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最強タイプは「黒かまぼこ型」!? 「移動式オービス」ってどんなもの? 運用されている全種類の特徴

くるまのニュース 2022年8月19日 14時10分

移動式オービスの普及が進んでいます。メーカーは国内から海外まであり、その中には「最強のオービス」と呼ばれるものも。どのような機器が運用されているのでしょうか。

■普及が進む「移動式オービス」

 夏休みなどで遠くへドライブする機会も多いと思いますが、隣の県にはイメージしているものとは異なる移動式オービスが設置されているかもしれません。

 一般的には「移動式オービス」、正式には「可搬式オービス」や「半可搬式オービス」と呼ばれている小型の速度違反自動取締装置が、全国で普及してきました。もしかすると実際に遭遇したドライバーも身近にもいるのではないでしょうか。

 小型のオービスは、2014年11月に埼玉県内の川口市戸塚東(けやき通り)と、さいたま市北区別所町(大宮別所小学校前)に、オレンジと黒色のスタイリッシュなオービスが、道路標識のように簡易的に2機設置されたところから始まりました。製造はスウェーデンのSensys Gatso Group社(以下、センシス)で、SSS(Speed warning Safety System)という製品です。

 ただしこの2機のSSSは2016年3月に、埼玉県北本市深井(国道17号)と岐阜県大垣市三塚町の東小学校前に移設されたきり現在まで移動することはありませんでした。そこでこの2機のSSSは固定式に分類されています。

 移動できるタイプが初めて目撃されたのは、半固定式オービスと呼ばれるタイプで、2016年5月18日、埼玉県川越市上戸の市道に置かれていた白いロボットのような機器を東洋大学自動車部の学生が初めてSNSに投稿したのが始まりです。私(オービスガイド 大須賀克巳)もすぐに学生と連絡を取り写真の使用許可をいただき翌日に現地へ駆け付けたのですが、残念ながらすでに撤去されていました。

 学生は映画『ウォーリー』のロボットにたとえていましたが、まさにそんな感じです。この機種は現在も埼玉県警と岐阜県警に1台ずつ配備され、最近でも稀に運用されています。このロボットのようなオービスは東京航空計器のLSM-300HKです。品名末尾のHKは半可搬式を表しているということです。この半可搬式オービスは、2016年6月には岐阜県内で目撃され、7月には埼玉県内の高速道路で運用されました。

 それから9か月が経過した2017年4月7日、今ではお馴染みの三脚に白色の四角い本体をセットする可搬式オービスが登場しました。私もそのオービスを見るために初日運用場所である愛知県幸田町へ向かい、荻谷小学校前で実物を初めて見て感動したのを覚えています。

 このオービスは、ロボットのような半可搬式オービスと同じメーカーである東京航空計器の製品で、品名はLSM-300です。同じ頃、富山県警や神奈川県警もこのLSM-300の導入を発表し、LSM-300が全国に広がっていくように思えました。

■LSM-300に続いて登場した「最強のオービス」

 ところがそれから3か月後に、岐阜県警がMSSSという三脚に黒色でかまぼこ型の本体を載せたオービス導入を発表しました。

 MSSSは冒頭のSSSと同じくセンシス製です。速度計測にはレーザーではなく新Kバンドのレーダーを用います。ストロボと本体を別々の三脚にセットするのですが、オービスに詳しい人たちは口をそろえて「最強のオービス」と言っています。

 例えば300km/hで走るクルマも鮮明なカラー写真で撮影できますし、通常のオービスはある一点で速度を計測し記録しますが、MSSSは計測区間内であれば片側3車線道路で3台が並走していても、それぞれの速度変化を全て記録しているようです。

 交通裁判に詳しい人が言うには、仮に裁判になった場合にこのデータに基づく証拠を覆すことはほぼ不可能だと教えてくれました。それにコンパクトな黒色の本体は昼夜ともに目立たない上、雨天や濃霧でも運用できます。さらに本来はレーダー方式が苦手とするトンネル内での目撃もありました。

