Infoseek 楽天

シームレスに速い! 最上級のスバル「レヴォーグ STIスポーツR」高性能ワゴンを選ぶ価値とは

くるまのニュース 2022年6月26日 16時10分

スバルのステーションワゴン「レヴォーグ」に待望の高性能モデルが追加されました。2.4リッターターボエンジンを積む「STIスポーツR」とは、どのようなモデルなのでしょうか。

■2.4リッターターボ搭載の最上級「レヴォーグ」登場

 スバルの世界生産台数は100万台前後と、規模感でいえば世界の自動車メーカーのなかでは下から数えたほうが早いのですが、知名度やブランド力となると、むしろ上位から数えたほうが早いでしょう。

 その理由は、やはりスポーツモデルの存在でしょう。

 1989年に登場した初代「レガシィ」以降、スバルは走りにこだわりを持ったメーカーとして知られています。

 その流れは現在もまったくブレていませんが、それをけん引するのが「WRX S4」「レヴォーグ」「BRZ」といったスポーツモデルです。

 昨今クルマを取り巻く環境は大きく変化しており、電動化やさまざまな規制などによりスポーツモデルへの風当たりが厳しい時代となっていますが、そんな時代にもかかわらず、どのモデルも途切れることなく次の時代につなげるためにスバルは努力をしています。

 今回はそのなかから、2021年にレヴォーグに追加された「STIスポーツR」について紹介します。

 このレヴォーグ STIスポーツRは、2020年の全面刷新から1年後に実施された年次改良(B型)で追加されたフラッグシップモデル。2.4リッター直噴ターボ(FA24)を搭載します。

 では、1.8リッター直噴ターボ(CB18)を搭載する「STIスポーツ」と何が違うのでしょうか。

 内外装ではSTIスポーツRをアピールする部分はわずかで、フル液晶メーターの左側にブースト計が追加された程度です。

 基本はパワートレインの追加なので差別化は最小限というのもわかりますが、STIスポーツに対して70万円近く高いのですから、オーナーだけの特権があっても良いのではないかと思います。

 例えば、エクステリアは専用加飾や専用デザインのアルミホイール、インテリアは専用メーター表示やレカロ製シート、ハーマンカードン製プレミアムオーディオなどのSTIスポーツR専用装備の設定があるなどすれば、より所有欲も増すのではないでしょうか。

 注目のパワートレインは、新型WRX S4にも搭載される「2.4リッター直噴ターボ(FA24)」と究極のCVTといってもいい「スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)」の組み合わせです。

 スペックは275馬力/375Nmと、CB18(177馬力/300Nm)に対して+98馬力/+75Nmの余裕がありますが、先代の2リッター直噴ターボ(FA20:300馬力/400Nm)と比べると減少しています。

 スペック重視の人はガッカリするかもしれませんが、実際に乗ると「数値」より「本質」を重視していることがわかります。

 具体的には、FA24はFA20のウィークポイントだった、アクセルを踏んだ際の応答性や過給の段付きを解消。ドライバーの操作に対して忠実かつ俊敏な加速をします。

 これは400ccの排気量アップを活かした実用トルク(とくに過給前のNA領域)の余裕と、ターボ制御の進化(電子制御エアバイパスバルブ/ウエストゲートバルブ)によるところが大きいです。

 体感的には、一瞬もたついた後にドーンと加速をするFA20に対して、シームレスな加速で気が付いたら速いFA24といった感じ。

 このエンジンに加えて、SPTが良い仕事をしています。SPTは「CVTの逆襲」をテーマに開発されたトランスミッションで、レスポンスやダイレクト感が極限まで高められました。

 その結果、CVTが苦手な直結感や小気味良さは、下手なATよりも高いレベルに進化。加えてドライブモード「スポーツ/スポーツ+」では、ステップ変速(8速)とスポーツ変速制御(Dレンジでも減速Gに合わせて自動でダウンシフトをおこなう)が採用されています。

 キレのあるフィーリングとシフトスピードは「お前はDCTか?」と思うレベルで、ズバリ「CVTであることを一切言い訳しないCVT」です。

 これらの印象から、STIスポーツRのパワートレインは「名を捨てて実を取る」進化だと筆者(山本シンヤ)は評価しています。

 ただ、現状のドライブモードはエンジン/トランスミッション統合制御なので、個別設定できるとユーザーの好みに合わせやすいかなとも思います。

※ ※ ※

 2.4リッターターボの燃費はどうでしょうか。

 高速道路では13km/Lから14km/L、一般道主体だと10km/L前後といった感じです。スバル車として見ると悪くはありませんが、同クラスのライバルと比べるともう少しがんばってほしいところとも思います。

