Infoseek 楽天

自衛隊に「神出鬼没の忍者」がいた!? 走行しながら射撃&隠密偵察などで活躍も!「偵察オートバイ」とはどんな部隊なのか

くるまのニュース 2022年8月17日 6時10分

陸上自衛隊にはオフロードバイクが活躍する部隊があります。それらは「偵察オートバイ」呼ばれることもありますが、どのような存在なのでしょうか。

■陸自の偵察オートバイ…世界でも珍しい「神出鬼没の忍者」とは

 陸上自衛隊といえば、悪路を走破する車両や戦闘時に活躍する戦車などが配備されています。
 
 そうしたなかで、オフロードバイクが活躍する部隊もあり、それらは「偵察オートバイ」呼ばれることもありますが、どのような存在なのでしょうか。

 陸上自衛隊にはカワサキ「KLM250」というオフロードバイクを使う部隊があり、隊内では正式には「オートバイ(偵察用)」と呼ばれています。

 これまでホンダ「SL250S」、「XL250S」、「XL250R」、「XLR250R」が採用されてきましたが、現在は排出ガス規制などからKLX250が使われています。

 構造は市販車と基本的に同じですが、違いは塗装を濃緑色に塗り替え、転倒時に乗員を守るライトガードやエンジンガード、リアキャリアと無線機用キャリアが追加され、夜間目立たないよう管制灯火スイッチがあることなどです。

 正式名称で「偵察用」と謳われているのには訳があります。アメリカ軍をはじめ各国軍でもオートバイは使われていますが偵察用ではありません。

 活動範囲は戦闘地域から離れた後方で連絡、小輸送、憲兵隊(自衛隊では警務隊)の警備用などです。

 実は最前線で敵と交戦する可能性の高い危険な任務でオートバイを使っているのは珍しいといえます。

 戦闘任務に就くにはオートバイは脆弱に見えます。装甲車のような防御力はまったくありませんし、小さくて武装もほとんど積めません。

 燃料タンクも少ないので行動距離も短いです。しかし二輪車ならではの道なき道を進める走破性と高速性、小さく目立たず小回りが利くという特性があります。

 しかもゴムボートに積んで河川や海上を運んだり、ヘリコプターに積んだり空輸もできるなど使い方によって神出鬼没でもあるのです。

 この神出鬼没さが偵察に最適で、いまドローンが注目されていますが、実際には天候に左右されるなど使用条件は限定的で万能ではありません。

 妨害無力化手段も増えています。上空から見えない情報を地上から探るオートバイと組み合わせることで偵察能力、精度は格段に向上します。

 アメリカ陸軍の偵察用車両は小さいものでも4輪バギー車タイプの軽攻撃車LSVです。

 陸上自衛隊と合同演習した際、偵察オートバイが神出鬼没で思わぬところまで侵入、偵察する想定外の働きに驚き「忍者」と呼んでいたといいます。

 海外でも忍者(Ninja)はそのまま通用しますが神秘的で悪役イメージもあり、対抗したアメリカ軍関係者の心情が伺えます。

 ロシアによるウクライナ侵攻ではウクライナ軍が対戦車ミサイルをオートバイで運んでロシア戦車を襲撃した例がありますが、対戦車ミサイルは重くかさ張り、機動性はかなり削がれるので危険な戦法です。

 積極的な攻撃には向いていません。それでもロシア軍には厄介だったでしょう。

■偵察オートバイライダーに必要な要素は何? どんな人が向いている?

 忍者ともいわしめた偵察オートバイは単独行動が多く、目立たない影の存在のようですが、自衛隊の記念行事でジャンプを披露したり、派手な演技を見せたりして実は目立ちたがり屋の一面もあります。

 乗員の多くがもともとオートバイ好きで、カワサキ乗りは濃緑色の塗装が剥がれて下地のカワサキグリーンがちょっと覗いたりするとニヤリとするとか。

 通勤や趣味でオンロード、オフロードバイクを楽しむ人も多いです。こんなプロライダーの道もあります。

 オートバイ乗員に求められるのは「ガマンすること」。暑い寒い、雨が降れば濡れるなど、ここまではライダーなら実感できるところです。

 さらに長距離乗り過ぎてお尻が痛い、体中が辛い、さらに眠いといったこともあるそうです。

 走ることが目的のツーリングではありませんので、このガマンを乗り越えて与えられた任務を達成しなければなりません。

 訓練では転倒するのは当たり前、ときには骨折することもありますが「痛い」といったら負けだそうで「やせガマン」する位の豪胆さも必要だといいます。じゃないと人前でジャンプなんか披露できません。

 ジャンプは何度やっても怖いそうで、訓練係が撮影した自分のビビりな飛び方を見ると凹むこともあるそうです。

 でも慣れてくると飛翔中の姿勢まで気が回るようになります。しまいには「オレを見て見てw」の境地に達するらしいです。

災害派遣でも先行偵察する。平成28年4月の熊本地震で阿蘇大橋に進出した偵察オートバイ。(画像:陸上自衛隊)

 偵察オートバイには50キログラム程度の装具しか積めません。行軍時には食料、水、衣料品や救急キットなどを詰めたリュックをリアキャリアに括り付け、右サイドのラックに無線機、ハンドルバーには地図やタブレットを括り付けます。

 交通法規に則りサイドミラーも取り付けます。下車してすぐ戦闘行動がとれるよう小銃は身に付けますが、公道を走る場合には原則小銃は携行しません。

 実際の任務ではオートバイを含む偵察隊は主力部隊より先行して、前方の状況を確認し大型トラックや装甲車などが通行可否や敵情を偵察します。

 さらにオートバイは偵察隊からも分離して車両が入り込めないような狭隘な地形などにも前進することがあります。こうした能力は道路が寸断された災害派遣でも重用されています。

 オートバイと乗員の関係はほかの自衛隊のくるまと乗員とはちょっと違った関係です。

 偵察隊員は1人とオートバイ1台で任務を遂行します。1対1の関係である意味「バディ」(二人組の相棒)です。

この記事の関連ニュース