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なぜクルマが勝手に動く? 聞き慣れない「自然発車」現象で運転手が被害に遭う? 対策はどうする?

くるまのニュース 2022年6月21日 10時10分

普段あまり聞く慣れない「自然発車」という現象。近年はこの自然発車を要因とした事故が増えているといいます。その被害に遭うのは運転手が多いようですが、この事故は一体なぜ起こるのでしょうか。

■クルマが勝手に動く!? 自然発車って何?

 クルマを駐車した後に起こる事故のひとつである「自然発車」。
 
 ドライバーが巻き込まれることが多いといわれるこの事故は、一体なぜ起こるのでしょうか。

 自然発車とは、警察が人身事故を取り扱うときに作成する「交通事故統計原票」(交通事故のデータ収集を目的とした調査票)で定義されている言葉のひとつです。

 それによれば「運転手の運転行為以外の原因で車両等が動き出した事によって発生した交通事故」のことをいいます。

 警察署の担当者によると「運転者のブレーキが甘いことにより、自分の意図に反してクルマが勝手に発進する」という自然発車。

 交通事故総合分析センターのイタルダインフォメーション「交通事故分析レポート」によれば、2009年(平成21年)から2018年(平成30年)の10年間でこの自然発車による交通事故が2352件発生しています。

 絶対数こそ少ないものの、内訳は重傷事故が387件、軽傷事故が1803件、そして死亡事故は162件も発生しています。

 決して多いといえない事故形態の自然発車ですが、交通事故全体の死亡事故率が0.8%なのに対し、自然発車による死亡事故率は約11%と格段に高いことがわかっています。

 死亡事故率が高い自然発車ですが、自然発車によって具体的にどのような事故が発生しているのでしょうか。

 前出の担当者は、自然発車による事故について「ドライバーがクルマを降り、何らかの理由により動き出したクルマに気づき、止めようと努力したものの轢かれてしまったり、クルマが勝手に動き出し、そのまま電柱や壁などに挟まれてしまうといったケースは多い」といいます。

 前述の同資料によると、自然発車による歩行者の死亡事故件数が101件なのに対し、運転手が死亡した件数は132件となっており、運転手が巻き込まれることが多い事故であることもわかっています。

 また、重たく大きいトラックに発生しそうな自然発車ですが、同資料によると自然発車の人身事故を車種別で表した場合、乗用車が1192件、貨物車が1125件とほぼ同数となっています。

 死亡事故件数だけでいえば、貨物車は乗用車の62件に比べて約1.5倍の91件になっていますが、重量が重い貨物車だけではなく乗用車にも起こりうる身近な事故といえるでしょう。

 ちなみに、前出の担当者は自然発車が起こりやすい状況について「上り坂や下り坂などの勾配で起こりやすい現象となっています」と話します。

 勾配3%以上の坂道で発生しやすいとされていますが、一見平坦な駐車場に見えても、わずかな勾配があるかもしれないので注意が必要です。

■自然発車の対策法はあるの?

 重大な事故に繋がりやすい自然発車ですが、対策方法はあるのでしょうか。

 前出の交通事故総合分析センターの調査によると、自然発車による交通事故の原因は、車両整備不良などの車両的要因はわずか1%、環境的要因があったのは4%、全体の8パーセントにしか及びません。

 つまり、残りの約92%が不適切なブレーキ操作などといった操作上のミスによる人的なものだったことが判明しています。

 また、自然発車の事故を起こした人の割合にもある特徴があります。

 交通事故全体における事故を起こした人の年齢構成は、運転歴の浅い20代が多く、そこから高齢になる事に減少していく傾向にあります。

 しかし、自然発車による人身事故の年齢構成は、50代から70代の割合が高く、そのなかでも60代の割合が1番高くなっています。

 さらに、自然発車事故における免許取得経過年数の割合は、なんと免許取得後10年が経過したベテラン運転手の割合が全体の83%を占めており、死亡事故や重症事故になると90%前後です。

クルマが動かないようにタイヤ止めも有効

 このことから、クルマの運転に慣れている人ほど起こしてしまう可能性が高いといえる自然発車ですが、自然発車の対策について、前出の担当者は以下のように話します。

「対策方法には、当然ブレーキをきちんとかけることが一番です。そのうえで、さらに車止めのような滑り止めを取り付けて防止するのも、対策のひとつです」

 最新のクルマではボタン式の電動パーキングブレーキが増えていますが、手動のサイドブレーキや踏み込み式のサイドブレーキを採用しているクルマもまだまだあります。

 手動のサイドブレーキは人力でブレーキを引く必要があるため、緩くかけてしまわないように注意や確認が必要です。

 マニュアル車の場合は、勾配のある場所に駐車する際、サイドブレーキだけでなく、上り勾配ではギアを1速に、下り勾配ではギアをリバースに入れることも対策に繋がります。

※ ※ ※

 とはいえ、いくら対策をしていても、自然発車の事故が起きてしまう可能性は少なくありません。

 そういうときは、動き出してしまったクルマを無理に止めようとせず、事故に巻き込まれないようにすることが大切です。

 また、定期的にサイドブレーキの点検をすることも自然発車事故の防止に繋がります。

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