高速道路を走行していると大型トラックがゆっくりと走行していることがあります。ときには複数車線を塞ぐようになっている場合もありますが、トラックの走行ルールはどのようになっているのでしょうか。
■高速道路では、トラックは左側が基本!
例年、ゴールデンウィークといった長期休暇では、高速道路を利用して移動する人が多くなる傾向にあります。
そんななか、大型トラックなどが追越し車線をゆっくり走っていることもありますが、大型トラックの走行ルールはどのようになっているのでしょうか。
高速道路は、片側1車線から3車線が一般的で、もっとも右側の車線は「追い越し車線」、その左側の車線については「走行車線」となります。
なお、追い越し車線については、道路交通法第20条3項において「前方車両を追い越すとき」、「緊急車両等に進路を譲るとき」、「道路状況やそのほかの事情によってやむを得ないとき」の3つのケースで走行可能であると表されています。
一方で、高速道路の路肩にはトラックが描かれた標識「特定の種類の車両の通行区分」が設置されていることがあり、これは基本的に「この区間ではトラックは1番左側の車線を走行するように」と指示されたものです。
事実、高速道路を走行している際、左側の車線にトラックが多いと感じたことのある人も多いでしょう。
現役トラックドライバーU氏は、高速道路でのトラック走行について「大型トラックは、高速道路では制限速度が80km/hと定められていて、スピードリミッターが搭載されているので、速度が出せても上限は90km/hほどとなります(総重量8t超の場合)」と話します。
高速道路における乗用車の上限速度は、東名高速道路や東北自動車道の一部区間では120km/hとされており、100km/hほどであることも珍しくありません。
そうしたなかで、トラックは80km/hまでとされているため、必然的にゆるやかな速度域である左側を走行することになるのです。
また「デジタルタコグラフ」の搭載も、左側をゆっくりと走行する理由のひとつになっているといいます。
デジタルタコグラフとは、主に速度や走行時間、走行距離を計測するもので、最新のものになると急加速や急減速なども記録しています。
これにより、トラックドライバーはその運転方法を常に記録されている状態となり、常に一定の走行を意識することになるのだそうです。
U氏は、一定の走行が求められる理由について、以下のように説明します。
「『お客さまの荷物を安全に運ぶことができるから』というのが1番の理由です。
加えて、ガソリン代の高騰が著しい現状もあって、できるだけ燃費を稼ぎたいというのも本音です。
速度を一定に保つことで、燃費よく走ることができるので、急加速や急減速を控える運転をしています」
■時々右車線にも?トラックが追い越し車線をゆっくりと走行するのはなぜ?
一方で、高速道路では、大型トラックが追い越し車線を走行し、後続車が詰まっている様子が見られることもあります。
前述したように、法令では追い越し車線を走行し続けることはできず、さらにトラックの場合、特定の種類の車両の通行区分の標識が出ている区間は、左側の車線しか走行できないことになっています。
このような規制があるなかで、高速道路の追い越し車線を使ってゆっくりと追い越しをするケースがあるのはなぜでしょうか。
まず、高速道路での走行について、U氏は以下のように説明します。
「トラックドライバーは一定の速度での走行を心がけていますが、意外とこの『一定の速度で走る』というのが難しいのです。
こちらが法定速度で巡行していても、速度が安定していない一般車両に少しずつ追いついてしまうといった状況が発生してしまいます。
もし前方車両に近づきすぎて、そのタイミングで不慮の事態が起こった時、急ブレーキを踏むようなことがあれば積荷が崩れるなどの損害が出てしまいます。
ですので、安全に一定の速度を保つため、右車線に出て追い越しをするのですが、その際に上限速度の関係から、どうしても後続車が詰まってしまうタイミングがあります」
ちなみに、大型トラックはその車体重量から、一度スピードが落ちてしまうと、速度を上げるまでには時間がかかってしまうのが実情です。
アクセルを全開にしても、リミッターで速度が制限されているうえに、速度を上げるのに時間がかかってしまうのであれば、追い越しに時間がかかってしまうのも仕方がないといえます。
なお、このように大型トラックが追い越し車線を利用している場合には、トラックで2車線が塞がれてしまうという事態も発生することがあります。
そうした状況について、U氏は「あれも一定速度を保つために追い越ししています」として、以下のようにその実情を話します。
「同じ制限速度、同じスピードリミッターであっても、車種や積載している荷物によって車両重量が違うので、そこから加速する性能やトップスピードに差が出てしまい、どうしてもゆっくりな追い越しになってしまいます」
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U氏が話すように、トラックドライバーは常に安全運転を心がけており、決してほかの車両の迷惑になりたいわけではありません。
デジタルタコメーターで安全運転を監視され、制限速度も80km/hという制約の多いなか、できるだけ早く、そして安全かつ効率的に荷物を届けるために走行しているのです。
トラックが高速道路でもし右側に車線に出て追い抜きしようとしていたら、車間を詰めてせかすのではなく、車間をあけ、余裕をもった運転でトラックの追い越しを待つことが高速道路全体の安全運転に繋がるといえます。