神奈川県横浜市にて、日産「スカイラインGT-R NISMO(BNR32型)」(以下R32 GT-R)が盗難被害に遭うという事件が発生しました。限定500台のみが市販された貴重なモデルですが、どのような特徴があるのでしょうか。
■全日本ツーリングカー選手権出場のために作られた500台の「スカイラインGT-R NISMO」とは?
R32 GT-Rは1989年8月に8代目「スカイライン」の高性能モデルとして発売されました。
16年ぶりのGT-R復活、そして価格が約500万円ということで当時、とても大きな話題になりました。
当時の国産スポーツカーにおいては500万円という価格は大きなインパクトを与えるもので、多くのクルマ好きにとって憧れの存在でした。
およそ半年後の1990年2月には、R32 GT-Rに「NISMO」が限定車として追加されます。
限定車といっても、目的は全日本ツーリングカー選手権出場に合わせたグループA参戦マシンのホモロゲーションモデルとして全560台が生産されたものです。
車体番号はBNR32-100001から100560。このうち500台が市販され、残りはレース参戦のために使用されました。
標準のR32 GT-Rとの違いは、セラミックタービンから600馬力まで対応可能なメタルタービンへ変更され、エキゾーストマニホールドも専用品を装備。
快適装備であるエアコン、リヤワイパー、オーディオなどが排除されており、ABSとインタークーラーグリルも外され、標準車から30-80kg軽量化を実現して車両重量は1400kgまで落とされています。
エクステリアは、ボンネット先端に吸気流入量増加を目的としたフードトップモールを備え、フロントバンパーにも「ニスモダクト」と呼ばれる開口箇所を追加。
このほか、後輪タイヤ周りの整流を目的としたプロテクターや小型のリアスポイラーなども備えられています。
そしてこのR32 GT-R NISMOの活躍は世界中のレースファンを魅了し、数々の伝説を作って来たことでも知られます。
デビュー戦となる全日本ツーリングカー選手権においては1990年3月18日、西日本サーキットでの第1戦で鮮烈なデビューウィンを果たしたことを皮切りに、カルソニックスカイラインを代表とするGT-Rの強さを発揮。
全6戦で優勝を果たし、それまで世界最強とされていたフォード「シエラRS500」を全日本選手権から駆逐する結果となりました。
レースでの劇的な多くの勝利は日本以外ではほぼ発売されていなかったスカイラインGT-Rの知名度を全世界に知らしめることになります。
そして30年経った現在、R32 GT-Rに始まる「第2世代GT-R(R32・33・34)」の世界的な人気や異常なまでの価格高騰に大きく関わって来たといえるでしょう。
■2022年6月16日朝に横浜市内の月ぎめ駐車場から盗難された…「スカイラインGT-R NISMO」
この貴重なGT-R NISMOが2022年6月16日未明から朝にかけて、神奈川県横浜市港北区の月ぎめ駐車場から盗難されました。
所轄の警察はもちろん、オーナーの仲間たちも総出で盗まれたクルマを探しているところですが翌17日夜の時点で、いまだ発見はされていません。
盗難されたことはSNSで拡散されており、オーナーや友人たちのアカウントには盗難されたR32 GT-R NISMOと思われるクルマがナンバーを付け替えられて横浜市内で目撃された情報も届いているとのことです。
そうしたなかで、オーナーに盗まれた際の状況などを伺いました。
ーー盗まれた場所や時間を教えてください。
盗まれた場所は、神奈川県 横浜市 綱島駅付近の駐車場です。時間は、2022年6月16日0時から6時15分。
車両ナンバーは「横浜 330 や 2632(ナンバーは付け替えられている可能性大)」で、車体番号「BNR32-10●●●」です。
ーー盗難場所の状況は?
自宅すぐ近くの月極駐車場に停めていて盗まれました。発見した際、周囲に車部品の散乱はありませんでした。
クルマにはカバーを掛けていましたが剥がされて、タイヤロックは破壊されていました。
右リアから出ている牽引フックに取り付けていたチェーンロックも外されていました。
この駐車場は工場が隣接しているのですが、その工場から延長コードを使用して電源を取り、エンジンを始動させたと思われます。
ーーR32 GT-R NISMOは非常に貴重なクルマですがどのような方法で入手されたのでしょうか。
社会人になってからずっと日産車ばかり乗り継いできました。母が若い頃にGT-R NISMOに乗っていたこともあり、私は母のおなかのなかにいるときからRB26DETTのエンジンサウンドを聞きながら育ったことになります。(お母さまは現在、R35 GT-Rを所有)
私自身もR32 GT-Rに乗りたいと思い探し始めて数か月後に出会ったのが完全不動状態のR32 GT-R NISMOでした。
入手当時のエンジンはピストンが溶け、粉々になったバルブヘッドの破片がヘッドに固着している酷い状態のものでした。プロショップでエンジン載せ替えから蘇生作業をお願いしました。
ーーR32 GT-R NISMOはどのような仕様ですか?
NISMO製R1タービン、R33GT-R用のミッション(リビルト品)、インタークーラー、オイルクーラー、デフのオーバーホール、シャーシのリフレッシュ、オーリンズ製サスペンション、R35 GT-R用のブレーキキャリパーを装着。
そしてアルミホイールは17インチにこだわってRAYSの“TE37SL”を選択しています。
見た目はノーマルに近い状態にこだわって、ヘッドカバーをスカイライン オーテックバージョン専用のボディカラーである“イエロイッシュグリーンパールメタリック”にペイントしました。
そしてREIMAX製のフルステンレスマフラーを装着しています。
エンジンが不動だった状態からオーナーの「人生を掛けて」修復した大切な大切なR32 GT-R NISMO。もし見かけた人は、最寄りの警察署に連絡してください。