタのOEM車と競争するのです。

 そうなるとダイハツの小型車が売れ行きを伸ばすうえで、トヨタのOEM車が障壁になりますが、ダイハツ車としての個性を持たせる傾向も見られます。

 たとえばロッキーの「プレミアムG/プレミアムGハイブリッド」には、OEM車のライズが採用していないソフトレザー調のシート表皮が使われています。

 かつてのダイハツ「シャレード」のように、トヨタには供給しない別の小型車を開発するには至っていませんが、グレードには独自のタイプを用意しています。

 このように、一時は急減したダイハツの小型車販売が、再び増加傾向にあります。これはユーザーの購買動向に沿った変化でもあります。

 一般的に小型車から軽自動車へ乗り替えるダウンサイジングが話題になりますが、実際には、軽自動車ユーザーの約20%は小型車にアップサイジングしているからです。

 そしていまの上質な軽自動車から、さらに小型車へアップサイジングする場合、ユーザーはさらに高い品質を求めます。

 先に挙げたソフトレザー調シート表皮を使うロッキー プレミアムGは、このダイハツの顧客ニーズにも合っており、プレミアム感覚の小型車を必要としているのはトヨタよりもむしろダイハツなのです。

 これからのダイハツでは、軽自動車とあわせて、コンパクトカーにも期待が持てそうです。

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