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クルマの「自動ブレーキ」は渋滞原因にならない? ACC普及で意図しない「テールランプ光る回数」増えた? 渋滞起こる仕組みとは

くるまのニュース 2022年8月17日 9時10分

3年ぶりに行動制限のないお盆休みとなった2022年、各地の高速道路では帰省ラッシュ・Uターンラッシュによる渋滞が見られています。そうしたなかで「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」が自然渋滞発生の新たな要因になっているという指摘もあります。

■ACCが自然渋滞発生の新たな要因になるという指摘は本当?

 アクセルやブレーキの細かな操作が不要になる「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」は、長距離走行が多いユーザーにはうれしい機能です。
 
 一方で、ACCはドライバーの意図とは別にブレーキ操作をすることもあり、自然渋滞発生の新たな要因になっているという指摘もあります。

 3年ぶりに行動制限のないお盆休みとなった2022年、各地の高速道路では帰省ラッシュ・Uターンラッシュによる渋滞が見られています。
 
 自然渋滞、つまり事故や工事などを原因としない渋滞は、交通量の増加に加えて、必要以上の減速によって発生するとされています。

 例えば、急な割り込みによって後続車両がブレーキを踏んだり、あるいは「サグ」と呼ばれる下り坂から上り坂に変わる地点で、意図せず減速してしまったりすることなどです。

 とはいえ、こうした場面では多くのユーザーがブレーキを踏んだり、減速をしたりしてしまうものです。

 そのため、各高速道路では、急な割り込みをしないようにユーザーへ啓蒙活動をおこなったり、「サグ」部など減速をしやすい地点で加速を促す標示を設置するなどの対策を実施しています。

 しかし、近年、自然渋滞を発生させる新たな要因として、「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」の存在が指摘されているようです。

 ACCは、車両前方に備え付けられたカメラやレーダーなどによって前方車両を認識し、一定の車間距離を保ったまま追従するものです。

 アクセルを制御することで一定の速度で走行し続ける「クルーズ・コントロール」は古くから存在していましたが、2010年代以降に「衝突被害軽減ブレーキ(通称:自動ブレーキ)」が普及したことにともない、現在では新車のほとんどに標準搭載されています。

 ACCは、高速道路および自動車専用道での使用が想定されたものですが、細かなアクセル・ブレーキ操作が不要となるため、長距離移動の負担が少なくなることが大きなメリットです。

 近年ではステアリングアシストを備えたものもあるほか、一部のモデルでは一定条件下での手離し運転も可能となっているなど、来たるべき自動運転の時代に向けて必要不可欠な機能でもあります。

 2021年11月以降、すべての新車に衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務付けられるようになりました。

 衝突被害軽減ブレーキとACCが機構の多くを共有しているため、衝突被害軽減ブレーキが搭載されているクルマのほとんどにACCが搭載されています。

■果たして、ACCが自然渋滞の原因となるのか?

 非常に便利なACCですが、自然渋滞の要因と指摘されている背景には、その車間距離の設定が挙げられます。

 道路交通法では、車間距離について「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない」と定められています。

 具体的な距離については個々の状況によって判断されるようですが、教習所などでは「車速をメートルに直した距離」をひとつの目安として指導しているようです。

 この目安に沿うと、100km/hで走行時には100mの車間距離が適切ということになります。

 乗用車であればおよそ20台分ほどの間隔を空けることになりますが、実際の高速道路では、100mの車間距離を確保しようとするとかなりの頻度でブレーキを踏むことになります。

 ただ、ユーザー自身が運転している場合、100mの車間距離を保った状態で前方にクルマが割り込んできても、ブレーキを踏んで車間を維持するということはあまりありません。

 しかし、ACCの場合、設定された車間距離を保つために、自動的にブレーキを作動させてしまうことが、自然渋滞発生の一因になると指摘されています。

走行中には適切な車間距離を取ることが求められるが…ユーザーと機械では車間の取り方が異なる?

 では、実際にACCは自然渋滞発生の原因となっているのでしょうか。

 そのヒントとなるのは、フォードが2018年におこなった実証実験です。

 フォードは高速道路を模したテストコースを用いて、ACCを使用した36台のクルマを合流などを含めた実際の道路状況に近い状態で走行させ、ACCを使用しなかった場合との比較を実施。

 実験のなかで、先頭車両が60mph(約96km/h)から40mph(約64km/h)へと減速すると、ACCを使用していないケースの後続車のほうが強くブレーキを踏んでしまい、流れが悪くなってしまいました。

 一方、ACCを使用したケースでは、スムーズに状態が維持されたうえ、ACCを使用しているクルマを3分の1に限定した場合でも、ほぼ同様の効果が見られたといいます。

 この実証実験の結果を見る限り、ACCは自然渋滞発生の要因となるばかりか、むしろスムーズな走行を助けているということができます。

 その背景には、実際のACCでは、教習所などで指導される「目安」よりは実態に即した車間距離が設定されていることがあります。

 例えば、ホンダ「フリード」の場合は4段階で車間距離の設定が可能となり、100km/hでの走行時には、「短」では約30m、「中」では約40m、「長」では約59m、そして「最長」では約78mの車間距離になるように設定されています。

 実際の道路状況にもよりますが、設定次第では無理な割り込みを防ぐことはできそうです。

 これらを総合すると、ACCが自然渋滞発生の要因となっていると断ずるのは尚早のようです。

 ただし、ACCの設定によっては実態に沿わない車間距離となり、意図しない場面でブレーキを作動させてしまう可能性もあります。

 ACCは便利な機能ですが、使用する場面や設定を決めるのはあくまでドライバー自身です。ACCを利用している場合でも、周囲の状況に十分気を配ることが重要です。

※ ※ ※

 また、現状ではACCの利用について、道路交通法で明確に規定されたり、あるいは教習所で指導されたりということはありません。

 しかし、今後ACCを搭載したクルマが増えれば増えるほど、ACCの利用方法についての規定や啓蒙が求められるようになるでしょう。

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