夏休みやお盆は、帰省や長時間のドライブなどにより、高速道路を利用する機会も多くなる時期ですが、突然睡魔が襲ってくることがあります。「高速道路催眠現象」と呼ばれているこの現象はなぜ起きるのでしょうか。
■高速道路催眠現象ってなに? なぜ突然眠くなる?
高速道路などを走行していると、突然の睡魔に襲われることがあります。
長距離を運転する場合には相応の疲労が溜まるものですが、なぜ突如として意識がもうろうとしたり眠気に襲われることがあるのでしょうか。
この現象は、「高速道路催眠現象」と呼ばれ、1920年代のアメリカで提唱されたもので、別名「ハイウェイ・ヒプノーシス」とも呼ばれているようです。
これらは高速道路走行中に突然睡魔に襲われる現象のことを指し、実際にNEXCO各社などはその危険性を訴える啓蒙活動をおこなっています。
走行中に眠くなりやすい原因には、その日の体調、睡眠時間などさまざまな要因が関係していますが、なかでも高速道路特有の構造が関係しているといいます。
高速道路などでは、渋滞時などを除いてある程度定まった速度で走行するため、頻繁にアクセルやブレーキの操作をおこなうことが少なく、景色も単調であることが多いです。
それらに加えて、人体の眠気のリズムも関係しており、高速道路調査会が公表している資料には、人の身体は2時から4時と14時から16時に眠気が強まるといい、居眠り運転の発生タイミングは、この眠気のリズムと類似した傾向にあることが分析されています。
また前出の資料には、高速道路で発生する事故の約4割が「前方不注視」であり、その要因を大きく占めるのが居眠り運転であると指摘されています。
NEXCO東日本の担当者は、高速道路走行中の居眠り運転について、以下のように話します。
「居眠り運転を含むぼんやり運転の原因は、『疲労』『考えごと』『睡眠不足』などさまざまです。
このような運転は、ハンドル操作を誤ったり、ブレーキ操作の遅れにつながり、重大な事故を引き起こすおそれがあります。
精神的に余裕を持った状態で運転することや、適度な休憩・仮眠などで早めの睡眠対策をおこなうことが大切です。
また、運転に集中できない状態であるときには運転を控えることも安全対策のひとつです」
■高速道路走行中の居眠り運転…「あくび」が出たら要注意! 対策方法はある?
では、具体的な対策方法にはどのようなものがあるのでしょうか。前出のNEXCO東日本の担当者は以下のように話します。
「高速道路上での睡魔対策として、まず心がけていただきたいのは“2時間に1回は休憩を取る”といったこまめな休憩です。
また、そういった休憩中に腕を伸ばしたり、背伸びしたりといった体操で、疲れたお身体を動かしてあげるのも対策方法のひとつです。
いずれも『あくび』が出たら危険信号であるため、早めの対策を心がけていただくことが何よりも大切です」
高速道路には、休憩施設であるSA/PAが設置されており、駐車をして仮眠も可能です。
また、施設内にはストレッチができるベンチや鉄棒、横になれるソファー、仮眠スペースなどが用意されていることもあり、眠気を感じたら積極的に活用するのが良いかもしれません。
さらに前出の担当者は、居眠り運転には「カフェイン摂取と短時間睡眠」の組み合わせが眠気解消に効果的であるといいます。
カフェインの睡眠抑制効果は、約10分から20分程度で発現されるとされており、カフェイン摂取後の短期間を睡眠に当てることで、眠気抑制に繋がるといいます。
ちなみに、カフェイン摂取後の睡眠抑制効果は、約2時間ほど持続するとされているため、「2時間に1回」は適度な休憩を取るのが理想といえそうです。
そのほかにも、高速道路催眠現象による居眠り事故防止のため、高速道路上にはさまざまな工夫が施されています。
本線上の路肩の白線には、厚みの違う塗装を交互に配置し、凹凸が付けられているだけではなく、白線の外側のアスファルト舗装には、「ランブルストリップス」と呼ばれる進行方向に対して垂直に掘られた溝も用意されています。
もしクルマが乗り上げた場合には、「ブーン」という振動と音を発し、車線をはみ出していることをドライバーに警告するような仕組みになっています。
また「高輝度レーンマーク」という照明やヘッドライトの光に反射する塗料を使った視覚的にドライバ―に注意を促す車線も存在。リブ(突起)が付けられたタイプもあり、あわせて振動や音でドライバーに注意を促します。
そのほかにも、下り坂やカーブなどでは、路面に一定間隔で、道路を横切るように数本の薄い舗装(薄層舗装)が施されている道路があります。
これもリズミカルな振動や音でドライバーに注意を促し、居眠り事故の防止に役立っています。
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高速道路での眠気は、道路の構造はもちろん、自身の健康状態や睡眠不足も大きく関係しています。
長時間のドライブに出かける人は、事前に十分な睡眠時間を確保し、良質な睡眠を心がけることも対策のひとつといえそうです。