Infoseek 楽天

秘密の研究施設に「ロードスター」オーナーが集結! 原点は幻の「M2」!? マツダがオフ会開催に協力的な理由

くるまのニュース 2022年4月10日 16時10分

マツダ「ロードスター」のファンミーティングが同社の研究施設であるマツダR&Dセンター横浜で開催されました。普段は立ち入れない施設ですが、なぜマツダはロードスターファンに開放したのでしょうか。

■歴代「ロードスター」がマツダの研究施設に集結!

 マツダ「ロードスター」の日本最大のファンクラブ「ロードスター・クラブ・オブ・ジャパン(RCOJ)」は2022年4月3日、マツダR&D(リサーチ&デベロップメント)センター横浜(横浜市神奈川区)で「チャリティフリーマーケット2022春」を開催しました。

 当日は朝から小雨となりましたが、会場には全国各地から初代NA、2代目NB、3代目NC、そして現行のNDと一緒に自走してきた大勢のロードスターファンが集結。

 入場料は大人ひとり最低400円、またはフリーマーケットの出展料は最低700円をチャリティ募金とし、毎年末に東京や広島でおこなっている、クリスマスデコレーションを施したロードスターの助手席に子どもたちを乗せて町中を走るボランディア活動「ロードスターサンタドライブ」の活動資金に充てています。

 会場であるマツダR&Dセンター横浜は、JR新子安駅から徒歩で15分前後の距離にある京浜工業地帯の一角に位置しています。

 マツダR&Dセンター横浜は、マツダの広島本社の研究開発やデザイン関連の部署を連携する形で1980年代に設立され、現在は首都圏での情報収集や周辺の道路で量産に向けた車両走行試験をおこなう拠点といった目的で使われています。

 また、メディア向けの新車試乗会や商品説明会の拠点として用いられることが多い場所でもあります。

 自動車メーカーの企業秘密が集約しているR&Dに、一般ユーザーが気軽に立ち寄れる環境が実現している光景は、筆者(桃田健史)を含めて自動車産業界に長く関わっている人の目にはとても不思議に映ります。

 しかも、今回のイベントは駐車場スペースでおこなっているのではなく、マツダR&Dセンター横浜の社屋1階のかなり広いスペースを使用していることが驚きです。

 正面玄関を入って左側にあるオープンギャラリーには、ロードスターの特別仕様車「990S」と2022年3月19日に開催された4時間耐久レース参戦モデルや、マツダの真骨頂である「ソウルレッド」の外装色に関する展示されたほか、同じスペースでは広島のマツダ生産技術部門とオンラインで結んだ型磨き体験も実施。

 さらに、1階奥手にある大会議室では、本社工場でのロードスター生産風景の動画を上映したり、NAからNBに関する本物のデザインスケッチが数多く公開されていました。

 中庭に出ると、NDの車体とエンジンに関する技術展示もあり、その脇には鋳鉄とアルミのナックルなどを実際に手に持って重さや形状を体感するコーナーも設置。

 そのほか、1階通路には本社工場の歴史に関するパネル展示があるなど、マツダR&Dセンター横浜の1階スペースがまるでロードスター博物館のようなレイアウトになっていたのです。

 当日、マツダ社員の皆さんもイベントに参加していましたが、主催はあくまでもロードスター・クラブ・オブ・ジャパン(RCOJ)であり、マツダR&Dセンター横浜はRCOJのバックアップ役に徹していました。

■ファンミーティングの原点には、あの「M2」の存在があった!

 恒例となっているRCOJのチャリティフリーマーケットなど、このようにファンが主体となったイベントがどういう経緯でマツダR&Dセンター横浜で開催されるようになったのでしょうか。

 マツダ本社に聞いてみたところ、なんと「M2」という懐かしい名前が出てきました。

新商品を創造するため設立された「M2」(東京都世田谷区)

 M2は、マツダがユーザーと直接コミュニケーションを取ることで新しい商品企画を創造するために、1990年代に東京都世田谷区に設立された会社でした。

 環状八号線沿いにそびえ立つ斬新なデザインのM2本社ビルは、クルマ好きの間で大きな話題になったものです。

 しかし、マツダの事業全体がフォードの資本参加によって大きく転換するなか、M2は1991年から1995年までのわずか4年間という短い期間で活動を終えました。

 当時、M2に勤務していたマツダ関係者によると、1994年頃、関東地域に点在していたロードスターのファンクラブのリーダーミーティングをM2の会議室を開放して開催したといいます。

 これがマツダR&Dセンター横浜でのイベントへとつながる道筋の原点ではないのかと、当時を振り返ります。

 M2が休眠した後、1997年夏頃にRCOJの提案で、マツダR&Dセンター横浜で納涼祭を開催。数百人のロードスターオーナーが集まり、横浜花火大会を開発棟の屋上から鑑賞したそうです。

 そして、広島本社が関与したユーザーミーティングとしては、広島県三次市のマツダ三次自動車試験場で1999年10月にロードスター10周年記念ミーティングが開催されました。

 その後、2009年にロードスター20周年、2017年に三次試験場50周年、そして直近では2019年にロードスター30周年記念イベントが盛大に開催されています。

 そのほか、マツダR&Dセンター横浜では、2017年開催の(ソウルレッド外装色のモデルユーザーによる)「クラブ・ソウルレッド」のミーティングや、「RX-8」、「コスモスポーツ」などさまざまなオーナーズミーティングの開催実績があります。

 このように、ユーザーに対してマツダR&Dセンター横浜を開放している理由について、同センター幹部が次のように説明してくれました。

「現時点でマツダは、新しいコーポレイトビジョンとして、お客さまとの絆を深め、カーライフを通じてお客さまに輝きを提供することを企業の使命を掲げています。

 その原点となった活動が、今回のチャリティフリーマーケットのようなマツダ車とユーザーとが直接つながるという関係性にあります」

 マツダが、世界中のユーザーに愛されている企業であるからこそ、その人たちを裏切らず、人生の輝きを提供する商品とサービスを提供する必要があると、マツダ社員一人ひとりが認識しているのです。

 そのうえで前出のセンター幹部は、「R&Dセンター横浜にも、機会のあるたびに、できるだけ自由な形でこうして内部に入って頂き、マツダのさまざまな企業活動に直接触れて頂きたい。ここに、さらに多くのマツダユーザーが集まってきてほしいと思っています」と強調しました。

 今後も、マツダR&Dセンター横浜でさまざまなユーザーミーティングが継続的におこなわれることを期待したいと思います。

この記事の関連ニュース