2022年3月に登場したミシュランの最新スポーツタイヤが「パイロットスポーツ5」です。レースで培われた技術を採用したハイグリップタイヤといいますが、乗ってみてどんな印象だったのでしょうか。クローズドのテストコースで試してみました。
■「サーキットも走れるストリートタイヤ」の進化版
2022年3月に日本ミシュランタイヤから登場した「Pilot Sport 5(パイロットスポーツ5)」は、ミシュラン「パイロットスポーツ」シリーズの最新スポーツタイヤです。
パイロットスポーツシリーズにはさまざまな商品がありますが、パイロットスポーツ5はその中でもっともストリート寄りのスポーツタイヤ、つまり「サーキットも走れるストリートタイヤ」という立ち位置になります。
従来より定評のあった「パイロットスポーツ4」の後継モデルで、サイズは17インチから21インチまで、35シリーズから55シリーズまで全43サイズと、豊富なラインナップも特徴です。すべてオープン価格となります。
今回の新タイヤ開発にあたり、ハイグリップスポーツタイヤに求められる性能だけでなく、ユーザーの求める「走る楽しさ」から「見た目の満足感」まで、求められるさまざまな性能領域を最大化したところが特徴といいます。
トレッドパターンは新たに「デュアル・スポーツ・トレッドデザイン」を採用しました。
これはイン側でウエット、アウト側でドライの性能を発揮する左右非対称のトレッドパターンで、イン側はボイドレシオを上げ排水性を高め、アウト側は大型ブロックを採用して高い剛性を確保。これにより、ウエット/ドライどちらの路面でも高いグリップを発揮するといいます。
また、高強度で耐熱安定性に優れたハイブリッド・アラミド/ナイロンベルトを用いた「ダイナミック・レスポンステクノロジー」を採用。タイヤが路面と密着することで、ドライバーの意思を路面に伝え、意のままのハンドリングを実現しているといいます。またコーナリング時における接地圧分布を、より均等になるよう内部構造を最適化する「バリアブル・コンタクト・パッチ3.0」を採用することで、グリップ力とコントロール性が増し、安定したコーナリングを実現するそうです。
これらの技術の採用により、先代パイロットスポーツ4と比較して、ウエットでの最速ラップタイムは約1.7%短縮、ウエットの平均ラップタイムも約1.5%短縮しています。
タイヤの転がり抵抗性能とウエットグリップ性能を示すラベリングは、全43サイズ中42サイズが「A-a」、1サイズが「B-a」で、全サイズともウエットグリップ性能最高の「a」を取得しています。パイロットスポーツ5が属するカテゴリーはスポーツタイヤですが、ほとんどのサイズで「低燃費タイヤ」の基準を満たしているのも特徴です。
さらにパイロットスポーツ5は、見た目にもこだわっているのがミシュランらしいところです。
精緻な加工が施された「フルリング プレミアムタッチ」により、サイドウオール全周にわたりより深い黒をまとっています。これにより、クルマのスタイルをより引き締め、高級感を与えることに成功しています。
■先代でも定評のあるウエットグリップにさらに輪をかけた
栃木県にあるテストコース、「GKNpドライブラインジャパン・プルーピンググラウンド」にて、パイロットスポーツ5の試走会が開催されました。
試走車はトヨタ「カローラスポーツ」で、装着タイヤサイズは225/40ZR18(95Y)XLです。
まずはウエットハンドリング路を走行します。ここは細かいコーナーが続く1周およそ1kmのコースで、大小さまざまなコーナーがあり、全周にわたり散水されています。
最初に運転したのは、先代であるパイロットスポーツ4を装着したカローラスポーツ。このタイヤもウエットグリップに定評があるのですが、そのとおり、相当なペースでコーナーに入ってもなかなか滑り出しません。
横方向のグリップだけでなく縦方向のグリップも良く、コーナー手前の直線でハードなブレーキングをしても、滑り出すこともなくきちんと速度を落とします。コーナー立ち上がりの加速も、空転することなく速度を上げていきます。
続いて、新タイヤのパイロットスポーツ5を装着したカローラスポーツに乗り換えます。
先ほど先代パイロットスポーツ4で満足していたウエットグリップですが、新パイロットスポーツ5はそれにひと回り輪をかけてグリップを良くした印象です。同じコーナーに同じ速度で進入しても、新パイロットスポーツ5のほうがドライビングに余裕が出てきます。先ほど乗った先代タイヤのときに比べて、ペースも上がっているのが体感できます。
続いて外周路を走行します。ここでは100km/hでのレーンチェンジや加減速などをおこないましたが、急なレーンチェンジでもスッと決まり、変な揺り戻しなどの余韻を残しません。意のままに、素直にクルマをコントロールできる楽しさを実感します。
スポーツタイヤにコンフォート性を求めるのも酷な話ですが、先代タイヤに比べると新タイヤは「シャー」というパターンノイズ、「ゴー」というロードノイズともに抑えられている感じがありました。少なくとも外周路を走った速度内では、スポーツタイヤに乗っているネガティブな印象はありませんでした。
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ミシュランのスポーツタイヤらしく、新パイロットスポーツ5もハンドルを切ったときに急にグリップが立ち上がる感じではなく、ハンドル操作の舵角に応じてリニアにグリップが増すイメージです。
なので、とくに国産タイヤメーカーのスポーツタイヤに乗り慣れていると「グリップ感」が薄いという印象を持つ人もいるかもしれません。
ですが実際にタイムを測ってみると、経験上ピーキーなグリップ感を持つタイヤよりも、穏やかなグリップ感のほうが速いことが多い印象です。
運転がしやすく、ウエット路面に強く、さらに低転がりのタイヤ。さらにサイドウオールが黒くてオシャレ…とくれば、パイロットスポーツ5はスポーツタイヤとして相当高いレベルに進化したといえそうです。