ひと昔前まで新車購入後には「慣らし運転」が必要とされており、説明書にもその方法が記載されていました。しかし、最近では技術の進化などにより以前ほど慣らし運転は重要視されていません。そうしたなかで、電気自動車(EV)では慣らし運転が必要なのでしょうか。
■かつてのクルマでは「慣らし運転」をする必要があった
かつて、新車を購入した際は、各パーツをなじませるため、そしてクルマを長持ちさせるために「慣らし運転」が必要とされていました。
では、現在普及しつつある電気自動車でも、慣らし運転は必要なのでしょうか。
慣らし運転の方法は、エンジンの回転数やアクセルの踏み込み量など、その方法は各モデルの取扱説明書に記載されているのが当たりまえでした。
現在でも、新車1か月点検までは無理な運転はしない、一定距離を走るまでは高速道路に乗らないなど、慣らし運転を心がけている人は多いかもしれません。
では、そもそも、慣らし運転とはどのようなものでしょうか。
慣らし運転については、とくにはっきりとした定義づけがされているわけではありません。
基本的には、穏やかなペダル操作やハンドル操作を心がけ、クルマに負担をかけないような運転が挙げられます。
しかし、近年では、パーツの精度が向上したことなどから、慣らし運転は必ずしも必要ではないとのメーカーの意見が多くなってきました。
実際に、ほとんどのモデルでは、取扱説明書に慣らし運転について記載されていません。
トヨタでは、一般的な安全運転をしていれば自然にクルマのパーツがなじんでくると説明したうえで、ユーザーが新車に慣れるまでの期間を慣らし運転とする見解のようです。
一方で、高精度なエンジンやパーツを搭載しているクルマの場合には、慣らし運転が必要といえます。
例えば、日産では「GT-R」について、その性能をじゅうぶんに発揮するために、走行距離2000kmまでは慣らし運転が必要としています。
具体的には、500kmまではアクセルペダルを半開きに抑えてゆっくり踏み込むなど、距離に応じて必要な操作が取扱説明書に記載。
このように、最近のモデルでは、各モデルごとに慣らし運転の必要性が異なりますが、かつてに比べると総体的にはその必要性は減少しているといえます。
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一方でSNSでは「新車なのでしばらくは慣らし運転」や「納車したので慣らし運転を心がける」「クルマと自分の慣らし運転をしますといった投稿も見受けられます。
このように機械的には昔よりも慣らし運転の重要性は低くなったとはいえ、ユーザー自身の慣らしを含めて「慣らし運転」をする人もいるようです。
■電気自動車では「慣らし運転」は必要なのか?
では、最近普及が進む電気自動車ではどうでしょうか。
SNSでは「EVでも慣らし運転は必要?」「ディーラーでは慣らし運転いらないといわれた」など、電気自動車においても慣らし運転の必要性を気にするユーザーは存在します。
そうしたなかで、電気自動車の慣らし運転の必要性について、マツダの広報担当者は次のように説明しています。
「弊社では電気自動車に限らず、ピストンが往復運動するレシプロエンジン車でもとくに慣らし運転のお願いはしておりません」
また、ホンダの広報担当者も同様に次のように述べています。
「電気自動車においても、現在は部品精度が向上しているので、慣らし運転をおこなう必要はありません」
このように、電気自動車では、基本的に慣らし運転をおこなう必要はないようです。
ただし、ホンダの担当者は「新車購入後1000kmを走行するまでは、駆動系などの保護のために、急激なアクセル操作や急発進を出来るだけ避けるようにしてください」とも話します。
慣らし運転として、過剰に丁寧な運転をする必要はなさそうですが、ある程度、クルマをいたわる運転は心がけるべきといえます。
電気自動車においても最近のクルマと同様に、過剰な慣らし運転は不要なようです。
ただし、新車購入後の一定期間は、急発進や急加速といった“急”のつく運転は避けるべきでしょう。
また、慣らし運転にかかわらず、環境や安全をいたわるためにも、無理な運転操作は控えることが望ましいといえます。