 ちなみに、高速道路をエアコンOFFでエコランしてみたところ、19km/Lから19.5km/Lを記録しました。

 なお、1.8リッターターボはレギュラーガソリン仕様ですが、2.4リッターターボはハイオク仕様となっています。

■交差点でもわかる「よりスムーズかつ素直に曲がる」

 シャシ側はどうでしょう。ボディやサスペンション(ZF製の電子制御ダンパー)、タイヤ(ヨコハマ ブルーアースGT)などは、基本的にはSTIスポーツと同じだといいます。

 レヴォーグの企画当初から、2.4リッターターボの搭載を想定した設計であることは、いうまでもないでしょう。

 大きく異なるのはAWDシステムで、パワートレインの変更に伴い「アクティブ・トルクスプリットAWD(ACT-4)」から「VTD-AWD」へと変更されています。

スバル「レヴォーグ STIスポーツ R」

 VTD-AWDは、スバルでは高出力モデルに用いられるAWDシステムで、先代レヴォーグのFA20搭載モデルにも採用されているものです。

 簡単に説明すると、センターデフに複合遊星歯車を使用することで前後駆動力配分が45:55と、リア寄りの設定です。差動制限は電子制御多板クラッチ式LSDでおこないますが、STIスポーツRではドライブモード「スポーツ+」に、アクセルONのあいだ旋回性能重視(LSD効果を下げて差動制限を抑制)となる「四駆スポーツモード」が追加されています。

 STIスポーツRのフットワークは、正直に言えばSTIスポーツと比較して劇的な違いはありません。

 穏やかなのに芯のあるステア系、操作に対する応答性の高さ、クルマの動きの連続性の高さ、無駄なロールを抑えながらしなやかさを持つサスペンションなどが連続的に融合することによるハンドリングと快適性の高いレベルでの両立などは共通。

 その一方で、ステアリングを切り始めたときの「ノーズの入りの良さ」と前後バランスが変わったかのような「4輪で曲がる」感覚、さらに足の動きに「シットリ感」と「ストローク感」が増したことなどなど、クルマとしての質がより高まっています。

 さらにドライブモードの各モードの差が、よりわかりやすくなっているような気がしました。

 この辺りはACT-4(前後駆動力配分60:40で安定性重視)とVTD-AWD(前後駆動力配分45:55で旋回性重視)の特性の差はもちろん、車両重量の違い(STIスポーツに対して+50kg増)なども効いているのでしょう。

 ちなみに四駆スポーツモードは、サーキットなどのハイスピード&高G領域用と思われがちですが、交差点を曲がるようなシーンでもよりスムーズかつ素直に曲がってくれます。おそらく、差動制限の抑制によりフロントタイヤが「曲がる方向」に専念しやすくなっているからでしょう。

 その反面、厳密にいうと安定感/トラクションは若干、下がる方向になりますが、そもそも新型レヴォーグの基本素性が相当高いレベルにあるため、日常域ではまったく問題ありません。

 この四駆スポーツモード、ドライブモード「スポーツ+」だけでなく「インディビジュアル」で個別設定も可能なので、個人的には日常でも積極的に活用したいモードです。

 ただ、タイヤがシャシに対して柔らかな印象があり、それに起因するわずかなヨレ/ラグが、「頼りなさ」に感じてしまう部分がないわけではありません。

 欲をいえばもう少し良い銘柄に変更できると、クルマとしての総合的なバランスは高まると思われ、個人的には、ノーマルタイヤと同じヨコハマならアドバンスポーツV107、他銘柄ならミシュラン パイロットスポーツ5がお勧めです。

※ ※ ※

 スバルが考えるGT思想「より安全に/より快適に/より遠くに/より速く/より愉しく」のバランスが、より“真円”に近い仕上がりだと思います。

 高速道路で高度な運転支援をおこなう「アイサイトX」を装備した最上級グレード「STIスポーツR EX」の価格は477万4000円(消費税込)。スバル車としてはお高めですが、輸入車のプレミアムセグメントのステーションワゴンたちと比べるとむしろお買い得といえるでしょう。

この記事の関連ニュース