電動キックボードが普及して久しいですが、SNSでは道路の真ん中をノーヘルで走行する女子2人が話題となっています。果たしてこの場所を電動キックボードが走行することは問題ないのでしょうか。
■え?こんなところに電動キックボード女子2名…問題ないの?
首都高速湾岸線の有明IC近くの湾岸道路(国道357号線)で撮影された写真には、風になびくスカートを履いた女性らしき2名が電動キックボードに乗る姿が写っています。
ヘルメットの着用はなく、周囲はクルマの交通量が多い場所。この写真がSNSに投稿されたのは5月半ば。16万件近いいいね!3万件以上のRTが集まりました。
一見、「このような危険な場所を走っていいのか」と疑問に思いますが、果たして問題なのでしょうか。
結論としては現在、電動キックボードは原付と同じ扱いで走れる場所は車道のみです。
ヘルメット着用は必須で原付以上の免許が必要です。写真の電動キックボードは全国23の自治体で電動キックボードのシェア事業を展開しているLUUPのシェア電動キックボードで、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」(経済産業省)としてヘルメットの着用が任意となり、自転車通行帯の走行などが許可されています。
つまり本来なら「原付」扱いとなる電動キックボードですが、特例として「小型特殊」扱いとしてヘルメット着用は任意、最高速度は原付が30km/hのところ15km/hまでしか出せない設計となっています。小型特殊以上の免許が必要です(原付免許では運転できません)
写真を撮った「ろくりんさん(@RockCircle6)」に話を聞いてみました。
――どのような状況で撮影されたのでしょうか。
「首都高有明出入口に近い湾岸道路(国道357号)に合流する側道の信号待ちをしていたときに、湾岸道路側からからいきなりスカート姿の女性が乗る2台の電動キックボードが出てきました。
近くにいたクルマが40km/hから50km/hで走るなか、電動キックボードのスピードは自転車よりも遅い印象でした。
周囲の交通との速度差や電動キックボードとクルマの体格差にビックリして、安全性への疑問からとっさに写真を撮りました」
――SNSではスゴイ反応でしたね。どのようなコメントがありましたか?
はい。最初は個別に対応していましたがあまりの反響で対応しきれなくなりました。
安全性への疑問を感じる声が1番多かったですが、違法行為だと勘違いされている方や、逆に何が問題なのかわからないという人もいらっしゃって、車側との感覚の違いに驚きました。
LUUPさんも違法行為への対応は苦慮されている様子が見えますが、まだ抜本的な対策ができてるとはいえなさそうですよね。
※ ※ ※
確かに投稿へのコメントを読むと、電動キックボードの現行ルールに関してカン違いや誤解をしている例も多く、なかには2022年4月19日に成立した電動キックボードに関する「改正道交法」(時速20km/h以下なら免許・ヘルメット不要。ナンバーや保安部品は必要など)が、すでに「施行」されたと勘違いしている人も散見されました。
電動キックボードを販売する業者でさえも、勝手に「規制緩和対応第一号!」として販売している例も複数存在します。
■LUUP利用者数は、なんと「数万人規模」
最近、メディアの報道番組においても、ルール無視の無法電動キックボードの違法行為が映像と共にたびたび取り上げられています。
映像のなかの違法行為は8割前後がLUUPのシェアボードという印象です。LUUPに登録している利用者は数万人規模とのこと。
予想外に多い数字で驚きますが、事業を展開するLUUPはこの状況をどのように思っているのでしょうか。LUUPの広報担当者に聞いてみました。
――SNS投稿の画像で走行しているエリアは、走行禁止区域ではないのですか?
画像で示されている道路は国道357号線とのことですが当該道路は一般道であり、小型特殊自動車は走行可能であると理解しております。
実証実験下における走行禁止道路は、認定を受ける際に、警察庁や地元警察、自治体による指示のもと設定しています。
しかし、走行が危険と考えられる道路の形状や特徴などについては、しかるべく注意喚起も検討したいと考えております。
――シェア電動キックボードを利用するには交通ルールに関する10問のテストに全問正解することが必要ですが最初から内容は変わっていませんか?
10問のテストの内容に現時点では変更はございません。テストは、警察庁等の関係省庁に監修いただいており、電動キックボードの実証実験に参加している全事業者が同じ内容のテストを実施する必要があります。
そのため、内容が変更される場合は関係省庁との協議のうえ、全事業者のテストが一斉に変更される形となります。
テストの内容や実施回数などは関係省庁と協議をしながら、必要に応じて今後見直しを図っていきたいと考えております。
また、道路交通法の改正に伴い新しい走行ルールが適用されるタイミングにおいては、内容を一新する必要が今後でてくるであろうとも考えております。
――メディアで報道されているLUUP利用者の悪行を見ると、とても道交法を理解しているとは思えません。歩道や横断歩道を乗ったまま走行するなど非常に危険です。法令遵守の強化は考えていらっしゃいますか?
ご指摘の通りLUUPの電動キックボードに関して、前述のテストを受けていただいているにも関わらず、一部の悪質な利用者による違反行為が散見されています。
この現状については極めて残念であると同時に重く受け止めており、関係省庁とも協議をしながら、また業界全体としてより一層安全対策を強化していく考えです。
また、4月25日にコーポレートサイトと全ユーザー向けのメールにて、注意喚起をおこなっております。
安全対策の強化について今後もさらなる対策の実施を検討し、真摯に向き合う所存です。
――LUUPの電動キックボード利用者による違法行為を見かけたらどうすればよいですか?
まずは警察への通報をお願いしております。そのうえで、弊社にもご連絡をいただければ警察と連携し、重大であると確認できた違法行為の際にはアカウント凍結などの措置をおこなっています。
※ ※ ※
電動キックボードのルールに関しては、2022年4月19日に改正道交法が成立(施行は2024年春頃)した関係でよりいっそう複雑で多くのカン違いが発生する状況になっています。
・改正道交法が施行されるまでは、電動キックボードは原付扱いで車道を走行しナンバー、ヘルメットが必要
・LUUPをはじめとした特例事業者のシェア電動キックボードは小型特殊扱いでヘルメットは任意。
・いずれの場合も歩道、横断歩道、公園内を乗ったまま走行するのは不可
・ナンバーがない電動キックボードは工場の敷地内など私有地のみでの走行なら可
※ ※ ※
今後、電動キックボードを買おうとしている人や、シェア利用を考えている人は改めて現在のルールを確認しておいてください。