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なぜこんなところに? 公道に「ポツンとEV充電器」 全国初「公道充電器」が横浜に設置された理由とは

くるまのニュース 2022年4月19日 9時10分

神奈川県横浜市内の公道には日本初&全国唯一の「急速充電器」が設置されています。なぜ横浜の住宅街に急速充電器が設置されているのでしょうか。

■横浜市青葉区しらとり台にある公道充電器とは?

 2021年6月8日から神奈川県横浜市内の公道で実施してきた「全国初の公道充電器」の社会実験。

 当初、2022年3月31日に終了を予定していましたが、このたび延長が決定し1年後の2023年3月末まで実施されることになりました。

 全国初の公道充電器は横浜市青葉区の神奈川県道140号川崎町田線沿い、地名でいうと「しらとり台付近」に存在します。

 140号線を町田方面に走り環状4号との「下台」交差点を過ぎ約600m走った左側に位置するが24時間誰でも利用できる急速充電器です。

 この場所からクルマで10分位の場所に住む筆者(加藤久美子)が充電器の存在に気づいたのは2021年夏のことでした。

 最初に見たときは「P」の青い標識の下に「充電のためのEV/PHEVの充電に限る枠内に限るここから」と記されていました。

 調べてみたらそれは日本初の「公道EV充電ステーション」で店舗などの駐車スペースが少ない都市部の充電スポット不足を将来的に解消する目的で実施される社会実験だったのです。

 実施の主体は「EV充電器の公道設置に関する実証実験協議会」で 横浜市とe-Mobility Power(充電インフラの整備、充電ネットワーク拡充ならびにサービス提供をおこなうために電力事業者や自動車メーカーによって設立された会社)です。

 国土交通省は2020年9月に「道路に関する新たな取り組みの現地実証実験(社会実験)」が採択され、2021年6月8日より横浜市青葉区しらとり台69付近の県道140号線沿いにおいて、24時間誰でも利用できるEV充電器の公道設置に関する実証実験として開始されました。

 設置充電器は CHAdeMO 規格の急速充電器1基で2台同時に充電が可能。1台利用時の最大出力は90Kw、2台利用時の最大出力は56kWです。

 設置に関わった横浜市温暖化対策統括本部プロジェクト推進課の担当者に「なぜ、この場所」への設置が決まったのかを聞いてみました。

「場所の選定は2020年1月頃から始まりました。全国初の公道充電器ということで手探りで始まったところもあり、また、安全第一は当然で事故が起きにくいなどのクリアすべき条件も多く、設置場所の検討は慎重に時間を掛けておこなわれました。以下の条件で検討が進みました。

 ・EVの走行台数が多い場所であること
 ・十分なスペースが取れること
 ・充電を目的としたEV以外のクルマが路駐しないこと
 ・事故が起きにくい場所であること

 といったもので、設置を決める前に何度も周辺をクルマで走り回って、『EVがどれくらいこの場所を通過するのか?』なども調査しました。

 そして警察や道路管理者、土木事務所、道路局などと調整し場所を横浜市青葉区しらとり台近辺の県道140号線上に決定しました」

■95%が公道設置に賛成。残り5%は?

 横浜市がおこなった利用者アンケートの中間報告(2021年10月公開)によると、6月8日のオープン以来に平均して月に200回以上の利用があり利用者のほとんどが公道での充電器を高く評価しているとのこと。報告の一部をご紹介します

 ●利用状況(2021年)
 ・6 月(6/8-7/7) 228 回
 ・7 月(7/8-8/7) 229 回
 ・8 月(8/8-9/7)243 回

 設置された6月以降、順調に毎月利用者が増えており200 回超/月の利用状況となっています。

 EVの台数そのものが増えたこともありますが、この場所が充電ステーションとして定着しつつあることがわかります。

 また、「都市部の充電スポットを増やすために、公道上に充電器を設置する取組について、どう考えますか」というアンケートでは「支持する:94.7%」、「反対する: 5.3%」という結果に。

 次に「今後も公道充電器を使用しますか?」という質問に対しては、「積極的に利用したい:64.5%」、「たまに利用したい:26.3%」、「分からない:5.3%」となりました。

 公道への充電器設置に「反対する」と答えた人の理由は主に「自販機すら周囲にはなく、飲み物も買えないし、商業施設と違って時間をつぶす場所がない」ということだったそうです。

横浜の住宅街にEV充電器が設置されたのは「実証実験」だった?

 さらに2021年10月の中間報告以降の利用者へのヒアリングでは以下の回答が集まりました。

「いつもここで充電しているので無くなったら困る」
「雨除けなどがないので、濡れずに座れるベンチなどが欲しい」
「24時間いつでも使えるのがいい」
「ディーラーの充電器は、他メーカーのクルマだと充電しづらいこともあるがここは気にせず使えて便利」

 現在のところ、公道に設置された24時間利用できる充電器は日本でここだけですが、横浜市では今後も実証実験を続けていく考えです。

 なお、2022年4月14日から交付申請受付が開始された「令和3年度補正クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」のなかの充電インフラ整備事業においては、充電器の設置場所に関して高速道路のSA/PA、道の駅、ガソリンスタンドなどに加えて「公道」の文字があります。

 公道とは高速道路や地方道路公社が管理する道路を除く、国道、都道府県道、市町村道のことです。

 EVの充電には自宅や職場でおこなう「基礎充電」、商業施設や旅先の宿泊施設などで行う「目的地充電」、そして高速道路のSA/PAなど移動の途中でおこなう「経路充電」の3つに大別されますが、公道のEV充電器はこのうちの「経路充電」に該当します。

 EV充電の基本は6時間から8時間を掛けておこなう普通充電器による「基礎充電」ですが、公道で24時間充電できる設備が増えることはEV利用者にとって心強い存在になることでしょう。

 横浜市に続いて今後は公道への充電器設置が増えることが期待されています。

【訂正】記事初出時より本文を一部修正致しました。
(2022年4月20日 10:25 くるまのニュース編集部)

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