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トヨタ最強マシン「高機動車」って知ってる? 自衛隊版「メガクルーザー」は何がスゴいのか

くるまのニュース 2022年3月29日 14時10分

自衛隊にはさまざまな車両が採用されています。そのなかでも比較的に見かける機会があるのが「高機動車」です。実はトヨタ「メガクルーザー」をベースにしていますが、どのような特徴があるのでしょうか。

■トヨタ製自衛隊車両「高機動車」って知ってる?

 今や世界でも、押しも押されぬ大メーカーであるトヨタですが、長年思うように進出できなかった“市場”があります。
 
 それは、陸上自衛隊です。自衛隊にトラック以外の車両を納入することは、トヨタにとって悲願でした。

 トヨタは1951年におこなわれた警察予備隊用の車両入札に際して、トヨタ「ジープBJ型」で三菱「ジープ」に敗れ、さらに1971年のトライアルでも「ランドクルーザー40系」で再び三菱「ジープ」に敗れています。

 しかし、1993年からいわゆる「高機動車」が陸上自衛隊に採用されたことで、ようやく溜飲が下がったといえます。

 高機動車は、「メガクルーザー」の自衛隊車両版で、シャシこそ共用ですが、ボディや装備面で大きく異なっています。

 自衛隊ではHMVと呼ばれ「疾風」なる愛称まで付いていますが、知る人は多くありません。

 高機動車はアメリカ軍の「ハンヴィ(民生版はハマー)」を模して造られたことから、“ジャンビー”などと揶揄されることもあります。

 シャシは、日野が生産する「73式小型トラック」と共有することで、コストダウン、部品共用化を図っています。

 エンジンは「ダイナ」に積まれていた4リッター直列4気筒ディーゼルにターボとインタークーラーを追加することで、高速での移動を可能にしました。

 さらに4輪にダブルウィッシュボーン式インディペンデンスサスペンションを採用し、優れた路面追従性と堅牢性を両立。

 さらに車体の下の突起をできるだけ少なくするため、ハブリダクションシステムを採用。

 ディファレンシャルなどの“臓物”をフレーム側に収めることで、優れた走破性を実現しています。

 高機動車の内部を見ると、ハンヴィほど駆動系が車内に内包されていないため、意外と車内フロアは平らですっきりしており、メガクルーザーのほうが運転席回りの圧迫感があります。

 加えてランフラットタイヤやタイヤ空気圧調整機構、4WSなども採用し、有事だけでなく自然災害時への対応も考慮した作りとなっています。CDプレーヤー付きラジオやエアコンを装備しているのも、1/2tトラック同様、イマドキの自衛隊車両と言えるかもしれません。

 高機動車は主に人員輸送用に使われていますが、さまざまなバリエーションが存在。

 分隊支援火器の搭載はもちろんのこと、高度な通信機器を積んだ車両や地対空誘導弾、レーダー、電源装置、BC兵器監視装置などを搭載したバージョンが活躍しています。

 なかには、ヘリコプターや輸送機で運ぶエアボーンに使われる高機動車もあり、陸上自衛隊のあらゆる作戦を支えているのです。

■高機動車の価格はどのくらい? 一般人が入手は出来るのか?

 ちなみに高機動車の価格は約600万円から700万円といわれています。

 自衛隊車両として多くの台数の納入がありますが、新車がバンバン売れるわけではありません。

 しかも保守や部品ストック、仕様変更に多くのコストがかかるといわれており、ビジネスとして必ずしも旨味があるものではないようです。

 自衛隊のPKO活動で一役有名になった「軽装甲機動車」などは、開発コストに対して利益が見込めないことから、製造元の小松製作所が開発中止を防衛省に申し出ています。

ずらっと整列して配置される第32普通科連隊の高機動車 (出典元:陸上自衛隊HPより引用)

 一方で民生版のメガクルーザーは、主に災害対策車として官公庁や警察などに納入されました。

 当時の車両本体価格は1000万円弱で、一般で購入した人もわずかにおり、最終的には130台ほどが登録されて終了しました。

 筆者(山崎友貴)もメガクルーザーを借りたことがありますが、コインパーキングでは2台分のスペースが必要になるなど、何かと一般ユースには向かないクルマでした。

 高機動車とメガクルーザーには違いも多く、ヘッドライトやボディの形状、ボンネットの素材のみならず、室内レイアウトも異なっています。

 後部座席は前向きの3名乗車仕様で、さらに運転席と助手席の間に、ハンヴィのような大きなセンターコンソールがあります。

 駆動系が入ったフロアトンネルの上に、無線やアンプなどといった機器をインストールするボックスを設置。

 いい意味でコクピット感がありますが、助手席との隔たりがあり、大きな圧迫感があります。

 メガクルーザーはもちろんのこと、軍用車である高機動車を一般で入手することはほぼ不可能です。

 これは武器払い下げを禁止するコンプライアンスのためですが、屑鉄として海外に販売された高機動車が、東南アジアで再生され、日本に逆輸入されたという稀な例もあるようです。

 しかし、フレームに車体番号が打刻されていないため、日本ではナンバーを取得することができないといいます。

 白ナンバーを付けて高機動車に乗るというのは、到底叶わない夢のようです。

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