新車を買う際「このクルマが欲しい」と特定の車種を決め打ちで商談するのは、危険だといいます。その理由について詳しく解説します。
■決め打ちのつもりが…ライバル車のほうが気に入るケースもよくあること
欲しいクルマが決まっていた場合、その車種を取り扱っている新車ディーラーでどんどん話を進めたくなるところ。
では、欲しいクルマが明確ならば、比較検討など必要ないのでしょうか?
結論からいえば、たとえ欲しい車種が明確に決まっていても、ライバル車との比較検討は絶対におすすめします。
手間をかけて比較検討することで、そのクルマの商品価値を見いだすこともできるので、より一層の納得と満足につながるでしょう。
例えばトヨタ「ヴォクシー」を本命で検討していたとしても、ライバルの日産「セレナ」やホンダ「ステップワゴン」、さらにヴォクシーの兄弟車「ノア」なども必ず見てみましょう。
それぞれのモデルで、乗ったときの見晴らしや乗り降りのしやすさ、シートアレンジなどの基本的な装備・機能も異なり、オプションでつけられるものも違ってきます。
実車を見比べてみたら「ライバル車のステップワゴンの方が良かった!」ということもよくあります。
もちろん、本命の「ヴォクシーのここが良い」と思い、決心が固まることもあるでしょう。
各モデルそれぞれに推しポイントが見つかることがあると思います。
そして比較することで、もうひとつのメリットが得られます。
新車ディーラーや担当スタッフとは、一度購入するとその後もメンテナンスなどで長いお付き合いになります。それだけに、担当の営業スタッフとの相性も重要です。
複数メーカー・販売店の間で比較することで、クルマの違いだけでなく、ショールームや担当の営業スタッフの印象や相性のよさなども同時に検討できます。
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クルマ選びは、サイズや用途、デザインで決めることもあれば、予算から決めていくこともあると思います。
東海エリアで新車ディーラーの営業スタッフとして働くAさんは、次のように教えてくれました。
「もし予算面で候補を出したいならば、予算オーバーかなと思っても、同時にひとつ上のクラスのクルマも比較してみることも大切です。
例えば、コンパクトミニバンのトヨタ『シエンタ』で検討している場合は、ライバルのホンダ『フリード』と比較検討するのは基本ですが、さらに同メーカーのノアやヴォクシー、他メーカーのステップワゴンやセレナなど、サイズや価格が上回る上級ミニバンも調べてみましょう」
その理由について、Aさんはこう話します。
「新車ディーラーの決算期や、モデルチェンジなどが控えている場合など、予想以上の値引きが出せることがあります。すると価格差のあった上位モデルでも、当初の予算にグッと近づくこともあるのです」
また、月末なども値引きが期待できることがあるといいます。
営業スタッフが目標まであともう少し、というときに、値引きをしてでも契約につなげるといった交渉をしてくることがあるからです。
予算に近づけば、考えてもみなかった上位モデルも、候補のひとつにあがることもあるでしょう。
■しかし「比較しすぎ」で迷宮入りするケースも…
しかし気をつけなければいけないのは、比較しすぎないことです。
多くの車種を比較するのはとても大変です。複数の新車ディーラーへ出向いて、その都度営業スタッフに要件を伝え、質問に答えたりやんわり断ったりとするのは、肉体的にも精神的にも疲れてしまいます。
また多くのクルマを見すぎて、結局どれが良いのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。
ですから、商談の早い段階で「本命車」と「ライバル車」の2~3モデル程度に絞っていきましょう。
比較の方法はもうひとつあります。同じ車種を、別の新車ディーラーと比較をする方法です。
同じ車種を取り扱っていても、同じ地域内で資本形態が違う複数の新車ディーラー(販売会社)があるケースがあります。
例えば「XX日産」と「日産プリンスXX」(XXには都府県名や地域名が入る)は、まったく同じ日産車を取り扱っていても、別の販売会社というケースが多いです。
ただし注意しておきたい点があります。
同じ新車ディーラー、たとえば「トヨタカローラXX販売」A店とB店で比較することは避けましょう。
前出のAさんはこのようにいいます。
「来店客が『いつ来店されこのような車種で商談をした』という情報は、販売会社内で情報共有されています。無駄な社内競合を防ぐためのもので、A店のあとB店に訪れても、あとのB店では商談はできないルールがあるのです」
近年は店舗や販売会社の統廃合も進んでいるため、近隣の2店舗が知らぬ間に同一販売会社へ変わっていた、というケースも最近増えています。
ショールームへ行く前に、ホームページなどで事前に確認をしておいたほうが間違いありません。
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同一メーカーでも別の販売会社と確認できれば、同じ車種の比較検討ができます。
見積もりの際にグレードや装備、オプションなどを同じ条件にすれば総支払額の比較もできますし、他店にはないオリジナルのオプションを取り扱っている場合もあります。
また昨今は、半導体不足や海外の部品供給の遅れが深刻化していて、新車の納期も長期化しています。
販売会社で事前に在庫として押さえているクルマもありますが、色やグレードは各ディーラーでそれぞれ違うので、もしかすると納期が早まることがあるかもしれません。
どうしてもこのクルマが欲しいと特定の車種だけで考えたい場合に加え、ライバルに該当するような車種が他社モデルに少ないケースでも、この方法で比較検討してみるのがよいでしょう。
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さらなる裏技として使えるのは、隣接する都府県へ出向いて比較検討する方法。県境近くに住んでいる人におすすめです。
購入後にメンテナンスをしていくことを考えると、普段クルマを使用する地域に近いところで購入する方が便利ですから、県境があまり近くない場合には避けてください。
また職場が自宅と別の都府県の場合は、職場近くの新車ディーラーで購入するのもひとつの手です。
クルマの購入から納車には、ただでさえ時間もかかります。契約してからの書類手続きも多いので、営業スタッフとのやりとりも多くあります。
「わざわざ何か所も足を運んで比較検討するのなんて面倒くさい」と思うかもしれません。
しかし比較することで、欲しいクルマを気に入った装備と納得のいく金額で、しかも相性の良い営業スタッフから購入できたら、それはきっと大きな満足へつながります。
せっかく新車を買うなら、少し手間ひまをかけてみてかしこくクルマを購入しましょう。