かつて車内の装備として定番だった「シガーライター」は、現在「アクセサリーソケット」として生き残っています。スマートフォンなどの充電はUSBポートで事足りるはずですが、なぜアクセサリーソケットは廃止されないのでしょうか。
■「シガーライター」に代わって普及した「アクセサリーソケット」は今後どうなる?
クルマの性能や機能・装備は時代とともに進化ならび変化しています。
かつて「シガーライター(シガーソケット)」だった部分は、現在「アクセサリーソケット(電源ソケット)」や「USBポート」へと変化しています。
最近のものであれば、スマートフォンなどの充電はUSBポートで事足りるはずですが、なぜアクセサリーソケットは廃止されないのでしょうか。
車内外の装備も時代に合わせて変化しており、例えばサイドレバーがボタン式になっていたり、エアコンなどの操作がボタンやダイヤルではなく、タッチパネル内に集約されたりというように変化しています。
なかでも特徴的なのは「喫煙」に関するもので、かつて日本では飛行機や電車のなかでも喫煙が可能な時代がありました。
同時にクルマの標準装備として「シガーライター」や「灰皿」がインパネ中央などに配置されているのが定番だったのです。
しかし、「喫煙=健康を害するもの」という意識が高まったことでシガーライターや灰皿は標準装備ではなくなり、現在では一部の車種でオプションまたは汎用品のみとなっています。
一方、シガーライターがもともと設置されていた場所には、同じ形で普及したアクセサリーソケットが備わっており、これは対応するプラグを差し込むことで電源として活用できます。
最近では、そんなアクセサリーソケットと同様に電気を供給する装備として「USBポート」の搭載が広まっています。
スマートフォンやパソコンなどの電子機器は、USBを充電コードとしていることが多く、一部のデバイスを除くと、USBポートに直接コードを差し込んで充電することが可能です。
現行車種には、アクセサリーソケットとUSBポートが両方設置されているモデルが増えていますが、アクセサリーソケットのみのモデルがあるのも実情です。
しかし、アクセサリーソケットには、USBプラグを直接差し込むことができず、専用のカーチャージャー(アクセサリーソケットをUSBポートに変換する機器)を使用しなくてはいけないという問題があります。
アクセサリーソケットやUSBポートの利用方法は人によって異なりますが、自分のクルマにアクセサリーソケットしか設置されていない場合にはカーチャージャーを使用して、USBポートとしてスマートフォンなどを充電する人も存在。
そうしたことを考慮すると、アクセサリーソケットの役目をUSBポートに譲っても良いのではないかとの見方もできます。
■アクセサリーソケットがUSBポートとともに生き残るワケ
そんなアクセサリーソケットが完全に廃止されず、USBポートとともに生き残る背景には、どのような理由が挙げられるのでしょうか。
ホンダの広報担当者は「近年の車内での充電ニーズは、スマートフォンなどの電気デバイスが主になっており、給電方法もUSBに移行していることは間違いありません」と、USBの需要の高さを認知しつつも以下のように説明します。
「パンク修理キットなどの電力を必要とする製品についてはアクセサリーソケット対応であること、そのほか車載用のデバイスやサイドパーティ部品には、未だにアクセサリーソケットの需要があります」
例えば、車載用のデバイスとしては、ドライブレコーダーなどが挙げられ、そうしたパーツのなかにはアクセサリーソケットから電源をとるものもあります。
こうした背景に加え「とくに乗り換えのユーザーなどを考慮すると、一定の需要がある」と考え、アクセサリーソケットを車内装備としているようです。
一方で、最近ではアクセサリーソケットやUSBに加え、コンセントが装備されているモデルも見られます。コンセントの立ち位置はどのようになっていくのでしょうか。
「アクセサリーソケットに代わり、USBの受容が増えていることからも、今後、車内電源がコンセントに移行していくことは確かだと考えています。
また、PHEVやEVなど、大型バッテリーを内蔵した車両が普及するにつれコンセント仕様が増えていきます」
前出のホンダ担当者は、このように、USBに加えてコンセントが今後広く普及していくことを見込んでいます。
ただし「しかしながら、アクセサリーソケット自体は汎用性が高く、前述のとおり需要もいまだにあることから、市場の動向を確認しながら適切な給電装備の適用について検討していきたいと考えています」とも話し、アクセサリーソケットが早急になくなるということはないようです。
またホンダやトヨタでは、ハイブリッド車の多くに「コンセント(AC100V/1500W)」を標準装備またはオプション装備として広く展開しています。
その背景には、前述のように車内で電化製品を使用することが出来るというメリットの「移動できる電源」として需要の高まる車中泊やアウトドア、そして万が一の災害時など幅広い場面での活用が期待出来ます。
トヨタの販売店ではコンセント事情について、次のように話しています。
「ハイブリッド車のグレードや仕様によって、アクセサリーコンセントはオプションとなっていますが、最近のアウトドアニーズや災害に対する意識が高まったことで設定される人は増えている印象です。
また、『非常時給電システム付』であれば、エンジン停止の状態も給電可能なので排気ガスなどを気にせず使用することも出来ます」
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現時点では、アクセサリーソケット、USBポート、コンセントとさまざまな電源がある国産車ですが、輸入車ではUSBポートのみになっている車種もあり、車内の電源事情は今後も変化が見られそうです。