ロシアがウクライナに侵攻したことにより、日本も含めて世界各国がロシアに経済制裁を課しています。しかしそんななか、日本からロシアへの中古車輸出はむしろ増えているようです。
■経済制裁でロシアへの中古車輸出はどうなった?
日本の企業も出資している天然ガスプラント「サハリン2」がロシアに取られそうになっている。
すでに日本の自動車メーカーもロシアの工場を閉めるなど、急激に経済関係は疎遠になりつつあると思って良いだろう。
そんな日露関係を受け、2022年4月上旬に全国紙などの大手メディアが「ロシア向け中古車輸出、9割減に悲鳴の事業者も。日本の中古車相場も下落」などと報じた。
多くの人は信じたと思うし、その後、訂正記事も出していない。しかし、実際に輸出された台数を見るとどうか。
ウクライナ侵攻が始まった2022年2月は1万4808台。このときは好調だったとしても不思議じゃない(2021年の月間平均は1万3520台)。
侵攻が始まり、自動車メーカーの撤退などが話題になっていた3月は1万1477台で、少し減った。ちなみに4月上旬の新聞記事は9割減と伝えています。
ウクライナ侵攻が始まったのは2月24日でした。4月上旬の記事なら、2月の数字だと古く3月の数字と思うのだけれど、1万1477台なら通常の変動レベル。どんな情報を見て「9割減」と報じたのだろうか。
しかもロシアへの中古車輸出が大幅に減少し、日本の中古車相場は下がったと報じるメディアはけっこうな数だったのだ(今でも検索可能)。
その後、ロシアへの輸出はどうなったか。
4月の中古車輸出台数は1万1208台。依然としてロシアが日本にとって一番のお得意さんとなっている。
4月といえばウクライナへの無差別攻撃も始まり、世界中から厳しく非難され始めた時期。そんななかでも日本の港からロシアへ輸出される中古車は通常業務だったということ。
大手新聞社が伝えた「ロシアへの中古車輸出激減」とはまったく違う状況のまんまです。
■新車同様の中古車がロシアへ数多く渡っている!?
さすがに5月になれば減るかとも思っていたら1万1630台。このままだと年間13万台規模になるため、2020年の12万6400台や、2019年の12万2500台と同じくらいの台数になるだろう。
そう考えていたら、現場はもっと驚くべき状況になっていた。オークション会場などから輸出される港までクルマを運ぶ仕事をしている人に聞いたのだけれど、仰天の情報です。
いわく、「ロシアへの中古車の輸出は増えています。以前と違うのは、バリもんの新車同様の中古車が多くなったことです。
私の地方では、元々ロシア向けを扱っていた業者が自社車だけでは手が回らなくなり、下請けにも輸送を委託している状況です。
中京地区の業者オークション会場では、5月に成約率がなんと過去最高の80%以上を記録。同じ年式でも、去年と落札価格が変わらない状況です」
早速チェックしてみたらその通りで、FOB(車両価格)は今までより30%程度も上がっている。
例えば2021年4月のFOBは57万1000円。2022年4月になると70万5000円。5月はさらに値上がりし、昨年の58万円に対し82万8000円になっている。
金額ベースでいえば過去最高といって良いほど。中古車相場全体の底上げになっているようだ。
もう少し詳しく調べてみたら、今やロシア国内では日本車も欧州車も生産していない。需要に供給がまったく追いつかないという。仕方なくお金持ちは高年式の中古車を購入する動きになっているということです。
この状況はいつまで続くだろうか。関係筋に聞いてみると、今のところ何の制約も掛かっていないという。やがて公表される6月の台数も好調かつ、FOBは高値を維持すると関係者はいう。
この件はどう考えたらいいだろうか。
乗用車は戦闘車両にするワケではない。ロシアに外貨を稼がせ、それで戦争の道具を調達できるということでもない。
むしろロシアの外貨(日本側はロシア通貨ルーブルでの支払いは拒否しているという)を減らす動きになっている。体力をジワジワ奪っているということ。
だからこそ日本政府も制限を掛けていないのかもしれない。