昨今では、新車の長期化する納期が問題となっています。そうしたなかで、新車&中古車で当日納車は可能なのでしょうか。
■クルマはディーラーに行った当日に購入できる?
「今すぐ手元にクルマが欲しい!」
そんなことを考えたことのある人もいるかもしれませんが、販売店で契約した当日にそのクルマに乗って帰ることは現実的に可能なのでしょうか。
「すでに自分の愛車を売却してしまい、手元にないけどクルマが必要になった」、「転職や転居でいますぐ自分のクルマが必要になった」というような状況に陥ることがあるかもしれません。
関西圏にある国産メーカー販売店の担当者は「過去に展示してあるクルマを『即日納車して欲しい』という要望を受けたこともありますが、丁重にお断りしました」と話しています。
また、首都圏にある別の国産メーカー販売店の担当者は、ディーラーで当日クルマを購入することができるかについて「販売店では、新車・中古車問わず、基本的にその場で納車することは不可能に近いです」といいます。
続けてその理由についてこの担当者は以下のように話します。
「クルマの購入にはさまざまな手続きが必要になります。
例えば、車庫証明書を警察に申請したり、お客さまの名義で車検証を作るために、ナンバーを取得したりしなければいけません。
また、ローンを組む場合には審査があるので、さらに時間がかかってしまいます」
販売店で新車を購入する場合、見積もりを取り、購入するクルマ(グレード・オプションなど)を決め、必要な書類を用意してから契約となります。
必要書類には、車庫証明書(一部の地域をのぞく)や自賠責保険証などが必要になります。
なかでも車庫証明書は、クルマを保管しておくスペースを管轄している警察署の窓口で発行の手続きをおこなわなければならないため、少し手間がかかります。
また、車検証を発行するには、クルマの車体番号やナンバーが必要となり、オプションの取り付けと同時にナンバープレートを取得しなければいけません。
この際、希望ナンバーを取得する場合には、さらに手続きの時間がかかってしまいます。
そして契約をして新車登録が完了したら、支払い方法を決め費用を支払います。
支払い方法には、現金一括、ディーラーローン、銀行系ローン、自社ローンなどがありますが、前述したようにローンは審査が通過するまでに時間がかかる場合があります。
ローンにもよりますが、その日に審査結果がわかるパターンもあれば、1週間ほどかかってしまうパターンもあるようです。
これらのさまざまな手続きを踏まえると、契約をしたその日にクルマを手に入れることはなかなか難しいことであるといえるでしょう。
前出の首都圏の担当者によると「通常、最短での納車は3、4週間」であるといい、昨今の新車市場では半導体不足や生産体制の問題から納車まで半年から1年かかることも多いようです。
■中古車販売店なら、その日のうちに乗って帰れるケースも?
前述のとおり、新車の販売店ではその日のうちに新車を手に入れることは事実上不可能です。
常識的に考えても当然といえば当然ですが、一部の中古車販売店では「乗って買える」ことが可能なケースもあるようです。
そのカラクリとは、名義変更手続きをユーザー自身がおこなうというものです。
つまり、中古車販売店側でおこなうのはクルマの受け渡しのみであり、その点では知人や友人からクルマを譲ってもらうときの流れと同様です。
実際、中古車販売店のなかにはその日のうちに乗って帰れることをウリにしている店も存在しており、一定の需要があるようです。
ただし、道路運送車両法では、車両の譲渡がおこなわれてから2週間以内の名義変更が義務付けられているため、名義変更をしないまま乗り続けることは違法行為に該当します。
また、任意保険への加入もすぐにはできない場合もあるため、事故のリスクへの対応にも注意が必要です。
そのため、よほどの事情がない限りは、中古車でも目安として3、4週間は見積もったほうが無難です。
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全体的に納期が長くなっている昨今の新車事情を見ると、たしかに「すぐ乗れる」というのは大きな価値といえます。
また、リース会社のなかには「即日納車が可能」というところもあるようですが、いずれにせよさまざまな条件などがあるため、検討は慎重にしたほうがよいかもしれません。