トヨタ「ランドクルーザー」は70年以上の歴史を誇る本格クロカンで、昨今の環境車シフトにおいては異端児ともいえます。なぜ昨今流行りのクロスオーバーSUVなどではない本格クロカンのランドクルーザーは「一人勝ち」といえる状態が続くのでしょうか。
■累計1000万台が裏付ける、ランクルの信頼性
日本では「納期4年待ち」という異例の長納期が話題となっているトヨタ「ランドクルーザー」。
ランドクルーザーが優れたパフォーマンスを持つモデルであることは疑う余地がありませんが、なぜこれほどまでに「ひとり勝ち」を収めているのでしょうか。
日本を代表するクロスカントリービークル(クロカン)であるランドクルーザーは、2021年に新型へとフルモデルチェンジを果たしました。
14年ぶりにフルモデルチェンジとなったランドクルーザーですが、2022年6月現在、日本国内では4年待ちという異例の長納期となっています。
昨今トレンドとなっているクロスオーバーSUVとは一線を画す、圧倒的な悪路走破性と耐久性を持つランドクルーザーは、日本はもちろん世界中で絶大な人気を誇ります。
とくに中東やオーストラリアでの人気は高く、生産されるランドクルーザーのほとんどがそうした海外の国や地域へと輸出されるため、相対的に日本市場への割り当て台数が少なくなっていることが長納期化の一因となっています。
日本では高級車としての性格も強いランドクルーザーですが、主要な市場である中東やオーストラリアでは、そもそもランドクルーザーでしか走れないような道も多く、趣味のクルマというよりは、生活必需品という位置付けとなっています。
例えば、オーストラリアでは地下1600mにある坑道や、兵庫県よりも広い牧場での移動のために、コスタリカでは標高3500mの急斜面にある畑で人参を収穫するためにランドクルーザーが利用されてきたといいます。
いずれも、クルマがなければ生活が成り立たず、もしクルマが故障してしまえば最悪の場合、死につながることもあるという環境です。
こうした環境では、デザインの好みや快適装備の違いなどはクルマを選ぶ際の基準としては二の次であり、圧倒的な悪路走破性と耐久性を持つこと、つまり、生きて帰ってこられることが優先されます。
実際、現在では170を超える国でランドクルーザーは販売されており、一部の地域では発売から50年以上が経過する40系のランドクルーザーが今でも現役で活躍しているといいます。
もちろん、ランドクルーザーも工業製品である以上、故障や不具合が発生してしまう可能性はゼロではありません。
しかし、1951年の初代発売から70年以上の歴史を持ち、グローバルでの累計販売台数が1000万台を超えるランドクルーザーは、過酷な環境下でも信頼できる数少ないクルマであるといえます。
こうした背景もあり、ランドクルーザーについてトヨタは次のように説明しています。
「世界各地で人の命や暮らしを支える、また、より豊かな人生を支える存在として『どこへでも行き、生きて帰ってこられること』を使命としてきたランドクルーザーは、その本質である『信頼性・耐久性・悪路走破性』を世界中のお客さまの使用実態に基づいて鍛えて進化させてきました。
それぞれの時代で『お客さまをはじめ、このクルマに関わるさまざまな人々に安全と安心をお届けすること』を目指しています」
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なお、2022年7月1日時点でトヨタはランドクルーザーの公式ページで「ランドクルーザーは、日本のみならず世界各国でも大変ご好評いただいており生産能力を大幅に上回るご注文をいただいているため、現在ご注文を停止させていただいております」とアナウンス。
人気の高まりやコロナ禍によるさまざまな影響で受注停止となっており、今後の動向にも注目されます。
■なぜライバル不在?「ランクルひとり勝ち」の背景とは
一方、ランドクルーザーのライバルといえる存在は決して多くありません。
国産メーカーの大型クロカンというカテゴリーを見ると、かつての「RVブーム」でランドクルーザーと並んで高い人気を誇った日産「サファリ」や三菱「パジェロ」は、サファリが2007年に、パジェロが2019年に国内仕様の販売を終了しています。
サファリは「パトロール」として中東などで現在でも販売が継続されていますが、パジェロは2021年をもって海外仕様の生産も終了しています。
また海外メーカーでは、ランドローバー「ディフェンダー」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」もかつては直接的なライバルといえる存在でしたが、それぞれ独自の方向性を打ち出しています。
ランドクルーザーをはじめとするクロカンは、「ラダーフレーム」と呼ばれる強固なフレーム構造を持ち、一般的な乗用車と共有できる部品も少ないことから、専用設計をおこない、開発も専用ラインを必要とすることがほとんどです。
一方で乗用車に採用されるモノコックボディは、ラダーフレームよりも素材が少ないゆえの低コスト化、ボディの共通化、さらにボディ剛性を高めることで走行性能(燃費なども)も高めることが出来ることなどもメリットが挙げられます。
こうした背景もあり、ディフェンダーは2019年のフルモデルチェンジでラダーフレームからモノコックボディに変更。Gクラスは、プレミアム化して富裕層に向けたビジネスを成立させました。
しかし、前述したように、クロカンは新興国などインフラ整備の整っていない国や地域でその真価を発揮するため、そうした国や地域をターゲットにするならば、極端に高価なクルマとすることはできません。
それらを解決するためには、できるだけ多くの台数を販売することでスケールメリットを得る必要がありますが、世界のあらゆる国や地域へと販売網を整備するのは、多くの自動車メーカーにとって簡単なことではありません。
さらに、環境規制が厳格化されている昨今では、燃費性能で不利なクロカンを新規開発することはもちろん、生産を続けること自体が困難というのが、自動車メーカーの本音といえそうです。
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優れたパフォーマンスとそれに裏打ちされた圧倒的なブランド力を武器に、そうしたニーズを一身に背負っているランドクルーザー。
現在は、ライバル不在の独走体制を築いており、今後もそうした圧倒的な人気は続いていくのでしょう。