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ハッチバックにトランク付けた!? 微妙なスタイルがクセになる小型セダンの魅力とは

くるまのニュース 2022年4月4日 19時10分

かつての小型セダンのなかには、ハッチバックをベースとしたモデルがあります。そのなかには「なぜこのスタイルで?」と疑問を持ちたくなるほどアンバランスなモデルも存在しますが、不思議なもので、そういったモデルほど印象に残るようです。

■セダンを支持する保守派のニーズにより誕生!?

 いまや絶滅危惧種となった「セダン」は、ひと昔前までは完全な主力モデルでした。そして誰もが手にしやすいコンパクトセダンがバカ売れした時代があったのです。

 現代の子どもたちがクルマの描くクルマの形はミニバンやSUVかもしれませんが、少し前まではクルマといえば独立したトランクがある、ノッチバックスタイルのセダンが一般的。

 3ナンバー車の税制が改められて垣根がグッと低くなる前は、いわゆる5ナンバーの小型車、とくにコンパクトセダンがもてはやされ、バブル期前後までは「国民車=コンパクトセダン」が定説でした。

 また庶民が手を出しやすい車種としてハッチバックも人気となったのですが、当時は高級セダンを頂点とする考え方があり、「ハッチバック=安くてチープでお金のない若者向け」というイメージが根強く残っていたのです。

 実際に当時の各メーカーのエントリーモデルは、ほとんどがハッチバックでした。

 日本でハッチバックの普及が本格化したのは1970年代初頭からですが、そんななか1974年に登場したフォルクスワーゲン「ゴルフ」(初代)が世界的な大ヒットモデルとなりました。

 そしてゴルフの高い完成度を活かしつつ、もっと実用性を高めるべく、1979年には独立したトランクを装備した3BOXスタイルの「ジェッタ」(初代)が誕生。

 北米市場や欧州の保守層向けに開発されたといわれており、当時としてはクラストップの630リットルもの荷室容量を誇っています。

 しかし、これがベースとなったゴルフにトランクを足しただけのセダンという安直にも見えるスタイルだったことから、そのアンバランスさが逆に話題となり、俗にいう「地味なのに悪目立ち」しているコンパクトセダンとして認識されていきました。

 そしてその流れは日本車にも多く取り入れられ、なかにはハッチバックの人気モデルにトランクをくっつけたジェッタと同じパターンを採用するモデルもありました。

 これは、「クルマといえばセダンだ」と考える保守的なユーザー向けで、「人気モデルで出来も良いとはいえ、ハッチバックでは(トランクの狭さなどで)心許ない」と考える高齢者を中心に一定のニーズがあるジャンルとなり、選択肢のひとつとしてラインナップに加わったのです。

※ ※ ※

 現在、国内で販売される5ナンバーサイズのセダンはめっきり数を減らし、残っているのはトヨタ「カローラアクシオ」くらいです。

 2019年に新型「カローラ」(セダン)が登場しており、どうしても5ナンバー車が欲しいという人や法人向けにカローラアクシオの販売が続けられています。

 ただし、海外ではいまでもコンパクトセダンが支持されており、日本メーカーが開発した海外市場向けのモデルがラインナップされています。

■クセになる不思議な魅力を持つコンパクトセダンとは?

 ハッチバックから派生したコンパクトセダンのなかには、ときどき「なぜこのスタイルで?」と疑問符を持ちたくなる、アンバランスなモデルも登場しています。

 しかも上手にまとまったコンパクトセダンより、そのアンバランスなモデルのほうが印象に残り、そんなアンバランスなモデルが「ブサカワ」に見えてくるのですから不思議なものです。

 そんな、ちょっとした違和感を覚えるアンバランスな「ブサカワなセダン」にはどのようなものがあったのでしょうか。

ホンダ「フィットアリア」

●ホンダ「フィットアリア」

 ハッチバックのホンダ「フィット」をベースにしたコンパクトセダンが、2002年に登場した「フィットアリア」です。

 もともとホンダは「シビック4ドア(セダン)」や「シビックフェリオ」、「コンチェルト」や「ドマーニ」などコンパクトセダンを、いつの時代にもラインナップしていました。