可搬式オービスMSSS(画像:オービスガイド)

 このMSSSは、北海道、山形県、茨城県、埼玉県、千葉県、岐阜県、山口県、香川県で目撃されています。新聞記事によるとMSSSを導入した千葉県警では、速度超過違反の取締り件数が導入前より6倍以上に増えたようです。

 ただし現在、このMSSSを導入している地域は少数派で、多くの都府県では東京航空計器の製品を導入しています。ちなみに埼玉県と岐阜県はMSSSとLSM-300の両方を運用しています。

 またLSM-300はその後継機であるLSM-310も登場。本体が2分割できて設置しやすくなったり、撮影写真がカラーになったりと、利便性や性能が向上しているようです。余談ですが、東京航空計器の可搬式オービス用の三脚はマンフロット製で、センシスMSSSの三脚はジッツオ製のようです。

■半固定式オービスの運用が減ってきた?

 最近、ロボットのような半可搬式オービスの情報をあまり目にしなくなってきました。

 個人的には高速道路のラバーポールで囲まれたゼブラゾーンなどに設置する場合、この半固定式オービスはとても有効と思っていました。巨大な土台内には大型のバッテリーが搭載されていて、数日間無人での運用が可能なはずです。それがあまり活用さていないのは、おそらく運搬の大変さなどに原因があるのかもしれません。

 何度か半可搬式の撤去を見学したことがありますが、いつも4人くらいの警察官がハンドパレットトラックを使い、駐車場のトラックの後ろまで慎重に移動して、それから電動リアゲートでトラックに積み込み荷台に固定します。撤収するだけで20分以上かけているので、設置も調整作業などを含めるとそれ以上時間がかかると思われます。

 三脚の可搬式オービスの場合は、警察官2人で2機を上下線で同時運用していることがあり、移動の手間や効率、それに設置場所の自由度を考えると可搬式に分がありそうです。また高速道路では、最近登場した半固定式オービスも関係しているのかもしれません。

■オービスの光る色と反応速度

 ストロボの発光は、LSM-300とLSM-300HKが赤色、LSM-310とMSSSが白色でカラー撮影です。

 オービスは高速道路では40km/h以上、一般道では30km/h以上速度オーバーすると撮影されるというのが定説でしたが、この移動式オービスに関しては、ネズミ捕りと同じように現場で警察官が違反を確認しているなどの理由により、15km/h以内の速度超過でも撮影された事例もあります。

 撮影の基準は場所や状況にあわせて設定変更できるため、「何キロ以内だったら大丈夫」などといった思い込みは通用しません。

■移動式オービスの対策

可搬式オービスの予告看板(画像:オービスガイド)

 移動式オービスに急に出くわすと驚くかもしれません。移動式オービスは県警によっては、ウェブサイトやTwitterなどで事前に予告している場合もあります。ぜひ、ドライブする県警のサイトやSNS情報をチェックして見てください。

 幹線道路などに設置されている電光式の道路情報板に「県内 移動式オービス速度取締 実施中」などの表示がある場合は特に注意が必要です。

 また、必ずではないものの、手前に予告看板が設置される場合が多いです。予告看板は通常左側路肩に設置されますが、まれに中央分離帯や右側の路肩に設置されることもありますし、最近の予告看板は小型化されています。

 最新のレーダー&レーザー探知器は、前方に遮蔽物さえなければLSM-300やLSM-310に対しかなり手前から反応してくれます。ただし、MSSSには反応しにくいとの情報がYouTubeなどにUPされています。

 取締り情報共有アプリはどうでしょう。アプリはその地域の利用者数に情報量が左右されるので、こちらも確実とは言えません。

 とにかくクルマで出かける際は、時間に余裕を持って、常に制限速度を意識するようにしましょう。

 そして漫然な運転をせず、常に周囲に注意を払っていれば危険を早く察知できるだけでなく、予告看板を発見できるかもしれませんし、速度を抑えて運転していれば移動式オービスに遭遇しても珍しいものが見られて得をした気分になれると思います。

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