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「戦いがはじまった…」 トヨタとスバルのガチンコ勝負! カーボンニュートラル燃料で挑むスーパー耐久・開幕戦の行方はいかに

くるまのニュース 2022年4月1日 18時40分

「ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook」の開幕戦となる鈴鹿大会が2022年3月19日-20日におこなわれました。2022年シリーズから「GR86」と「SUBARU BRZ」が投入されカーボンニュートラル燃料を用いて参戦します。

■ついに始まったカーボンニュートラルの実現に向けた新たな戦い! GR86とSUBARU BRZの開幕戦はどうだった?

 2022年3月19日-20日に、「ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook」の開幕戦となる鈴鹿大会がおこなわれました。
 
 2022年シリーズから「GR86」と「SUBARU BRZ」が投入され、カーボンニュートラル燃料を用いて参戦します。
 
 開幕戦を終えて、両チームの監督はどのような想いを抱いたのでしょうか。

 鈴鹿サーキットでおこなわれた開幕戦、3月20日におこなわれた決勝(5時間耐久)では、GR86で戦う「ORC ROOKIE Racing」の「#28 ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」(以下GR86 CNFコンセプト)は115周を走り、トータルタイムは5時間1分55秒449、ベストタイムは大嶋和也選手の2分23秒308となりました。

 対してSUBARU BRZで戦う「Team SDA Engineering」の「#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」(以下BRZ CNFコンセプト)は115周を走り、トータルタイムは5時間2分58秒484、ベストタイムは井口卓人選手の2分24秒157となっています。

 今回は、レースレポートではなく、リザルトだけではわからない裏側についてお伝えしていきたいと思い、両チームの監督と開発責任者に話を聞きました。

 まずは、19日におこなわれた予選です。ちなみに予選タイム(A/Bドライバーのタイム合算)はBRZ CNFコンセプトは4分44秒411、GR86 CNFコンセプトは4分51秒463と、スバルに軍配が上がりました。

 ただし、GR86 CNFコンセプトはBドライバーである豊田大輔選手のアタック中にエンジントラブルが発生。豊田選手は「燃圧が出ず、パワーがない」とコメント。

 メカニックによるトラブルシュートで部品を交換、その後の走行で異常がないことが確認されましたが、これまでのテストでは起きていなかったトラブルでした。

 予選後にGR86 CNFコンセプトの開発責任者・藤原裕也氏に話を聞いてみました。

「Aドライバーの蒲生選手はいいタイムを出してくれましたが、Bドライバーの豊田選手は申し訳なかったな……と。エンジン不調のまま、予選を走ることになってしまいました。

 テストでアキレス腱となっていたトランスミッションは、若干フィーリングに渋さがありますが問題は出ていません。『決勝もこのまま使う』という案もありましたが、ここで壊れてしまうと検証できないので交換します」

「抜きつ抜かれつ」の攻防を見せたGR86/SUBARU BRZの開幕戦

 一方、BRZ CNFコンセプトの開発責任者・竹内源樹氏に話を聞きに行くと、現場にはおらず……。

 竹内氏はS耐と同じスケジュールで開催される全日本ラリーにドライバーとして参戦するため、今回は欠席(結果はクラス優勝)。そこで本井雅人監督にお話を聞きました。

「シャシのセットアップがやはり難しいですね。市販車とはタイヤも車高も違うので、まだまだ理想の姿には届いていません。

 エンジンはベンチで回して耐久・信頼・オイル消費などを見越していますので、恐らく問題ないと思います。

 今回は竹内が欠席ですが、その分若いメンバーが頑張っているようで、いつもより動きがいいですね。

 GR86はトラブルが出ているようですが、『戦わずして勝つ』のは面白くないので、頑張って欲しいです。

 恐らく、決勝は速いと思いますので、我々は『燃費』で勝ちたいな……と」

※ ※ ※

 決勝日のレーススタート前には、19日にSUBARUの中村社長からレーシングスーツをもらったお礼のためにROOKIE Racingのモリゾウ選手がスバルのピットを訪問。ここでインタビューに答えてくれました。

