燃費向上を目的に多くのクルマに搭載されているのが「アイドリングストップ機能」ですが、これが突然、作動しなくなることがあるといいます。原因は一体何なのでしょうか。
■動かなくなる原因の多くはバッテリー?
クルマが信号待ちなどで停車しているとき、もしくは停車直前にエンジンの稼働を自動で一旦停止させ、アクセルを踏むとエンジンが自動で再始動する「アイドリングストップ機能」。
アイドリング時の無駄な燃料消費を抑えることから普及したエコな機能ですが、軽自動車をはじめとしたさまざまな車種に広く採用されています。
そんなアイドリングストップ機能が、ある日突然に作動しなくなることが多数報告されているようです。どのような原因が考えられるのでしょうか。
今回、話を聞いた埼玉県の整備工場で代表を務めるF整備士のもとには、「故障か?」という問い合わせが度々あるそうです。
「アイドリングストップが突然作動しなくなる原因の多くが『バッテリーの電圧低下』だと思います。
エンジンの始動には多くの電力と電圧が必要です。バッテリーに十分な電力が残っていないと、ECU(エンジンコントロールユニット)などに記録されたプログラムが電力不足と判断しアイドリングストップを作動させないようにするんです」
とくに夏はカーエアコンの稼働率も高く、多くの電気を消費しています。オルタネーターが十分に発電できないような走行を繰り返す市街地走行がメインの場合、すぐにバッテリーの電圧が下がってしまうのだそうです。
「一部のアイドリングストップ採用車には、メインバッテリーのほかに補機用バッテリーを搭載することもありますが、最近では少し(容量が)大きめのメインバッテリーですべてを賄うことが増えています」(F整備士)
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アイドリングストップは、エンジンを稼働して時速20km以上で走行後、信号などでクルマを停止させるための操作(アクセルペダルを離しブレーキペダルを踏む)によって停止後約1秒でエンジンを自動的に止め、再度ブレーキペダルから足を離したりステアリングを動かしたりすると、約0.4秒でエンジンが再始動するというものです。
また現在では、時速8km以下の渋滞などにハマって、ノロノロと前進&停止を繰り返している場合は、システムが状況を判断し機能のON/OFFを自動で判断するようになっています。
アイドリングストップのメリットは、エンジンを停止させることで不要な燃料の消費や排出ガスを抑制できることです。
約10分間の停車で0.15リットルから0.20リットルの燃料の節約と、70gから100gの排出ガスを削減でき、数値的にも騒音的にも好結果が出やすいといわれています。
一方で懸念されるデメリットとしては、エンジンの再始動におけるバッテリーの電力消費と負荷の高さがあります。
現在のクルマはセンサーを多数搭載しており、それらが電力で稼働しています。
そのうえで、クルマを動かすときの電力消費はエンジンを始動させるときがもっとも大きいといわれており、何度もエンジン再始動させることでバッテリーの電力を消費してしまいます。
さらに走行中に発電するオルタネーターがうまく稼働できていない状況やセルモーターへの負担も加わり、バッテリーの劣化も早めてしまう側面もあります。
そのため、最近ではアイドリングストップを使用しなくても燃費の良いエンジンを搭載することで、アイドリングストップ単体での採用を取りやめる車種も増えていきているのです。
■意外と厳しい! アイドリングストップの作動条件
アイドリングストップを作動させるためには、ECONスイッチがON、運転席のシートベルトを装着、冷却水やミッションオイルの温度が適正範囲内、エンジンの始動後5km以上の走行など、さまざまな条件を満たしている必要があるといいます。
また、気づかぬうちにECONスイッチがOFFになっていたり、リアのデフォッガー(曇り取り)のスイッチが入ってしまっていたりしても作動しないそうです。
「さらにミッションは『D』、ブレーキはちゃんと踏んでいることも条件です。しかしブレーキペダルを踏みっぱなしということは、リアのブレーキランプを点灯させていることでもあります。
弱ったバッテリーにとって、ランプの点灯+エアコンやオーディオの使用など電気の使用量が多い状況はかなり厳しいものがあります」(F整備士)
また、急な坂道で停車した場合や、エアコンの風量が多い状態、さらに外気温が40度以上の高温のときはアイドリングストップが作動しません。アイドリングストップが作動するにはさまざまな条件が必要のようです。
「最近では、不必要なアイドリングストップを嫌い、スイッチでキャンセルしてしまう人も多いです。
実際に弊社にお越しになるお客さまの多くがアイドリングストップをキャンセルさせています」(F整備士)
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メリットとデメリットが混在するアイドリングストップですが、年々厳しくなる燃費基準に適応するために、メーカーとしては搭載しておきたい機構なのでしょう。
しかし、やはりバッテリーには大きな負荷をかけてしまうものであり、F整備士によるとアイドリングストップの有無だけではそれほど大きな燃費の差が出ないといいます。
それよりも、夏場などはナビやオーディオ、カーエアコンなど電気を消費する装備を常時使用せずに、状況に応じて電装品の電源をオフにするほうがバッテリーにとって良いのかもしれません。