トヨタは高性能なターボエンジンを搭載する4WDスポーツカー「GRカローラ」を2022年後半に発売する予定です。自動車業界が電動化にシフトしているなか、なぜトヨタは純ガソリン車のスポーツカーを作ることができるのでしょうか。
■純ガソリン車のスポーツモデルが減少するなかトヨタは…
改めていうまでもなく、自動車業界の世界の流れは電動化です。そんななか、トヨタが「GRヤリス」に続き「GRカローラ」という武闘派の4WDターボを発表しました。
一方で4WDターボのスポーツモデルを得意としてきたスバルは、次期型「WRX STI」のリリースを断念した模様。
欧州勢も純エンジン車のスポーツモデルを作り続けるのが難しくなっているというのに、なぜトヨタだけ違う方向を向いているのでしょうか。
これはふたつの側面から考えるべきだと思います。
ひとつめは燃費規制です。
いまや欧州や日本でCAFE(企業平均燃費)が取り入れられており、販売している車種すべてを合わせた平均燃費で大ざっぱにいえば20km/L以上という数値にしなければならない。
CAFEを守れなければ欧州だと巨額の罰則金を取られ、日本は強力な行政指導により国土交通省が型式認可を出してくれません。日欧ともにCAFEを守らないとクルマを売れないというワケです。
当然ながら燃費の悪い純エンジン車のスポーツモデルなど出したら平均燃費の足を思い切り引っ張ってしまい、結果、世界規模で純エンジン車が激減しているのだった。
参考までにいうと、ポルシェやフェラーリ、ロールスロイス、ベントレーといった高額車はCAFEなど守れていないが、高額の罰則金を皆さん平気で払います。
日本勢や欧州勢もフォルクスワーゲンやルノー、ステランティスに代表される量産メーカーは厳格にCAFEを守ろうとしており、高性能車など出せない状況になっている。
ここまで読んで「トヨタはグリーンピースから主要自動車メーカーの脱炭素化の取り組みのランキングで最低評価を貰ったほど燃費悪いのでは」と思うかもしれません。
(このニュースは世界中に広まりましたが、そもそも環境保護団体のグリーンピースのプロパガンダなど大手メディアは報じちゃいけないと思う)
グリーンピースの誹謗中傷と対照的に、トヨタのCAFEは圧倒的に優秀です。世界中の自動車メーカーが厳しいといっている2020欧州CAFEを余裕でクリアしているほど。
これはハイブリッド車の燃費が猛烈に良いからで、グリーンピースの主張と異なり世界でもっとも脱炭素化に貢献しています。
あまりに平均燃費が良いから、GRヤリスのような純エンジン車で燃費に不利な4WDのスポーツモデルを出せる余力を持っているのです。
もちろん欧州だけでなく、日本のCAFEや近々厳しくなるだろうアメリカのCAFEもクリア出来る見込みがあるため新型GRカローラまで追加できてしまうというわけです。
ちなみに日産新型「フェアレディZ」やホンダ新型「シビック タイプR」も、世界規模で見たら超希少です。
■自動車文化には「華」が必要
ふたつ目は豊田章男さんの強い希望だと考えます。
「スープラ」を発売する際、「全米の移動・輸送手段だった1500万頭の馬は20年ですべてクルマに置き換わった。残ったのは乗馬や競走馬といった文化です」とコメント。
当時、自動運転が盛んに取り上げられており、運転を楽しむような時代は終わるみたいな意見も出ていました。それに対するアンチテーゼだと思うけれど、もう少し広範に考えて良いでしょう。
やはり自動車文化には「華」が必要。スポーツカーを持っていない自動車メーカーに魅力などありません。
トヨタ以外のメーカーを見ると、電気自動車のスポーツカーに切り換えようとしているものの、やはり直近の10年や15年は純エンジン車に対するニーズだって大きいと思います。
クルマ好きにとっての「馬」を、トヨタがキッチリ作っていきましょうということなのかもしれません。