「中村社長からいただきましたが、これは『チャンスがあれば乗ってもいいよ』と解釈しています(笑)。

 カーボンニュートラルの実現に向けての『意志ある情熱と行動』にスバルも入っていただき、未来のための援軍がやってきた感じです。

 両社が心ひとつにもっといいクルマができれば、より多くの笑顔が頂けると思っています。

 しかし、レースですのでガチンコ勝負です。ちなみに中村社長は昨日の会見で『ガチンコ』と3回いいました。シッカリと受けましたので!!」

 このモリゾウ選手の先々布告に対して、SUBARUの中村社長は次のように語っています。

「レーシングスーツは仕立てました。いつ何時かはわかりませんが、どうぞ。

 でも、うちにはチャンピオンドライバーが2人いますからね」

 このように、両者の“負け嫌い”が出ています(笑)。

■新たな一歩の幕開け! カーボンニュートラル燃料で戦うGR86とSUBARU BRZ。いざ5時間耐久へ

 決勝はどちらのマシンもノントラブルで走行。ちなみに途中経過はレース途中には何度かGR86/BRZのガチンコバトルも見られ、オフィシャル映像でも注目されていました。

 結果は、前述のようにGR86 CNFコンセプトのトータルタイムは5時間1分55秒449、ベストタイムは大嶋和也選手の2分23秒308。

 BRZ CNFコンセプトのトータルタイムは5時間2分58秒484、ベストタイムは井口卓人選手の2分24秒157となっています。

 ちなみにこの2台は、開始1時間から2時間後はGR86 CNFコンセプト、3時間後はBRZ CNFコンセプト、4時間後はGR86 CNFコンセプトと、まさに「抜きつ抜かれつ」の攻防を繰り広げましたが、最終的にはGR86 CNFコンセプトが1分近い差をつけてゴールしています。

 第1戦の結果としては、GR86 CNFコンセプトに軍配が上がりましたが、見ている側としては「いい勝負をしていたな」と感じました。

GR86 CNFコンセプトは予選(19日)にエンジントラブルが発生したが、決勝(20日)は無事に5時間を走りきった(画像はROOKIE Racing・片岡龍也監督)

 決勝後、両チームの監督に今回のレースの総評を聞いてみましたが、やはり「隣の芝は青い」ようです。まずはROOKIE Racing・片岡龍也監督からです。

「GR86はここまで満足にテストができていなかったので、正直いうと覚悟(=リタイヤ)もしていました。

 ただ、今回は決勝だけでいえば“順調”で何もなく終わったのは大きな収穫でした。

 実は事前のテストではGR86優勢と思っていたものの、蓋を開けたら接近戦で『これまでBRZは三味線弾いていたの?』と思っていたくらいです。

 次戦は24時間ですが、正直スタミナが見えていません。そういう意味ではまさに『クルマを鍛える』レースになりそうなので、覚悟して臨みたいと思います」

 さらに藤原氏が付け加えます。

「結果は我々が上でしたが、クルマとしての完成度・信頼性はBRZのほうが上だと思いました。

 そういう意味でも『レースは甘くない』を痛感しました。正直、今回は課題だらけでしたが、24時間に向けて『強いクルマ』にしていきます」

BRZ CNFコンセプトは予選・決勝と順調に走りきったが…課題は多いという(画像はSDA Engineeringの本井雅人監督)

 一方、SDA Engineeringの本井監督はこのように総評を語ってくれました。

「初めての鈴鹿でセットアップの心配がありましたが、目標通りノントラブルきちんと走り切ることが出来ました。

 今日時点ではベストでしたが『完敗』ですね。

 離れっぱなしじゃなくてよかったが、逆に悔しさもあります。

 ただ、若いメンバーがレースウィークを通じて、技術的にはもちろんですがモチベーションや気持ちの進化したのを見て取れたのは良かったです。

 GR86はちょっと遠すぎですが、我々も頑張るしかないです。

 課題もわかっている、次に向けてやることもわかっていますので粛々と。富士は24時間、それまでに強くなって帰ってきたいと思います」

※ ※ ※

 このように両者共に「得た物」と「課題」が見えた開幕戦となりましたが、共通しているのは「どちらもこの状況に満足していない」ということです。

 次戦は6月3日-5日に富士スピードウェイでおこなわれる24時間の戦いです。

 マシンも人もより高いレベルが求められるチャレンジングな戦いとなりますが、2台の進化、チームの成長にも期待大です。

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