大型連休などでは普段乗り慣れない乗り物に乗る機会がありますが、最近SA/PAなどさまざまな場所で「酔い止めドロップ」なるものが販売されています。医薬品ではないドロップとはどのようなものなのでしょうか。
■SA/PAの売店で見かける「酔い止めドロップ」とは?
乗り物に乗っていると「●●酔い」といわれる症状に見舞われることがあります。
大型連休などでは普段乗り慣れない乗り物に乗る機会がありますが、最近SA/PAなどさまざまな場所で「酔い止めドロップ」なるものが販売されています。
医薬品ではないドロップとはどのようなものなのでしょうか。
最近、高速道路のSA/PAで見かけることが増えた酔い止めドロップという商品。
NEXCOの高速道路はもちろん、首都高速の休憩施設、大黒PAにおいても噴水近くにあるローソンとPA売店の両方で販売されています。
大黒PAの売店で聞いたところ店員からは「私は飲んだことがないのでわかりませんが、とてもよく売れています」と答えてくれました。
筆者(加藤久美子)が酔い止めドロップに助けられたのは東京九州フェリーで横須賀~新門司間(約22時間)をクルマと共に移動しているときでした。
東京九州フェリーの航路はほぼ外海となっているため、穏やかな瀬戸内海などとは違って揺れるときはかなり揺れます。
2022年12月末に東京九州フェリーに乗った際、船酔いに苦しんだので売店に「酔い止め薬」を買いに行ったところ、「薬は置いていませんが、ドロップならあります」といわれ藁にもすがる思いで購入し、口に入れてみました。
「ドロップ」なので大きな期待はしていませんでしたが、これがよく効いた気がしました。
その後、2022年2月にも再び、東京九州フェリーを利用した際、お風呂のお湯が半分無くなるくらいに揺れましたが、そのときも持参していたドロップを早めに舐めたせいか、快適に過ごすことができました。
改めてどんなものが入っているのか、箱には「医薬部外品」と記されており、成分を見てみたところ「アスコルビン酸、L-メントール、アマチャ末、香料、精製白糖、水あめ、アラビアゴム末、β-シクロデキストリン、リボフラビン散、タルク」などと書かれ、成分には薬の成分はないようです。
登録販売者(一般用医薬品の販売を担う専門資格)育成の活動をおこなう、一般社団法人「くすりと漢方のスペシャリスト協会」代表理事の仲宗根恵氏に聞いてみました。
「成分を見る限り、乗り物酔いを予防する成分は配合されていませんね。
おそらく、ビタミンCとメントール、糖質などで清涼感がある甘酸っぱい味になっているのが効いている気分にさせてくれるのかもしれません。
酔い止め薬は、心理的影響を受けやすいと思います。
『とても効く』という口コミなどが、効果をあるように感じさせている可能性もあるでしょう。
実際、普通のアメやキャンディでも、口のなかに入れておくと酔わないとおっしゃるお客さまもいて、乗り物酔いのメカニズムは不思議です」
※ ※ ※
薬の成分は入っていないとのことですが、それでも効果を感じる人が多いから売れているのでしょう。
■酔い止めドロップは「NEXCO西日本」発案のものだった? 誕生の背景とは
では、酔い止めドロップはどのような経緯で誕生したのでしょうか。
酔い止めドロップの発売元で、大正時代創業の長い歴史を持つ大和合同製薬株式会社 代表取締役 増田善昭氏に聞きました
――ドロップでありながら、酔い止めに効果があるのはなぜでしょうか。
こちらは医薬部外品として承認された際に、酔い止めの効果があるとされた成分は「アスコルビン酸」(=ビタミンC)でした。
現在は、効能としてはとることができませんが、ビタミンCに酔い止めの効果があるとされてきました。酔い止めは気持ちの問題もあるのは確かですね。
さっぱりさわやかな味なので、口に入れただけでも不快感が緩和される効果があるかもしれません。
――開発の経緯を教えてください
7-8年前になりますが、NEXCO西日本さんと地元の商工会議所主催で「商談会」がおこなわれました。
そこで、NEXCOさんから「高速道路のSA/PAでは酔い止め薬の販売ができません。SA/PAの売店でも販売できる医薬部外品の酔い止めドロップのようなものは作れないでしょうか?」と打診を頂きました。
そして生まれたのが「酔い止めドロップ」です。
――どんなところで販売されていますか?
現在はNEXCO西日本エリアの_SA/PAの売店を中心に、NEXCO中・東日本のSA/PAでも販売されるところが増えてきました。
あとは、東京九州フェリーなどフェリーの中の売店やJR東日本のコンビニエンスストア「ニューデイズ」やドラッグストア、通販サイトでも購入できます。
――最初が高速道路、続いてフェリー内でも販売されるようになったのですね
はい。実は販売を始めた頃のパッケージにはフェリーの絵がありませんでした。
最近、フェリー内でも人気商品となって新しいパッケージにはフェリーのイラストが入っています
ちなみに、フェリーで販売されるようになったのは理由があります。
かつてフェリー内の売店は特例として医薬品を販売できていたのですが、近年、新造船が増え、また東京九州フェリーのように新たな航路に就航するケースが増えてきました。
新しい船になるタイミングで特例として販売できていた医薬品の販売が終了してしまい、通常の酔い止め薬を扱うことができなくなりつつあります。
医薬部外品である酔い止めドロップなら販売できる、ということもあって最近ではフェリー内の売店でも販売しています。
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NEXCO西日本との商談会がきっかけで誕生した酔い止めドロップが、今や全国の高速道路や鉄道の駅でも販売されるようになったようです。
この「商談会」はどのようなものなのでしょうか。西日本高速道路の広報課に聞いてみました。
「NEXCO西日本では平成28年から『ハイウェイ大商談会』をおこなっています。
これまで関西や四国、中国、九州地区で合計14回開催されており、地元の生産者の方々、企業の方々からは商談会の開催によって、ビジネスチャンスにつながると好評をいただいています。」
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確かに、最近では「高速道路初!」などのスイーツ類も多く見かけるようになり、定番のお土産類に加え、それまでSA/PAで販売されていなかった商品を目にする機会も増えており、酔い止めドロップもそこから始まっていたようです。
クルマ酔いや船酔いで苦しい思いをするとせっかくの旅行が台無しです。
酔い止め薬が販売されていない場所では酔い止めドロップを試すのも良いかもしれません。なお、効果には個人差があります。