関越道の起点・練馬ICは一般道の目白通りと接続しています。東京のほかの放射状に伸びる高速道路と同じように首都高速と接続する構想がありますが、現状はどうなっているのでしょうか。
■大動脈の関越道、だけど起点は一般道
東京を起点に放射状に延びる東名高速や東北自動車道などの高速道路は、いずれも首都高と接続しています。
しかし関越自動車道(関越道)は首都高とつながっておらず、東京都練馬区にある起点の練馬ICは一般道の目白通りからしかアクセスできません。なぜなのでしょうか。
関越道は練馬ICを起点に、新潟県長岡市の長岡JCTに至る246kmの高速道路です。途中で圏央道・上信越道・北関東道、終点の長岡JCTで北陸道とそれぞれ接続しており、首都圏と北関東・信越・北陸方面などをつなぐ重要な幹線の役割を果たしています。
2021年度の関越道全体の交通量は1日平均19万8681台。東京寄りの、東京外環自動車道(外環道)と接続する大泉JCT~所沢IC間だと、データが少し古いですが2015年度・24時間で9万8696台に上ります。
このように大動脈といえる関越道ですが、東京都心から向かうには、目白通り経由で練馬ICに向かうか、首都高速5号池袋線と外環道を経由して大泉JCTから関越道に合流するかの2択が一般的です。
しかし目白通りは市街地を通る一般道だし、一方の首都高は間に外環道が挟まって遠回りになるし通行料金もかかるし、となり決定打がありません。
首都高5号池袋線と接続する首都高速埼玉大宮線は、関越道や東北道と同じように東京から放射状に伸びていく路線ですが、最も東京寄り(美女木JCT~浦和南出入口)の2015年度・24時間の交通量は5万550台と、関越道の半分程度にとどまります。
「それなら池袋線を、埼玉大宮線ではなく関越道とつなげるべきだったのでは?」となりそうですが、実は、埼玉大宮線と関越道の両方につなげる計画がありました。
関越道につながる路線は「高速練馬線」といいます。
当初の構想は江戸川橋付近で池袋線と分岐して、神田川や目白通りに沿って練馬ICに向かうものでした。
池袋線の下りにある早稲田出口は、この分岐構想に基づいて用意されていた接続構造を転用したものです。上り本線や橋脚などにも新たな道路が接続できるような準備がしてあります。
■「高速練馬線」に対する国や地元の姿勢は?
しかしそんな高速練馬線の構想ですが、池袋線の渋滞に拍車がかかるとして高速練馬線の起点は、中央環状線に移されます。
国土交通省が2006(平成18)年9月に策定した「首都圏整備計画」では、東京中心部の道路整備に関して次のように記述しています。
「首都高速道路(中央環状品川線、中央環状新宿線、晴海線)、高速1号線(2期)、同練馬線、同都心新宿線、同2号線(延伸)、同内環状線、第二東京湾岸道路等について事業中の区間の整備を推進するとともに、その他区間の調査を推進する」
また、東京都は、2040年代に向けた都市づくりの方針や方策を示した「都市づくりのグランドデザイン」(2017年9月公表)で、整備の検討を進める高速道路として高速練馬線を挙げています。
首都高速のウェブサイトでは、首都高と関越道の接続について次のように説明しています。
「『首都圏整備計画(平成18年9月 国土交通省)』において、中央環状線と関越道を結ぶ『高速練馬線』として、調査を推進する路線に位置づけられていますが、都市計画等の諸手続がまだ行われていません。計画の具体化については、今後、国や東京都によって検討されていくものと考えています」
ちなみに、道路が通ることになる練馬区は2007年1月、高速練馬線について次のように求めています。
「都市高速道路第10号線(首都高速10号練馬線)や外環東名高速道路以南の整備など、従来の整備計画が棚上げになっている計画について、実現に向けた調査、研究を早急に進めること」
これは、外環道の関越道~東名間の計画が、それまでの高架構造から地下式に変更される際に出された意見のなかで言及された内容です。
このように高速練馬線は、国や都としては「整備を推進する」「整備を検討する」といった形で存続しており、地元の練馬区も実現に肯定的な姿勢を示していることが分かります。
しかし、具体的な動きはまだ見えていません。
周辺に目を向けると、外環道の関越道~東名間の建設が進行中です。
これが開通すると関越道へのアクセスルートが増えることから、都心直結ではないものの、池袋線や、練馬ICにつながる目白通り、笹目通り、環八通りといった一般道の混雑が緩和すると思われます。
高速練馬線の計画は今のところ足踏み状態が続いていますが、外環道が開通すると、検討の順番が来るのかもしれません。