Infoseek 楽天

1000万円超えの国産「最高級SUV」は何が進化? ランクルとは違う個性強調! レクサス新型「LX」の特徴はいかに

くるまのニュース 2022年4月1日 7時10分

レクサスの最上級SUV「LX」はあらゆる面が進化したといいますが、実際に乗り込んで走り出すとその真価はわかるのでしょうか。

■新型LXに乗ってわかった実力とは

 2022年1月に国内発表された新型「LX」。歴代モデルから大きく変わったのはレクサスでの“立ち位置”です。

「ランクルの基本コンポーネントを使って開発」は歴代モデルと共通ですが、「流用」ではなく「活用」と考え方が異なります。

 つまり、ランクルの武器を使って「レクサスの名に恥じない「フラッグシップSUV」を開発したというわけです。

 今回、素の「LX600」、悪路走破性を高めた「OFFROAD」、そして最上級の「EXECUTIVE」の3グレードに、一般道、高速道路、ワインディング、そして富士スピードウェイ内に新たに造られたオフロードコースと、リアルワールドで試乗してきました。

 いつものように試乗前に車両のチェックです。エクステリアはランクルの面影が残りますが、ドア以外の外板はすべてLX専用です。

 先代よりもスタイリッシュなフォルムに進化していますが、伝統のホイールベース(2850mm)に対してEXECUTIVEの22インチタイヤ&ホイールの組み合わせは寸詰まりな印象。

 個人的には素のLX600に標準の20インチがプロポーションとのバランスは良さそうに感じました。
 ちなみにオフロードは18インチタイヤとヒカリ物を抑えた意匠ですが、アルミホイールのデザインが事務的なのが勿体ないです(実はランクルの色違い)。

 インテリアは上部がインフォテイメント、下部が空調/AWD制御と機能を分けたツインディスプレイ仕様となるインパネセンターが特長です。

 企画時にはNXのような大型ディスプレイも検討されたようですが、「灼熱/極寒地域でも確実に空調を効かせるために大型の吹き出し口が必要」、「悪路走行時にカメラとAWD制御を同時に表示させたい」など、LXならではさまざまな要件から、このようなレイアウトになったそうです。

 これらに関しては概ね納得ですが、分割表示(ナビ+オーディオなど)ができないインフィテイメントディスプレイ、旧式のステアリングスイッチ/各種機能設定、大型センターコンソールにも関わらず縦置きのカップホルダー、サイズの大きなスマホに対応していない非接触充電器など、細部のツメの甘さは少々、いやかなり気になる所です。

 フロントシートはTNGA世代のUX/NXと変わらない自然なシートポジションに先代からの進化を実感しますが、セカンドシートは足元スペースの拡大は嬉しいものの肝心なクッション/バックレストが平板な印象で快適性は“普通”といった印象でした。

 6割以上のユーザーがこのモデルを選ぶことを考えると、もう少し頑張って欲しいと思います。

 そういう意味では、後席を活用する人にはEXECUTIVEがお勧めです。リクライニング機能付のキャプテンシート(オットマン/マッサージ付き)は、最大48度のリクライニングと座面角度のコントローでNASAが推奨する“中立姿勢”を実現。

 実際に座ってみましたが、振動吸収性の良さと優しく乗員を包み込む形状の専用シートの掛け心地の良さは、LSを遥かに超えるレベルでした。予算が許せば是非とも選んで欲しいです。

 続いて、走りはどうだったでしょうか。

 パワートレインは3.5リッターV型6気筒-ツインターボ(415ps/650Nm)+10速ATとハードその物はランクルと共通ですが、実際に走らせるとフィーリングは別物です。

 具体的には自然な過給の立ち上がりと雑味のない滑らかなで伸びのある吹け上がり、さらにクルマが軽くなったと錯覚するくらいの応答性の高さです。

 欲をいえば発進時にもう少し力強さが感じられるとバッチリなのですが、現状は滑らかなフィーリングを優先しているのか瞬発力は少々足りない印象です。

 個人的にはドライブモード・ノーマルはそのままでいいですが、スポーツ/スポーツ+はより攻めたセットアップでもいいと思いました。

 気になる燃費は往復で約200kmを走りましたが、オーバーオールで8-9km//L、高速道路のみだと12-13km/L(100-120km//L)と2.5トン近い巨体であることを踏まえるとかなり優秀な値です。

 ちなみに先代はオーバーオールで5-6km/L、高速道路は超エコラン(80km/h前後)で9-10km/Lだったので、まさに雲泥の差といえるでしょう。

■走りはどのように進化したのか?

 フットワークはパワートレイン以上の驚きで、ランクルよりもほかのレクサスモデルと同じ味を感じました。

 その要因のひとつがステアフィールです。軽い操作力、初期応答の良さ、滑らかなのに芯がある操舵フィール、直結感の高さはほかのクロスオーバーSUVよりLS/LCに近いと感じました。

 ハンドリングは一体感のあるクルマの動きにフレーム車であることを忘れてしまうくらいです。

 具体的には、コーナリング時にフレーム車特有のグラッと来る動きも少なく、自然なノーズの入りと微小な操作にも忠実に応えるコントロール性、そして4つのタイヤを上手に使って安定した姿勢で曲る様は、下手なモノコックSUVを超えるレベルといってもいいかもしれません。

 ワインディングではタイトコーナーは2.5トン近い重さなので注意が必要ですが、Rが緩めのコーナーならば前後重量バランスがバッチリ整ったクルマのように4輪を上手に使った綺麗な姿勢で旋回するのです。

