夏になるとビーチサンダルなどのラフな履物を履く機会が増えます。しかし、サンダルや下駄、ハイヒール等でクルマを運転すると違反となる可能性があるようです。運転中の靴のきまりはどのようになっているのでしょうか。
■サンダルでの運転は法令違反?
夏は、クルマで海や川にレジャーに行くという人も多くなります。
そうした水辺のレジャーでは、ラフなサンダルなどを履いていく人も多いでしょう。
足元も涼しく、軽くて便利なサンダルですが、運転をする際に適切といえるのでしょうか。
運転免許を取得する際には、自動車教習所に通う人も多いかもしれませんが、自動車教習所では、サンダルやハイヒールといった靴での運転は推奨されておらず、スニーカーなどが適切とされています。
サンダルやハイヒールといった靴で運転することについて、首都圏の警察署交通課の担当者は以下のように話します。
「クルマを運転するときは、アクセルペダルとブレーキペダルを正しく操作できる状態であれば問題はありません。よって、一概にどの靴がだめとはいえません」
警察担当者が話すように、道路交通法では運転時の靴について具体的な記載はなく、運転中のサンダルの着用が禁止されているわけではありません。
しかし「予期せぬ段差に乗り上げた反動でサンダルが脱げてしまう」、「ペダルに引っかかりブレーキが踏めなくなってしまう」など、かかとを覆っていないタイプの履物にはこのような操作ミスを誘発する可能性が考えられます。
そのため、地域ごとに定められる道路交通規則においては、サンダルなどの着用を禁止しているところもあります。
例えば、東京都の道路交通規則では第8条「運転者の遵守事項」において「木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのあるはき物をはいて車両等を運転しないこと」と記載しています。
また、大阪府でも道路交通規則第13条に「運転者の遵守事項」を定めており、「げた又は運転を誤るおそれのあるスリッパ等を履いて、車両を運転しないこと」としています。
同様の条文は、ほかの都道府県の道路交通規則にも見られ、地域によって「サンダル」「げた」「スリッパ」など、具体的な靴の記載がおこなわれている場合もあります。
いずれも、靴と足が密接に接していないタイプやペダルと靴の接地面積が少ないタイプであることが多く、そうした靴はペダル操作がじゅうぶんにおこなえないと認識されていることがわかります。
また、前出の警察担当者によると、交通事故などの際には、靴について確認をおこなうこともあるようです。
「交通事故が起きた際に、履いている靴が影響しているのではないかと判断された場合には、『どのような靴履いていますか?』と確認させていただくことがあります。
また、実際に靴を確認して、運転に支障が出る可能性があることが判明した場合には、地域の規定に則って取り締まりを受ける可能性もあります」(警察担当者)
自車の安全はもちろん、周囲を巻き込む危険性を考えても、運転時のサンダルやハイヒールは避けるべきといえます。
また、前出とは別の警察担当者によると「かかとが固定されないと、ペダルを踏む力の調整が難しいので運転時にはかかとが固定されている履物を履くことが望ましいです。またはハイヒールや厚底も踏む力の調整が難しいので避けたほうがいいでしょう」と話しています。
■靴の違いによって運転の危険性も異なる
また、運転にふさわしい靴については、JAFが2021年に実証実験をおこなっているデータもあります。
近年、ペダルの踏み間違いなどの誤操作による交通事故が注目されていますが、その背景には、靴の違いによる運転操作のしにくさも挙げられています。
そこで、JAFでは、靴の違いがどれほど運転操作に影響を及ぼすのか実験をおこないました。
結果として、サンダルで運転した場合では、足と靴の密接度が低く、ペダルの移動や操作をする際に脱げやすかったり、思ったようにペダルを踏み込むことができなかったり、ペダルに引っかかってしまう場面もあったようです。
このような靴では、急なアクシデントへの対応が遅れてしまったり、誤操作が起きたりすることが考えられ、運転に支障が出る可能性が高いといえます。
また、ハイヒールでのクルマの運転は、ヒールの高さ分だけ、踵の位置が上がってしまい、つま先だけの操作になりやすいという結果も出ています。
さらに、げたに関してもサンダルと同様に、ペダルの移動や操作をする際に脱げやすく、運転には適さないという結果になっています。
こうした実験の結果を考慮しても、クルマを安全に運転するためには、足が固定されていて脱げにくく、靴底がなるべくフラットな靴を選ぶことが望ましいでしょう。
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サンダルやハイヒールといった靴で運転することは、周囲の交通にも危険を及ぼす可能性があります。
おしゃれを楽しむのは、もちろん個人の自由ですが、運転の際にはスニーカーに履き替えるなど、安全に配慮するようにしましょう。