新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで、2019年、2020年と外出が制限されていたゴールデンウイーク(GW)ですが、2022年の今年は2年ぶりに各地で観光客が増えたといいます。そんななか、沖縄では深刻なレンタカー不足がおこり、国産コンパクトカーのレンタカー料金が24時間で4万円以上というところもあったようです。なぜこのような事態が起きたのでしょうか。
■沖縄で那覇市以外の観光地に行くにはレンタカーが必須
3年ぶりに“制限なし”となった2022年のゴールデンウィーク(GW)。各観光地は、休日を楽しむ人々で賑わいました。
ところでこのGWに、ひときわ注目を集めたニュースがあります。それは、沖縄での「レンタカー不足問題」です。
GWはもちろん沖縄観光の繁忙期で、レンタカーの稼働率は高まります。
しかし2022年については、早い時期から「レンタカーが予約できない」「飛行機もホテルも取れてるのに、キャンセルするしかない」という声が上がる事態となっていました。
さらに一部のレンタカー事業者は、“売り手市場”であることをいいことに、コンパクトカーに1日(24時間)4万円以上の料金を設定するなど、異常とも思える事態となっていました。
さて、このような状況に至った背景には、沖縄特有の観光事情があります。
沖縄観光の目玉は何といっても“青い海”で、その海を楽しめるリゾートエリアはおもに西海岸に沿って沖縄本島北部まで点在しています。
その一方で、公共交通機関としての鉄道は、沖縄都市モノレール(通称・ゆいレール)が、那覇空港駅から那覇市の隣、浦添市にあるてだこ浦西駅まで、わずか17kmを結ぶのみです。
つまりモノレールだけで事が足りるのは、那覇市内に宿泊し、市内での観光を楽しむ人だけで、西海岸のリゾートへはそれ以外の交通手段の選択が必要となるのです。
そのニーズに対応するのが、空港から美浜、恩納、名護、本部など、西海岸の各リゾートエリアに運行する路線バスです。しかしすべてのリゾートホテルの前にバス停があるわけではなく、一部ホテルの宿泊客を除けば、使い勝手がいいとはいえません。
さらに沖縄美ら海水族館や万座毛、残波岬といった観光地は、こうしたリゾートエリアからやや離れたところにあり、クルマ以外の交通手段で訪ねるのはとても不便です。
そうした理由から、沖縄では「那覇空港でレンタカーを借り、滞在中の移動の足として使う」という旅行のスタイルが一般的となっています。そして那覇空港周辺には全国ネットの大手レンタカーから地元資本のものまで、10を超えるレンタカー事業者が拠点を置き、需要に応えていました。
そして各レンタカー事業者は近年、沖縄へのインバウンド観光客数増加を受け、さらに台数を増やして対応していました。
■高級輸入車のレンタカーが目立った2022年GWの沖縄
しかし2020年春、新型コロナウイルス感染症が世界を直撃し、人々の移動は制限されます。
2018年度に1000万人を超え、過去最高となった沖縄県来訪の観光客数(沖縄県発表入域観光客数)は、翌2019年度には海外でのコロナ禍がインバウンド観光客数に影響し、約947万人へ減少します。
さらに2020年度には国内での感染拡大が本格化したことで、約258万人へと7割以上の減少を記録。2021年は増加に転ずるものの、その数は約327万人で、コロナ禍前の3分の1にも届いていません。
こうした観光客数の減少でレンタカー需要も激減し、レンタカー事業者は手元資金の確保と経費の削減を目的に車両を売却、保有台数を減らします。
一般社団法人沖縄県レンタカー協会によると、コロナ禍が拡大する以前の2020年のGWシーズンの協会加盟事業者の保有台数は約2万5000台であったものが、2022年のGWには約1万5000台と、約4割減になっていたとのことです。
一方、新型コロナウイルスは、2021年末より、その主流が重症化しにくいとされる「オミクロン株」に置き換わり、政府の感染症対策はこれまでの「緊急事態宣言」「まん延等防止等重点措置」による“人流の抑制”から、行動制限要請を緩める“withコロナ”へと舵を切ります。そのため沖縄の観光需要も急回復することとなり、このGWにはいわゆる“リベンジ需要”も含め、来訪する観光客数が急増しました。
しかしこの短期間での増車は、折からの半導体不足による新車の納車遅れもあり、限定的なものに止まっていました。こうした結果が「レンタカーが予約できない」という状況を生むことになり、さらに料金の高騰にもつながりました。
全国の観光地がこれまで以上の賑わいを見せるなか、この“レンタカー不足”が沖縄でのみ大きくクローズアップされたのは、こうした観光事情が大きくかかわっていたことが理解できるのではないかと思います。
なおこのGWの沖縄の道路では、「MINIカブリオレ」、ポルシェ「カイエン」、さらにはベントレー「ベンテイガ」など、高級輸入車のレンタカーが数多く見られました。ひょっとして、「法外な料金を払うくらいだったら、ふだんは借りることのできない高級車を…」という利用者の思いがあったのかもしれません。