近年のスバル車は、六角形のフロントグリルにコの字のヘッドライトを組み合わせたフロントフェイスを採用していますが、その“スバル顔”が少しずつ変化してきているようです。一体どのような意図があるのでしょうか。
■統一のイメージを持たせたスバル車の“顔”
「自然界でもっとも安定したカタチ」といわれる六角形をモチーフにした“ヘキサゴングリル”に、水平対向エンジン(BOXERエンジン)のピストンをイメージした“コの字”のポジションランプを組み合わせたヘッドランプ。
スバル車はどのクルマも統一されたイメージで顔つきがデザインされています。
しかし、昨今そんなデザインに変化が起きていると感じている人もいるのではないでしょうか。
筆者(工藤貴宏)も、ヘッドライトが細くなると同時に、グリルが大型化されている印象を受けるのです。
たとえば2021年秋に登場した「レガシィ アウトバック」は、先代に比べるとヘッドライトが小さくなり、一方でグリルの大きさがより強調されました。
またアメリカにはスバル最大の車体を持つ3列シートで北米専用SUVの「アセント」というモデルがありますが、この6月に公開された新型は巨大なグリルを持ちながら、ヘッドライトは小さなデザインです。
そもそも、実際にスバルの新型車のデザインは意図してグリルを大型化させているのでしょうか。
デザインの方向性について、どのような意図があるのかスバル広報部に確認してみたところ、「グリルは意図して大きくなっている」とのこと。変化は気のせいではなかったようです。
「誰もがひと目見てわかるスバルデザインの象徴として大型化、強調しています。また、一部車種ではフロントグリル内のスバルのオーナメントも大型化しています」と同社広報部は説明します。
一方でヘッドライトが小さくなっているのも「気のせいではない」とのこと。その理由は「大型ヘキサゴングリルをより印象付けるためであると同時に、グリルから始まる後方へ伸びていく造形でボディのダイナミックさと塊感を強調するため」だといいます。
また、「ヘッドランプの高性能化により、ヘッドライトを小さくしても明るさを確保できることもデザインに影響を与えている」と同社広報部は教えてくれました。
ちなみにフォレスターの2021年のマイナーチェンジでは、ヘッドライトが横方向は小さくなったものの、縦方向には伸びています。それは「背の高さを強調してほかのスバル車と差別化するため」だといいます。
■「SPORTS」「JOURNEY」「FIELD」3つのテーマとは?
ところで、最近のスバルはどんなデザインを狙っているのでしょうか。同社のデザインはいま、「Dynamic×Solid」を進化させた「BOLDER(大胆に)」をコンセプトとしています。
そのコンセプトに関して同社広報部は「スバルがお客さまに提供する価値や、各車種が持つ個性をより“大胆に”際立たせるという想いを込めています」と説明。
「Dynamic×Solid」はいうなればデザインの骨格であり、乗る人に包まれるような安心感をもたらす“塊感”と、愉しさや安定感を表現する“特徴的なフェンダー”を全車に描いています。
これをスバルの全車に共通する骨格としつつ、車種によって「SPORTS」「JOURNEY」「FIELD」の3つのテーマを持たせているのが、今のスバルのデザインといって良いでしょう。
その方向性を実車に当てはめてみると、前傾軸かつキャビン後方が絞り込まれた前進感があるフォルムを持つ「SPORTS」は「XV」や「レヴォーグ」「WRX」。
水平軸を基調とし、安心、信頼、走破性を予感させるフォルムの「JOURNEY」はレガシィ アウトバック。
そして厚みがあり力強い強靭なイメージとしているのが「FIELD」で、フォレスターや北米専用車のアセントなどが当てはまるように思えます。
しかし“それぞれの方向性がどの車種”と明確に定まっているわけではなく、XVやフォレスターのように明確なつながりを感じられる車種もあれば、「それぞれの要素をバランス良く取り入れたモデルもある」(スバル広報部)とのこと。
いずれにおいても、どこまでも走りたくなる期待感、信頼感、安心感や実用性を表現し、「安心と愉しさ」を感じられるデザインを追求しているというわけです。
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今、レクサスやBMWに代表されるように、多くのブランドがフロントデザインに共通のイメージを与え、ブランドの統一感を持たせています。
スバルも同様に「どのモデルでも“スバルらしさ”を感じられるデザイン」とし、グリルの大型もその一環というわけです。
ちなみに六角形の「ヘキサゴングリル」は、“六”つながりでスバルのエンブレムである六連星の意味も込められていることは、スバル好きなら覚えておきたいところです。