Infoseek 楽天

大改造「86」登場!? 話題のトヨタ「3世代ハチロク」ドリフト! 「どうやって撮影したの?」舞台裏に潜入してみた!ド迫力映像の秘密とは

くるまのニュース 2022年4月16日 11時10分

2022年4月15日から放映されているGR86のTVCM [THE FR]が大きな話題となっています。まだ冬の寒さが残る富士スピードウェイで撮影された、その現場の舞台裏を取材することができました。

■あの大迫力TVCMはこうして撮影されていた!? 緊迫の舞台裏に迫る!

 2022年4月15日から放映しているGR86のテレビCMはご覧になりましたか。
 
 夜の静寂に包まれたサーキットを「AE86」、「トヨタ86」、そして「GR86」と3台の“新旧ハチロク”が美しいドリフトで疾走。
 
 FRの楽しさ、GR86にしっかりと受け継がれているAE86からのヒストリー、そして歴代モデルに継承されている「FRの血」を感じさせる迫力の映像に驚いた人も多いのではないでしょうか。

 筆者(工藤貴宏)は幸運にも現場で撮影に立ち会うことが出来たのですが、撮影の様子で驚いたことを紹介しましょう。

接触スレスレ!3台のハチロクのドリフトCMはどうやって撮影された? 謎の大改造「86カメラカー」も大活躍!

 まず驚いたのは、その撮影規模。

 撮影の舞台となったのは富士スピードウェイの本コースですが、本番撮影は日没後の撮影のみならず明るいうちから貸切ること3日間(事前のリハーサルは3か月遡ってはじまっている)。

 映像を収録するのは夜間なのでコース脇にはコースを照らすデッキ付きの照明車が用意されたのですが、いったいどのくらいの照明車が配置されたと思いますか。

 5台?10台?……まだまだ足りません。20台?…もっともっと。

 なんと、その数は36台!これだけの数が一堂に集められるなんて前代未聞です。

「関東全域のデッキ付き照明車をかき集めた。それでも足りずに中部や関西から運ぶことまで考えた」(関係者談)と聞けば、そのスケールの大きさが伝わりますかね。こんなに照明車を集めるなんて!

 それぞれ間隔を開けているとはいえ、コース脇に36台もの照明車が並ぶ様子は壮観で、なかなか見られるものではありません。

 撮影中に光の当たり方を調整する必要もあるので、1台ごと地上とデッキ上にスタッフがスタンバイ。

 つまり照明スタッフの数だけでも相当な人数となるわけで、そんな現場を取り巻く照明環境からもこのCMにかける意気込みが伝わってきます。

 CMの見どころは3台のハチロクによるドリフトの競演。しかもCMを見て驚いた人も多いことでしょう。

 単に3台でドリフトしながら走るだけでなく、いまにも接触しそうなほど接近しているのだからスゴいですね。

 もちろん、この超接近ドリフトはGR86を駆る佐々木雅弘選手をはじめとする3人のドライバーのテクニックあってこそ。

 美しいドリフトかつギリギリの車間で連なって走る巧みなコントロール技術はさすがとしかいいようがありません。

 あまりにもガチすぎて、撮影中に何度か接触してドアが凹んだり、ライトが割れたのはここだけの内緒です。

 実は3台で接近戦ドリフトをするにあたって、ドライバーのテクニックだけでは解決できない問題もありました。

 それは3台のハチロクの性能差。3台の速度やドリフトアングルを揃えるのに苦労したのです。

■異なる3台のハチロクの性能差…大接近ドリフト撮影のための秘策とは?

 当然ながらGR86に比べるとトヨタ86はパワーも限界域も低く、大先輩のAE86はさらに大きな性能差がついてしまうのは否めません。

 そうなると速度もアングルも揃えながら3台でドリフトをする難易度が高まるのですが、今回の撮影ではどう解決したと思いますか。

 種明かしをすると、それぞれの86に履くタイヤのグリップレベルに差をつけて調整し、3台のパフォーマンスの差を減らしたのです。

GR86のTVCM [THE FR]で実際にドリフトをした松井有紀夫氏(左)、佐々木雅弘氏(中)、高橋しげる氏(右)

 そして、このCMが迫力たっぷりな理由は、なんといっても視点でしょう。ドリフトしている3台を追いかけるような視点におもわず引き込まれてしまいます。

 何を隠そうこれがドローン撮影だから実現できたこと。今回の撮影では、ドローンは「画面に登場しないもう1台のマシン」といっていい存在です。

 ハイライトは、視点(=ドローン)がGR86の車内に進入するするシーン。

 「そんなのCGだから簡単にできる」と思った人も多いかもしれませんが、なんとCGではなく実写。実際にドリフトしているGR86の室内に、助手席の窓からドローンが入り込むのです。

 もちろん疾走するクルマの窓からドローンが車内へ入るのは簡単なことではなく、難易度が高すぎるテクニック。実は撮影中は何度も何度も失敗し、車体へのドローンの接触だって幾度となく起こりました。

 そして失敗すること数十回。時間も押し迫るなか、ついに成功したときはプレッシャーから一気に解放された空気が現場に流れました。

 ドローンが車内に入る際の車両の速度は約80km/h! 86の3人のドライバーはもちろん、ドローンパイロットも凄い腕です。

「大切にしたのはスピード感。もっと速度を落とせばここまで苦労しなくても撮影できたと思うけれど、それでは走りの迫力がでない映像になってしまいます。ドローンにあわせるのではなく、スピード感のある走りにドローンをあわせてもらったのです」

 とGR86のドライバーを務めた佐々木選手は現場でこだわりを教えてくれました。

「スピードと細かい動きの両方が必要。過去の仕事のなかでももっとも難しいプロジェクトでした」とドローンを担当した日本でトップレベルの腕を持つドローンパイロットの田中道人さんもその難しさを明かします。

 ちなみに撮影は3月中旬の富士スピードウェイでしたが、その時期の夜はまだ寒く、撮影時には雪が舞ってきたほど。スタッフにとっても過酷な現場だったのは間違いありません。

 迫力あふれる映像の裏側にあるそんな撮影秘話を知れば、今度のGR86のCMを見るときはもっともっと深く楽しめること間違いなしです。

この記事の関連ニュース