 ホンダは、タイで生産されていたコンパクトセダン(現地名「シティ」)の4ドアを国内に逆輸入し、新たにフィットアリアと名付けて国内のラインナップに加えました。

 名前の通り、プラットフォームは人気ハッチバックであるフィットと共用。燃料タンクをフロントシート下に配置する「センタータンクレイアウト」も採用されています。

 その結果、全長4310mm×全幅1690mm×全高1510mmと使いやすいサイズの割に、車内は広々としたセダンに仕上がっています。

 デビュー当時は、86馬力の1.3リッターガソリンと90馬力の1.5リッターガソリンを搭載。駆動方式はFFだけでなく、海外版のシテにでは設定されていないリアルタイム4WD(デュアルポンプ式)もありました。

 2005年のマイナーチェンジでは1.5リッターのみとなりましたが、110馬力のVTECエンジンが搭載されました。

 フォルクスワーゲン初代ジェッタのような無理矢理感は薄いのですが、かといってスタイリッシュともいいがたく、ホンダとしては珍しい地味なモデルでした。

 それでもフィット譲りの広い車内に独立したトランクを持つフィットアリアは実用性がかなり高く、日常のアシとしては十分な実力を持っています。

●日産「ティーダラティオ」

 コンパクトカーでありながら高級感を意識した上質なつくりの5ドアハッチバック日産「ティーダ」。

 それまで日産のコンパクトセダンの代表格だった「サニー」のブランド廃止のタイミングもあり、2004年に誕生した「ティーダラティオ」は、ハッチバックにトランクを備えた3BOXスタイルのコンパクトセダンです。

 全長4395mm×全幅1695mm×全高1535mmというボディサイズに、109馬力の1.5リッターガソリンと128馬力の1.8リッターガソリンエンジンを搭載しました。

 ソフトな素材が多用されるなど、上質なインテリアに趣を置いた実用的なスタイリングが特徴だったティーダに、さらに実用性の高いトランクを取り付けたティーダラティオのエクスリテリアは、やはりどことなく無理矢理感が漂います。

 このあたりは日産も承知していたのか、法人向けモデルや教習車モデルなども用意され、ルックスより実用性を優先させたモデルとして販売されていました。

 2008年にはマイナーチェンジがおこなわれましたが、国内市場では人気回復とはならず2012年には国内販売が終了しています。

●スズキ「SX4セダン」

 スズキ「スイフト」のクロスオーバーモデルとして2006年に誕生した「SX4」は車高が1585mmまで上げられたSUV風の5ドアハッチバックモデルで、デザインはイタルデザインが担当しました。

 この完成されたスタイリングに実用性の高いトランクを持つノッチバックスタイルに仕立てられ、2007年にデビューしたのが「SX4セダン」です。

 全長4490mm×全幅1730mm×全高1545mmと、実は3ナンバーサイズのコンパクトセダンですが、日本向けというよりも、主に中国や東南アジア向けとして誕生しました。

 パワートレインは、110馬力の1.5リッターガソリンエンジンに4速ATを組み合わせ、駆動方式はFFのみ。

 標準仕様の「1.5F」と上級版の「1.5G」のみというグレード構成もシンプルでしたが、キーレススタートシステムやフルオートエアコン、ABSやイモビライザーなどが標準装備されました。

 5ドア版のSX4よりは40mmほど車高が下がっていますが、それでもコンパクトセダンとしては高めの車高で大柄な人が多い海外市場を考慮した作りになっており、それが不思議な「こんもり感」を演出。前後の縮尺に違和感を覚えるスタイリングになっています。

 北米などでも販売されましたが、インドで人気を得るなど、やはり海外でもハッチバックよりセダンのほうが上級なイメージがあるようです。

 1.5リッターのみ、違和感のある3ナンバーボディもあって、日本では紛れもなく珍車扱い。

 515リットルという大容量トランクを備えていますが、ほかにもコンパクトセダンの選択肢が多かった日本では、やはり人気を獲得するまでには至りませんでした。

※ ※ ※

 最近のスタイリッシュなセダンと比べると個性的な外見を持つこれらのモデルは、その不人気ぶりゆえに中古車市場では程度以上に格安で購入できる可能性も高い、隠れたお買い得モデルともいえます。

 保守的な人だけでなく、運転に自信のない人や高齢者にとっては乗りやすさが最優先事項。しかも実用的な大型トランクを備えているのですから、アシグルマとしては最適なのかもしれません。

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