 つまり、ワインディング“も”走れるではなく、ワインディング“が”走れるフレーム車SUVなのです。

 そのときのクルマの動きは、目線が高い穏やかで姿勢変化が大きめのFRセダンといったイメージで、綺麗に曲がるために荷重移動を意識したコーナリングをしていると、素直な挙動に何ともいえない“心地よさ良さ”を感じたくらいです。

 この辺りはフレームとボディの結合の高さによる剛性の連続性や、フレーム剛性アップ(最新の溶接技術)やボディ剛性アップ(スポット増しや構造用接着剤)などにより力の伝達が上手にできるようになったこと、より緻密な制御が可能なリニアソレノイドバルブ式AVSの採用。

 さらには車高調整機能のAHC(アクティブハイトコントロール)のバネレート切り替え装置(ガスバネ)による姿勢・挙動変化コントロールを前後輪に採用(従来は前輪のみ)など、ハード/ソフト両面で進化を遂げた結果だといいます。ちなみにサスペンションのセットアップは全グレード共通です。

 これらはコーナリングだけでなく直進安定性にも効いており、高速道路では “矢のように”とまでは行かないものの、ステアリングに軽く手を添えるだけでビシーッと走ります。この辺りは重いステアリングを修正しながら走っていた先代とは大違いでしょう。

 LXの運転支援システムは第2.5世代の「Lexus Safety System+」ですが、その機能のひとつ「LTA(レーン・トレーシング・アシスト)はランクルのそれよりも緻密な制御なので、高速道路ではより積極的に活用したくなります。

 ただ、欲をいえばNXと同じ最新版(第3世代)であって欲しかったです。採用できない理由(開発時期やランクルとの共用)は解るのですが、最上級SUVだからこそ、いい訳してはダメでしょう。

新型LX、日常領域での乗り心地はいかに?

 乗り心地は段差を乗り越える際のアタリの優しさやショックの吸収性の良さなどはLSを超えるレベルですが、22インチを履くEXECUTIVEは凹凸が連続するシーンではフレーム車特有の共振とバネ下のバタつきによる挙動の収まりの悪さが顔を出すことも。

 筆者は18インチを履くOFFROADのドライブモード・スポーツ+がハンドリング/乗り心地のバランスが一番優れていると感じました。

 AVSの変化代は、ハード方向(=スポーツ+)はクルマの無駄な動きを上手に抑える効果があり有効的に感じましたが、ソフト方向(=コンフォート)はノーマルとの違いがあまり感じられず。

 個人的にはコンフォートはかつてのフレーム車のような大らかな乗り心地の設定、エコはAHSと連動させて車高を落として全面投影面積を下げる設定といったように、各モードの個性を出したほうがユーザーメリットは大きいと思いました。「ちょっと違う!?」程度の差であれば、ノーマルだけで十分でしょう。

■誰でもオフロードを走れる凄さとは

 オフロードはモーグルや急こう配、岩山、車幅+αの細い道など、さまざまな難所が用意されたコースですが、試乗日は何と季節外れの雪で路面はヌタヌタ、オフロード走行には打ってつけのコンディションです。

 ここではOFFROADとEXECUTIVEに試乗しましたが、どちらも路面状況に応じてブレーキ油圧、駆動力、サスペンションを統合制御するマルチテレインセレクトはAUTOで走行。

 実は走行後の正直な感想は「このコース、いう程厳しくないよね?」でした。
 ただ、降りて自分の足で進んでみると、歩くのがやっとという場所ばかり。つまり「クルマが凄かったのね」ということになります。

 つまり、基本素性の刷新による接地性の高さやショック/揺れの少なさ、制御デバイスの緻密な作動や応答性の速さ、キックバックの少ないステアリング、アイドリング+αから湧き出る駆動力、マルチテレインモニターの見え方の工夫などなど、さまざまな支援デバイスの相乗効果により、オフロードを「誰でも」、」「楽に」、「安心して」走れるのです。

 そういう意味でいうと、新型LXの最大の欠点は、「過酷な道が、過酷に感じない」という事かもしれません(笑)。

悪路走破性能もスゴいんです! 本気の「LX」はどんだけすごい?

 新型LXはオンロード性能/オフロード性能を高次元で両立させているだけでなく、どちらのシーンで走ってもレクサスらしさを実感できる魅力が備えた一台だと感じました。

 つまり「世界のどんな道でも楽に、上質に」というコンセプトにウソ偽りなしです。

 先代はレクサスの名を冠しているも良くも悪くも別格の存在でしたが、新型は正真正銘レクサスファミリーの一員になったのかなと。

 恐らく「歴代LXを知っている人」、「初めてレクサスのフラッグシップSUVを選ぶ人」、どちらも満足させることができるポテンシャルを備えています。

 個人的には「EXECUTIVE」の内装に惹かれるものの、オン/オフのバランスの取れた走りとこれまでのレクサスにない渋いエクステリアの「OFFROAD」が面白い選択かなと。

 その一方、いくつか課題があるのも事実です。

 とくにインテリアの操作系に関しては「新世代レクサス」と謳う以上、NXとの統一性は必要だと思っています。

 細かいことかもしれませんが、プレミアムブランドは「メッセージ性が重要」、「神は細部に宿る」と思っているので。

 とくにLXは、ほかのレクサスモデルより確実にモデルライフが長いので、今まで以上に「Always On」の精神で進化・熟成に期待したいところです。

この記事の関連ニュース