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絶滅した「ルーフベンチレーション」って何? エアコンなしでも車内換気に効果バツグン!

くるまのニュース 2022年5月6日 11時10分

1980年代に大流行したクルマの装備に「サンルーフ」があります。オープンカーほどではありませんが開放感あふれ、近年では大型ガラスサンルーフを設定するクルマが増えるなど、再び見直されています。一方、かつてはサンルーフ以外にも、もうひとつのルーフ形態である「ルーフベンチレーション」が存在しました。いったいどんな装備だったのでしょうか。

■「サンルーフ」以外の新たな屋根の形態とは?

 新型コロナウイルスの感染拡大で、普段の生活において手洗いやうがいと並んで重要なことのひとつが「換気」です。

 クルマに乗っている際にも換気は重要で、フレッシュな空気を車内に取り込むことは眠気防止の効果があり、喫煙者にとっては日常の行為といっていいでしょう。

 そんな換気に高い威力を発揮するのが、開閉式のサンルーフ(ムーンルーフとも呼称)で、国産車では1980年代に大流行しました。

 サンルーフはクルマの屋根の一部が開閉する装備で、1960年代にはキャンバス製のハッチが普及し、1970年代にはスチール製で屋根と一体化したかたちとなり、電動式も登場。

 その後、ガラス製ハッチが開発されると、大型化して開閉機構を持たないサンルーフ=グラスルーフも誕生するなど、多様化しました。

 なお、大型グラスルーフは数年前から再び注目されており、軽自動車やSUVに採用するケースが増えています。

 このようにサンルーフは、オープンカーほどでありませんが開放感があり、前述のように車内換気にも一役買っている装備です。

 しかしかつては、サンルーフ以外にもうひとつの形態として「ルーフベンチレーション」という装備が存在しました。

 ルーフベンチレーションは1983年6月に発売されたホンダ「バラードスポーツ CR-X」に、乗用車では世界初採用され、その後ほとんど普及することなく消滅してしまいましたが、いったいどんな装備だったのでしょうか。

※ ※ ※

 バラードスポーツ CR-Xには、世界初の電動アウタースライド・サンルーフが装備されて話題となりましたが、上位グレードの「1.5i」のMT車には、サンルーフ仕様以外にもルーフベンチレーション仕様が設定されました。

 ルーフベンチレーション仕様は屋根の後部にポップアップ式のハッチがあり、走行中に屋根の外板を伝ったフレッシュエアを取り込むエアダクトになっていました。

 室内から操作できるエアダクトから入った空気は、室内の内張りの中を通って、ルームミラーの近くにある吹き出し口から車内に出る仕組みで、風量は2段階の調整ができ、通常のエアコンの吹き出し口と同じく風向の調節も可能でした。

 1983年10月には1.5iにノーマルルーフ仕様が追加されたことから3種類のルーフ仕様が選べ、ルーフベンチレーション仕様はサンルーフ仕様(デジタルメーターとセット)よりも10万円安い価格に設定されていました。

 しかし、ルーフベンチレーション仕様は人気とならなかったためか、1984年10月のマイナーチェンジで、DOHCエンジンを搭載した「Si」の登場とともに廃止されてしまいました。

 以降はルーフベンチレーションを装備した乗用車は登場しませんでしたが、1994年に発売されたスバル初代「インプレッサ WRX STiバージョン」で復活。

 ワークスラリーカーで採用された(ラリーカーでは2か所に設置)ルーフベンチレーションを再現しており、屋根の前端のセンターにシンプルな構造のハッチが取り付けられていました。

 なお、インプレッサのルーフベンチレーションでは異物に対しての対策はなく、開けたままだと雨や虫などが室内に入ってしまう仕様でした。

 その後、2代目インプレッサ WRX STiにも採用されましたが、3代目では消滅し、国産乗用車からは消えてしまいました。

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 ルーフベンチレーションはかなりユニークな装備でしたが、バラードスポーツ CR-Xの時代ではエアコンが標準装備ではなくオプションだったことから、採用されたと思われます。

 また、インプレッサの場合は、当時のラリーカーでは当然ながらエアコンはなく、車内温度の上昇を抑えるには必須だったということでしょう。

 ちなみに、昭和から平成にかけての路線バスではルーフベンチレーションが装備されていて、見たことがある人も多いでしょう。さらに、かつてはトラックにも採用されていました。

 今では標準装備するクルマは見られませんが、キャンピングカーの換気扇用として、パーツ単体で販売されています。

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